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番外編 『即、決行‼︎』


番外編 『即、決行‼︎』


「ねえ、あんたたちって、もうした?」


「ん? モウシタ????」


明日香は、その意味が分からず、眉を上げて訊いた。


「そりゃ、彼氏だもんねえ。もう、とっくにだよねえ」


「なになに、ゆかりさん、何のこと?」


明日香が、ニコニコとしながら好奇心の顔を近づけると、ゆかりは途端に興味を失ったように顔を引いた。


「あ、ごめん。アンタに訊いた私がバカだった」


「あえ?」


大学の中庭のベンチで、弁当を食べていた明日香は、隣にちょこんと座っている白猫のゆかりに玉子焼きを差し出した。


「やったあ‼︎ ママさんの玉子焼き〜」


「ねえ、ゆかりさん。コタローはどこ行っちゃったの?」


明日香は、唐揚げを咀嚼しながら、周りをキョロキョロと見回した。ゆかりと一緒に来ている芝犬のコタローの姿が無い。


「んー? アイツ、最近ここの女子学生に可愛がられちゃって、デレデレなの。鼻の下伸ばしちゃって、ほんとバカみたい。今もどっかで、可愛いー‼︎ とか言われて、ナデナデしてもらってんじゃないのー」


「あんまりウロウロしてると、誰かに連れてかれちゃうよ。ゆかりさんも気をつけて」


「んー、大丈夫大丈夫。私らはただの犬猫じゃないから。玉子焼き、んまー、ねえ明日香、も一つちょうだい‼︎」


「うん、いいーよ」


明日香が玉子焼きを差し出す。ゆかりは、はぐはぐとしながら、口の中に入れた。


「で? もうやったの?」


「ん? さっきから、ナニソレ」


明日香が、苦笑いしながら、続ける。二つ目の唐揚げに箸を刺して口元へ持ってくる。けれど、そこでぴたっと動きが止まった。


「あ、やっと理解してくれた?」


「ゆ、ゆかりさん、ななな、なに、なに言っちゃってんの……あわわわ、いやいや、それはない。それは、は、ぐ、あはははー」


ゆかりは玉子焼きをすっかり食べ終わると、口元をペロっと舐めて前脚で顔を洗い始めた。


「恋人同士なんだから、別にいいじゃないセッ……」

「あわわわああああ‼︎」


「耳元でうるさいわよっ」


両手で覆った顔は、真っ赤に染まっている。


「だってだって、家にはママだっているし、パパだって、コタローだっているんだよ⁉︎ そんなんムリムリ無理無理、ぜっったい、むりー‼︎」


両手を前に出して、パタパタと振る。さらに耳まで赤くして、明日香は小声で叫んだ。


「日本語とナスダリ語、混ざってるって」


ニャアっと喉を鳴らしながら、軽く笑う。


「でもまあ、いつかは……ねえ」


ニヤニヤとしながら、顔を洗い続ける。


「そ、そりゃあ、私だってロウといつも一緒にいたいし、イチャイチャもしたい……」


明日香が急に黙り込んだため、ゆかりは怪訝な目で見ながらも、前脚を舐める。


「イチャイチャかあ、私ももっと博士とイチャイチャしとけば良かったなあ……って、明日香‼︎ 聞いてんのっ?」


すると、明日香が唸り声を上げ始めた。


「あああああああっぁぁぁ⁉︎」


ゆかりが明日香を見る。

明日香も驚きの顔を、ゆかりの方へと向けた。


「ど、どしたの」


「ウソデショ、マジで良いこと思いついちゃったんだけども……」


「またそれえ???? あんたの良いことって、大したこと、」


「……ロウの家なら、誰もいないじゃん」


呟くように言うが、声が小さ過ぎて何を言っているのか分からず、ゆかりは訊き返した。


「はあ? なんて言ったの?」


「うおおお、ナニコレ名案過ぎるんだけどっ‼︎ 私って、天才かも‼︎」


「ちょ、明日香、どしたの?」


そこへ、中庭へのエントランスにロウの姿が見えた。ロウは明日香とゆかりに気がつくと、足を向けてこちらへと近づいてくる。


明日香は、いきなり立ち上がり、「ゆかりさん、私、ちょう良いこと思いついたから。行くね、行ってくる‼︎」


そして弁当箱を抱えガショガショと音をさせながら、おおおおおと雄叫びを上げて、ロウへと走っていく。


「でたよ、明日香のワケわからん行動力……」


ゆかりは溜め息を吐くと、ベンチから降りて歩き出そうとした。


その時。


「ロウっ‼︎ 私、めっちゃ良いこと思いついたああああ‼︎ 私んちはダメだけど、ロウの家ならできるよねえ、セッ」


その言葉にどわああっと思いながら、ゆかりが振り返って見ると、中庭に響き渡る大声で放送禁止用語を叫んだ明日香は、真っ赤になったロウに口を押さえられている。


そんな二人を見て呆れてから、やれやれコタロー探さなきゃと、歩き始めた。

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