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サマンサ・ミラー

「いや、納得っちゃ納得なんだけどさ」

 トリスタンとの死闘を生き延びたパディントン探偵局のアデルたち3人、そして連邦特務捜査局のダン、ハリー、スコットを加えた計6人は、ミラー局長からの依頼を果たすべく、作戦会議と状況確認とを兼ねた会話に興じていた。

「確かにサムはおどおどって言うかなよなよって言うか、一端いっぱしの男じゃないとは思ってたさ。うわさ通り、局長の恋人なんじゃないかってくらい。

 でもマジで女だとは思わなかった。完全にだまされてたぜ」

「同感だな」

 アデルはコートのボタンを閉じながら、うんうんとうなずいている。

「だがエミル、お前一体どこで、あいつが女だってことに気が付いてたんだ?」

「代議士事件の時よ。宿に泊まるって時、2人ずつで2部屋借りようって話になったじゃない」

「ああ、そんなことあったな」

「そう言やあん時、サムのヤツ俺と兄貴と3人で1部屋借りようって提案したら、すげーうろたえてましたよね」

 思い返すロバートに、エミルが「それよ」と返す。

「あの提案でうろたえるなんて、理由はそんなに無いじゃない。人に服の中を見せたくないってことね、ってピンと来たのよ。

 で、あの子と2人で部屋借りて、二人きりになったところで『事情聞かせてちょうだい』って言ったら、教えてくれたわ。

 ミラー局長が連邦特務捜査局を立ち上げたのはいいけど、集まる人材は保安官に毛の生えたようなのばっかり。勇敢で行動力があるのはいいけど、頭脳面で優秀な人材って言うのが、全然見付からなかったのよ。

 そこで目を付けたのが、H大ロースクールを飛び級で卒業した自分の娘、サマンサ。だけど司法省は女性雇用を認めてないから、苦肉の策として、性別をごまかして雇用したってわけ。

 ま、そんな提案、流石のサムも嫌だって断ったらしいんだけど、お父さんが全然折れてくれなくて、それで渋々承諾したって話よ」

「無茶するなぁ、局長も」

 苦い顔をしつつ、ダンは机の上に地図を広げる。

「ま、ともかくサムの経緯についてはそれくらいだな。今重要なのは、そのお嬢さんをどうやって助けるかってことだ。

 で、そもそもサムがどんな指令を受けてN州へ向かったかなんだが……」

 ダンは地図に記されたある町を指差しつつ、ミラー局長から聞かされた内容を伝えた。

「P州で横領事件起こした奴が、このアッシュバレーって町に逃げ込んだって情報を、局長がキャッチしたんだ。

 それだけならそう危険だって臭いも無い。俺だってそう感じるし、局長もそう思ったんだろう。サムと他3名の計4名だけで、俺たちみたいに厳重な武装も無し。せいぜい拳銃を懐に入れとくくらいの軽装で向かったらしい。

 雲行きがおかしくなったのは、サムたちが出発して4、5日経った辺りの頃だ。基本、出張したら毎日電話連絡するのが俺たちの捜査方針だが、今回の俺たちと同様、突然連絡が途絶えた。とは言えサムたちが向かったのはほとんど鉄道も無い、かなりのド田舎だって話だから、そもそも電話が見付からないんだろう程度に思ってたらしい。

 だけどさらに数日が経ち、今回の業務停止につながる事件が発生した。俺たちを含む3チーム全てから、連絡が無くなっちまったんだ。

 ま、それだけならまだ、司法省がヒステリックに反応するってことも無かっただろうが……」

 ダンはそこで言葉を切り、ふーっと苛立たしげなため息を挟んだ。

「司法省長官宛てに、匿名の電話が入ったらしい。

『我々を探るために特務局が派遣したチームは全て、我々が壊滅させた。お前たちの動きも逐一監視している。これ以上、我々を嗅ぎ回るような行為はやめておくことだ』っつってな」

「組織からの電話ってわけか」

 神妙な顔でつぶやいたアデルに、ダンも渋い顔で「だろうな」と答える。

「そんなこと言われりゃ当然、司法省はパニックを起こす。事実その時点で、特務局には連絡途絶した4チーム64人がいたわけだし、さらに間の悪いことに、局長はその事実を司法省に報告してなかったんだ。

 局長に言わせりゃ、その時点まではまだ、そんな大事になってるなんて夢にも思ってなかったらしく、報告までするような必要は無いと判断してたそうだが、司法省にとっちゃそれは局長の背任行為、つまり『局長が司法省にとって不都合な事実を隠蔽した』と思わせるに十分だった。

 で、すっかりヒステリー起こした司法省は即刻、特務局を凍結した。局長自身も自分のオフィスに閉じ込められて、厳重な監視体制下にあるってことだ」

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