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三流探偵

「って言うと?」

 きょとんとした顔を並べるダンたちに、エミルが呆れた目を向ける。

「サムたちが向かった場所は分かったわよ。その目的も把握したし、あんたたちの状況についてもオーケーよ。

 で、サムが今どう言う状況にあるか、それは予想できてる?」

 そう問われ、ダンがさも当然と言いたげに答える。

「そりゃ、組織に捕まってるってことだろ。こんな状況だし、それ以外考えられんぜ」

 そこでアデルが「いや」と口を挟む。

「そうは言い切れん。何でもかんでも組織の仕業ってわけじゃ無いだろ。

 そもそもさっき言ってた匿名の電話、『組織を探ってるチームは全員潰した』って話だが、サムたちは探ってたわけじゃないだろ?」

「……あ、そう言やそうか」

「脅しの材料にするなら、俺たち3チームを潰したってことをそのまんま伝えりゃ、それで十分だ。組織の捜査に加わってないサムたち4人にまで手ぇ出すなんて、余計な手間が増えるってだけだぜ。よっぽどのヒマ人共なのかよって話になる。

 第一、特務局が凍結された今、サムたちや、捜査で出かけてる他の局員には、組織に対抗できるような手立ては無くなってる。普通に考えりゃ、そいつらは放っとけば路頭に迷っておしまいだ。

 そんなのをわざわざ襲うなんて悠長なことするくらいなら、もっと別のことに人員やらカネやら費やすだろう。それこそ政府施設を襲うだとか、列車強盗するだとかな。

 故に、この事件に組織が関わってるって可能性は、かなり低い。となれば、もっと高い可能性を追った方がいい」

「な……る、ほど」

 ダンが黙り込んだところで、アデルはこう続ける。

「普通の事件と同様のケースで考えてみて――組織なんかと関係無い、いつも俺たちが関わってる捜査だとして――その横領犯に返り討ちにされたって可能性が一番高いだろう」

「そう、そこよ。その横領犯にやられてる可能性が高いでしょうに、あんたたち全然、そこに触れようとしないじゃない。『組織の仕業に違いない』って決めつけて。

 いくら組織が今、あんまりにも目立ってるからって、最も有り得る可能性を無視して慌てふためいてたら、簡単に足元すくわれるわよ。

 突飛なことをあれこれあげつらうより、まずは可能性の高い方から順に、対応策を考えるべきじゃない?」

「う……」

 ダンが恥ずかしそうに顔を赤らめたところで、エミルがさらに追及する。

「と言うか、そもそもサムたちからの電話連絡が無くなったってだけでしょ、現状で分かってるのは。

 それならミラー局長の当初の予測通り、電話の無い環境にいるってだけじゃないの? N州なんて合衆国の外れみたいなところなんだし」

「ま、まあ、そうだな」

「あんたたち、やってることが滅茶苦茶よ。ちょっと予想外の事態に見舞われたくらいで、まともな議論もできないくらいにうろたえちゃって。

 よくそんな体たらくで、捜査員なんかやってたもんね」

「め、面目無い」

 散々突っつかれ、ダンは目に見えてげんなりしている。

 見かねたのか、エミルは語気を、いくらか優しいものに改めた。

「はあ……。とにかく、集められるだけの情報を集めましょう。

 とりあえずあたし、局長に電話してくるわね。あ、ミラーさんの方じゃなく、うちのパディントン局長の方ね」

「なんで?」

 一転、面食らった顔を並べ、エミルの後ろ姿を見送るダンたち3人に、アデルが代わりに説明した。

「特務捜査局が大変な状況にあるってことは、パディントン局長も把握してるはずだ。なんだかんだ言って『商売仲間』だし、持ちつ持たれつの関係も築いてきたんだからな。

 だからほぼ確実に、局長も俺たちの身を案じてるだろうし、対応策もいくらか用意してるだろう」

「まさか! いくらあの『フォックス』でも、そこまで……」

 ハリーが反論しかけたところで、電話口に立っていたエミルが、一同に声をかけてきた。

「局長から指示があったわよ。『一同、N州へ向かい状況確認を行うとともに、サムたちが危険な状態にある場合には、速やかに救出を行うこと。なお、特務局の状況は把握している。ダンたち3名についても、現状では帰投せず同行し、一旦探偵局に逃げた方が懸命だろう。受け入れる準備をしておく』だそうよ」

「……は?」

「マジでか……」

「……怖ええな、あのおっさん」

 ダンたち3人は揃って顔を青ざめさせ、口をつぐんだ。

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