第四話「ゲームの始まり」
目覚めるとそこには見たことのない世界が広がっていた。
一言で言うならば、荒廃?滅亡?壊滅?そんなような所だった。
どんよりとした空、倒壊したビル、無造作に伸びる草木、まるで映画のワンシーンのような光景が広がっている。
自分の体を眺めると手首に身に覚えのない物がついている事に気づいた。
時計のようなものに液晶パネルがついている、今までに見たことのない代物だ。
外そうとしたが外し方がわからない。気づかぬうちに付けられてしまったみたいだ。
まあ今はそんなことよりも大事なことがある。状況の整理だ。
あの時、俺は確かに落ちてくる天井に押しつぶされたはずだ。
だが、体には痛みもなく、欠損もない。
ということはここは・・・
「死後の世界?」
死後の世界ってもう少し明るいもんじゃないのか?
天使がラッパを吹いて、美しい女神が出迎えてくれるような・・・
女神?俺の中で何かが引っかかった。
女神・・・美しい・・・
「ヨナさん!」
俺はあわてて周りを見回す。
すると、少し遠くに小さなシルエットが見えた。
駆け寄ってみると確かにヨナさんだった。
ぐったりとしていてまだ意識が戻っていないようだ。
「大丈夫ですか!?」
俺はヨナさんに必死に声をかけた。
「ん・・・」
俺の必死の声かけが届いたのかヨナさんは意識を取り戻した。
よく見るとヨナさんにも同じ時計が付いている。
「良かった・・・」
俺は思わず安堵の声を出した。
もしヨナさんが目を覚まさなかったら俺はこの世界で一生後悔することになっただろう。
それに、俺は今も昔も一人では何もできない。
仲間が一人いるだけでも心強い。
「カズヤさん?ここはどこなんですか?それにこの時計は?」
起き上がったヨナさんが周りを見渡し困惑した表情で問いかけてきた。
無理もない、俺だってまったく状況を理解していない。
少なくとも歓迎されていないのは確かだが。
「僕もわからないんです。ただ」
俺が見解を話そうとすると突如大きな音が響いた。
音の主は手首の時計だ。
なにやらメールが届いたらしい、随分ハイテクな機械だ。
そもそもここで電波が繋がっているのが驚きだ。
メールの題名は『通達』だ。
ヨナさんの時計にも同様のメールが送られてきている
俺は少し困惑しながらメールを開いた
『通達 ゲーム参加者総勢163名様へ
この世界にはもう慣れていただけたでしょうか。
皆様方もそろそろ気づいたでしょうが、ここは死後の世界です。
驚かないでください。死後の世界なんてこんなもんですよ。
天使がラッパを吹いていたり閻魔様に釜茹でにされるようなことはありません。
皆様方はお亡くなりになられたのです。デパートの崩落事故に巻き込まれてです。
家族をおいてここに来てしまった方、遣り残した事がまだある方、悔しい思い出である事は存じ上げております。
さて、本題です。今回はそんな皆様にチャンスを与えようと思います。
ルールは簡単。ここで生き残ることです。
生き残った方々は現実社会への復帰を約束します。
ただし、全員を生き返らせることは出来ません。10人です。最後まで生き残った10人のみを復帰させます。
次に、とっておきのシステムを2つご紹介します。
1つ目は、戦闘用アンドロイドの参加です。
私達が知恵を集めて作った、《殺人》兵器です。これを5体配置させていただきます。
2つ目は、貨幣システムです。
皆様方がつけているこの機械には一人1000円ずつの資金が入っています
これを使ってこの機械に導入されているショップメニューから多種多様な商品をご購入いただけます。ちなみにこの資金、他の参加者様を葬ることによって奪い取ることも可能です。
それでは良き戦いを期待しています。
ゲーム主催者一同』
メールはここで途切れていた。
読み終えた今でも状況は良くわからない。
だが、一ついえるのは謎の主催者が殺し合いを望んでいることだ。
「私達一体どうすれば・・・」
ヨナさんも不安そうな顔をしている。
「大丈夫です。きっと、いや絶対に生き残りましょう!」
俺は自分に言い聞かせるような言った。
なんでだろう、俺の心の中は少しワクワクしていた。