3話 ヤミオチショウジョ
───真尋が…百人組手を記録更新レベルの早さで次々と倒していく。それは…最早、真尋の魔術とは思えない禍々しいものだ。
『須川 真尋 さんが 百人組手 の 記録 を 更新 しました。』
モニターにタイムが映し出される。
周囲がざわつく。以前の最速タイムより30分上回るタイムだった。
当の本人がアリーナに出てきた。1対1でやってくれないかと頼むが、また明日ね、と断られた。
家に帰り、魔術の鍛錬をするが、集中出来ない。
真尋が異常な魔気を発していた。それは紛れもない真実だ。何かに取り憑かれたようなそんな戦闘スタイルだった。彼女は常に遠距離から攻撃するスタイルだった。しかし、今回は近接ばかりであった。そもそもそのような魔法が使える事でさえも驚きだ。
その夜はまとまらない頭で宿題をしていく。そのおかげで誤答が多くなった。
次の日、約束通りに修練場に集まった。
「早速…戦るか!」
「うん…おねがい…」
いつもも変わらない真尋だ。すこし安堵する。
アリーナに入った瞬間、その安堵も不安に変わる。
「“闇”“血液”“生贄”“十重”“制御解放”」
聞いたこともない詠唱だった。眼は…白目は黒く、黒目は紅くなる。
「何もしないの…?」
気がつくと背後にいた。咄嗟にリストバンドに仕込んでいた氷柱を発動する。
───しかし、彼女はそこにはいない。辺りを見渡す。どこにも居ない。
不意に地面が暗くなる。上を見上げると、黒い小刀を手に真尋が降ってくる。
「“氷”“四重”“槍の盾”!」
少女に向けるには多すぎる数の槍だ。普通ならば。真尋は全て破壊した。瞬きをする間に。あっという間に眼前に迫る。
───殺人衝動に駆られているだけなら。
少し後ろに後退し、真尋の腕を押しのける。案の定、彼女の一撃は外れた。
「きゃうん!」
彼女は地面に叩きつけられた。しかし、そのまま起き上がる。
闇堕少女感はでたけど悪運少年感がないのが執筆中の感想です()