2話「少女の秘密」
「ごめんな。姉ちゃんが迷惑かけて」
俺が呆然としてドアを見ていると先程の若者が近づいてきた
「君が、ヨナさんの弟なのか?」
「ああ、そうだ。俺はレン。よろしく」
レンと名乗った若者はそういって手を差し出してきた。
ヨナさんと違って落ち着いている様子が伺える
だが、弟にしては顔も似ていないし、体格も全く違う。
「ああ、よろしく。俺はカズヤだ」
「よろしく。俺とヨナ、全然似てないだろ?俺達、本当の兄弟じゃないんだ」
レンは真顔でとんでもないことを口にした。
「どういう意味だ?」
「ヨナは捨て子だったんだ。家の前で倒れててさ。それで、俺達が面倒を見ることになったってわけ。ああ、姉ちゃんには言わないでね。姉ちゃん、そのこと知らないからさ」
「そうなんですか・・・」
それならまだ納得がいく。
複雑な話に、俺はただ相槌を打つほかなかった。
「ああ、ごめんね。少し重たい話だった。家は両親がもう居なくて二人暮らしでさ、話し相手が欲しかったんだ。」
レンはそういって少し悲しそうな顔をした。
彼も彼なりに苦労しているのだろう。
いや、まてよ?
「えっと、年いくつ?」
「年?17だよ。やっぱり驚くよね。とても姉ちゃんより年下には見えないでしょ?姉ちゃんはちょっと訳ありでね。今は話せないけど出来ればその話は姉ちゃんの前ではしないでほしいな。姉ちゃん、気にしてるから」
「ああ、わかった」
「あ、所でさ、ヨナに何か質問された?」
レンはそういって指を一本立てた。
こういうところは姉弟で結構似ているかもしれない。
「えーと、外の世界?について質問されたかな」
ヨナさんが酷い誤解をしていたあれだ。
そういえば弟に外の世界は怖いと言われたと言っていた。
一体どのような意図があったのだろうか。
「あーやっぱりか。姉ちゃん、最近ずっとそのことばかり話しててさ」
「何か、外に出ちゃいけない事情でもあるのか?」
「姉ちゃん病気なんだ。肌が弱くてね。日光に当たると、その・・・ダメなんだ」
「ああ、そうなんだ。ごめん。質問しすぎた」
「え?俺は別に・・・気にしなくていいよ」
レンはまた悲しそうな顔をした。
それならばあの肌の白さも納得がいく。
だけど、ヨナさんが病気を気にしているような姿は見られなかった。
「レン!朝御飯できたよ!」
気まずい沈黙が流れる中でヨナさんの声が聞こえてきた。
「わかった。今行くよ。立てる?」
「ごめん。ありがとう」
レンが差し出した手を借り、何とか立ち上がる。
頭痛はもう治まったらしい。
「家はあまりお金がないからいい食事かはわからないけど、良かったら食べてって」
そんな事を話しながらレンに付いていくと何だか懐かしさを感じる匂いがしてきた。
「3人前作りました。お口にあえばいいんですけど・・・」
ヨナさんが椅子にちょこんと座って俺達をを待っていた。
服装は白いブラウスで、胸元のリボンが肌の白さを際立たせていた。
机に乗っているのはいかにも日本、といったかんじの和食だった。
「いただきます」
試しに味噌汁から飲んでみる。
少し味は薄いが家で食べていたカップラーメンよりは遥かに体によさそうだ。
「ど、どうですか?」
「うん、おいしいよ」
俺がそういうとヨナさんはにっこり笑った。
そんな事をしている間にいつの間にかレンは食べ終わっていた。
「じゃ、俺バイトだから。行ってくるね、姉ちゃん」
「行ってらっしゃい!」
そういって二人はハイタッチをした。
本当にこの二人は仲がいいらしい。
俺はその光景を微笑ましく見ていた。
これから起きる悲劇も知らずに。