5話「安息の場」
「さて、どうしようか・・・」
俺が機械をいじって考えていると隣で突然ヨナさんがフードや手袋を外し始めた。
白い肌と透き通る様な髪があらわになる。
「ここだと、日光もないですし・・・なにより動きやすいですから。」
俺の視線を感じたからかヨナさんがそう説明した。
確かに現実世界では良いがここでは動きづらい。
ん、待てよ?
俺はしゃがんで自分のバッグの中から携帯電話を取り出した。
だが、携帯は圏外で使い物にならなかった。
「それはなんですか?」
上からヨナさんの声が聞こえてきた。
彼女は携帯電話をしらないらしい。
「これは携帯電話って言って遠くの人と連絡できる機械なんだ。まあ今は使えないんだけどね・・・」
俺がそういってヨナさんの方を見上げるとなぜかヨナさんは目をキラキラと光らせていた。
「本当にあるんですね!私映画でしか見たことなくて・・・」
「そうなんですか。ここから出たら買ってあげますよ」
「本当ですか!?約束ですよ!」
「も、もちろんです!」
俺は思わず軽い口約束をしてしまった。
だが、これをキッカケにこれからも関係を持てるのならそれが何よりだ。
「よし、がんばらないと!あ、そうだ、ショップに何があるかわかりますか?」
「ショップですか?見てみますね」
俺は言われたとおりにショップのタブを開いてみた。
ショップには食料やテントと言った生活用品から銃や弓といった物騒な物まである
「色々あるんですね。全部映画や本で見たものばかりです。」
ヨナさんが関心したように言った。
彼女はどんな本や映画を見ているのだろう。
「うーん、どんな物を買えばいいんですかね?僕も流石にこんな経験はなくて・・・」
「とりあえずお家を見つけたりするのはどうでしょう?それから物を置いてみたり。そうすればテント代が浮きませんかね」
「それもそうですね。何か良い場所を見つけましょうか」
俺はそういって辺りを見回した。
だが、並ぶのは崩れたビルばかり。人の気配も何もなかった。
「誰も、いないんですね・・・」
ヨナさんも同じことを考えていたみたいだ。
これだけ人の気配がしないということはここはかなり広いのだろう。
俺達は少し歩いてみることにした。
「あ、あの建物なんてどうですか?屋根もまだなんとかありそうだし・・・」
ヨナさんが歩いている途中にひとつの建物を見つけた。
確かに崩れてはいるが屋根があり、風雨を凌ぐ程度にはなりそうだ。
「確かにそうですね。あそこに入ってみましょうか」
ヨナさんと建物内に入ってみると以外に奥行きがあり、中々の環境に見える。
「結構広いですね。でも夜は少し寒くなるかもしれませんね」
「そうですねー。何か防寒の物を買ったほうが良いかも知れません。まあ夜になるまで待ちましょうか」
俺の意見にヨナさんが同意した。
このような形にはなったが少女と二人暮らしという夢の環境を手に入れられたのかもしれない。
このまま何事もなく生活していきたい。
俺はしみじみと考えた。