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ゴーストタウン

 スリーバックスを発って5日後、アデルたち一行はN州、アッシュバレーに到着した。

「……本当に何にも無いな」

 通りを見渡すが、薄汚れた家屋がまばらにあるばかりで、賑わっているような様子は全く見られない。

「電線も無い。これじゃ確かに、電話連絡なんてできるはずが無いな」

「それどころじゃないぞ。郵便局も保安官オフィスも無い。軒並み潰れてる」

 駅のすぐそばにあった建物を指差しつつ、ダンが呆れた声を漏らす。

「ほぼ廃村って感じだな。本当にこんなところに、人が住んでんのか?」

「そうね……」

 エミルが往来を見回し、首を横に振る。

「ここ数ヶ月、馬車も荷車も通ってないって感じ。足跡も、せいぜい2人、3人ってところかしら」

「3人だろう。3種類ある」

 アデルがしゃがみ込み、その足跡を調べる。

「ただ、靴の形は一緒だな。大きさは違うが、靴底のパターンが同じだ。恐らく会社か州軍だとかからの支給品なんだろう。

 同じ会社の同僚3人が、駅に届いた荷物を受け取ったってところだろうな」

「それに靴底のパターンが、やたらゴツいぜ。相当ハードな環境で働いてるんだろうな」

 ダンもアデルと同様にしゃがみ込み、その足跡を指先で触る。

「その可能性は高いな。となりゃ、メッセマー鉱業の人間ってことで間違い無いだろう。

 ……何だよダン、あんたも結構やるじゃないか」

「へへ……、伊達に特務局でしごかれてないさ」

 二人して笑い合ったところで、一転、アデルは首を傾げる。

「だけど妙だな。3つあって、それが全部、作業員のヤツか」

「何が妙なんだ?」

 尋ねたダンに、エミルが呆れ気味に答える。

「サムたちよ。ここに来たはずでしょ?」

「……あ、そうか」

 一行はきょろきょろと辺りを見回すが、それらしい足跡は見当たらない。

 と、様子をうかがっていたらしい年配の駅員が、とぼとぼとした足取りで近寄ってくる。

「あんたら、さっきから何しとるんだ? 財布でも落としたのか?」

「いや、何でも。……っと、ちょっと聞きたいんだが」

 アデルが立ち上がり、駅員に質問する。

「俺たちの他に、スーツ姿で来たヤツらはいないか?」

「スーツで? さあ……?」

 駅員は目をしょぼしょぼとさせながら、首を横に振る。

「覚えが無いね」

「最近雨が降ったのは?」

「3日前くらいかなぁ」

「そもそも、ここって人がいるのか?」

「俺がいるだろ」

「いや、そうじゃなくて、あんた以外に人が住んでるのかってことだよ。ざっと見たところ、店もサルーンも何も無いように見えるしさ」

「鉱山の奴が4人か、5人くらい、……いや、6人? だっけか。まあ、そいつらくらいだな。

 あんたの言う通り、ここにゃもう店が無いから、ここで直に行商人と売り買いしてるみたいだよ」

「『みたい』って……、あんた、ここで仕事してるんだろ?」

 呆れ気味にアデルがそう尋ねたところで、駅員は恥ずかしそうに笑って返す。

「ヒマだからさ……。大抵寝とるんだ」

「……そうか」

 その他、2、3点尋ねてみたものの、駅員からは大した情報を得ることはできなかった。


 駅員を適当にあしらい、駅舎へ戻っていったところで、ふたたびアデルたちは足跡に着目する。

「あのくたびれたじいさんの話だから正確なことは分からないが、ともかくごく最近、雨が降ったって話だから――計算上、1週間くらい前にはサムたちが到着してたはずだし――サムたちの足跡が消えててもおかしくない。

 足跡が見当たらない以上、下手すりゃサムたちがここに来てない可能性もある。……とは言え、それは考えにくいけどな」

「他に目的地も無いもんな」

 ハリーの一言にうなずきつつ、アデルが続ける。

「だから来てることを前提として考えりゃ、間違い無くサムたちは、メッセマー鉱業を訪ねてるはずだ。

 この足跡も多分メッセマー鉱業のヤツらのだろうし、たどれば着くだろう」

 一行は駅を後にし、足跡に沿って街を抜けた。

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