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追加連絡

「息子?」

 朝食のベーコントーストを飲み込み、ダンが尋ね返す。

「ええ。ただ、苗字も違うし、周囲の人間もそんな話聞いたこと無いって話だから、グリフィス本人は気付いてなかったかも知れないけど」

 局長からの電話で、グリフィスの監督する鉱山に、彼の息子が勤めていたことが判明したと伝えられたのである。

「名前は?」

「会社には、ケビン・モリスンって登録してたそうよ」

「偽名、……とも何とも言えないな」

「局長がざっと調べた限りじゃ、本名じゃないかって。グリフィスの、別れた奥さんの苗字がモリスンらしいから」

「まあ、ケビンって名前も、モリスンって苗字も多いからな。グリフィスSrも息子だと思わなかったんだろう。

 しかし偶然とは思えないな。親父の管理してる鉱山に、息子が勤めてたってのは」

 アデルがつぶやいたその疑問に、エミルも同意する。

「そうね。事件もあったわけだし」

「思ったんだが」

 と、ダンが手を挙げる。

「親子だって言うなら、似てたんじゃないか?」

「あん?」

「いやほら、駅だとか、アッシュバレーだとかで、グリフィスを見たって話だったろ?

 もしかしたらそいつ、グリフィスじゃなく、息子のモリスンの方だったのかもって」

「……だとしたら?」

 けげんな顔をしたハリーに、ダンは得意そうな様子でこう続ける。

「俺の推理だけど、グリフィスはもうとっくにモリスンに殺されてて、モリスンがカネを盗んだのかもって。

 いやほら、グリフィスの評判から言って、盗みを働くようなタイプじゃないって話だったしさ。良くあるだろ、『似た顔のヤツが別にいた』って、アレだよ、アレ」

「三文推理小説ね、本当にそんな展開だったら」

 ダンの仮説を聞いたエミルが、呆れた目を彼に向ける。

「もしその線が本当だったとしたら、事件から1ヶ月経ってるんだから、グリフィスの死体がどこかで発見されてるでしょ?

 局長からそんな話聞いてないし、その事実は今のところ、無いみたいよ」

「近くの川にでも投げ捨てればそうそう見つかりゃしないだろうし、俺は有り得ると思うんだけどなぁ」

「相当な手間じゃない? 忍び込んでカネを盗んだ上、人を殺して川まで運び出すなんて、そんなこと一人で、誰にも見付からずにできるかしら。

 第一、似てるとしても、親子なんだから、少なくとも20歳は年齢が違うはずでしょ? 40代の中年と20代の青年を見間違えるようなこと、そうそう無いと思うんだけど」

 エミルの反論に、ダンを除く全員が賛成する。

「俺もそう思う」

「いくら何でも、話がうますぎだ」

「こじつけに近いぜ」

「……だよなぁ」

 自分でもそう思ったのか、ダンは顔を赤らめつつ、コーヒーを一息に飲み干した。

「まあいいや、この話はこれくらいで。

 ともかく、早くメシ食って支度しなきゃ、列車が出ちまうぜ」

「そうだな」

 その後は取り留めもない話を交わしつつ、一行は朝食を平らげた。


 列車に乗り込み、動き出したところで、エミルが「あ、そうそう」と続けた。

「局長からの電話、もう一つ伝えとくことがあったわ。

 特務局の状況だけど、明日か明後日くらいには、ミラー局長と局員が解放されるかもって」

「解放されるって?」

 ほっとした顔をするダンに、エミルは肩をすくめて返す。

「解放されるって言うより、追い出されるって言った方が的確でしょうけどね。

 ここ数日、オフィスにいた全員の身辺調査を行って、組織だとかの裏が無いってことが判明したから、とりあえず家には帰してもらえるらしいけど――司法省に組織の手が及んでるとすれば――間違い無く局長以下、全員が更迭・免職されるわね。

 組織にとって、特務局はパディントン探偵局の次にうっとうしい敵だもの。口実さえあれば、いつでも潰す気だったでしょうし」

「そうか……そうだよな」

 ダンたちが意気消沈する横で、ロバートが不安そうに尋ねる。

「探偵局は大丈夫なんスか?」

「誰が潰すのよ? うちのトップは司法省長官でも州知事でも、大統領でもないわよ」

「……あ、そう言やそうっスね」

「そもそもうちにパディントン局長がいる限り、誰にも潰せやしないわ。そんな心配、あたしたちがする必要なんか無いし、気を揉むだけ無駄よ。

 だからあたしたちは、捜査に集中しましょう。それがベストよ。あたしたちにとっても、局長にとってもね」

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