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終宴

 幹生が炭と、豆腐やこんにゃく、しらたきなどを積んで家に戻ってくる。

「おう、早かったな」

「ありゃ、千野(ゆきの)はまだだったか」

「せやな。野菜もまだゆうことになるけど、他は着々と進んどるわ」

 エスはバイクの荷台から、荷物のひもをといて炭を下ろす。箱ごとグリルのそばへ。

 他の荷物はもっぱら鍋の具なので、幹生が部屋の中へ。

「千野っていうと、いつもあっちの畑でクワ振ってる子? 話したことないわね」

 月夜は千野を、農作業をする姿を遠くから見たことしかない。農業に興味はないし、手の込んだドレスを可憐に着こなす自分と、ツナギ一枚で泥まみれの彼女とは、住む世界もものの考え方も違うと思っている。

 キノコとしても、誤食ナンバーワンの悪質毒キノコのツキヨタケと、いつも人里の畑に生える美味しい食菌であるハタケシメジでは、一致点がなにもない。

「そうなのか。いい子だぞ」

「いい子かどうかなんて、毒キノコの月夜にはどうでもいいわよ。ま、どうせフォトジェニックなこの月夜ほどかわいくはないでしょ」

 美しさには自信がある(そして実際、特に夜には素晴らしく美しい)月夜は、そんなふうにたかをくくる。

 幹生は苦笑を噛み殺して、部屋へ。

 グリルには炭火がおこされ、鍋には豆腐やこんにゃくの準備が進んできた頃、

「遅れてごめんなさえ。お野菜到着やえ」

 見事に日焼けした美少女が、もう切った野菜を大皿に抱えてやってきた。

「おう千野。切ってきてくれたんか。手ぇかけさしてすまんなあ」

「これくらいなんでもなえ」

「……え」

 エスが名を呼んで迎えたことで、月夜はこの美少女が、畑で見かける千野だと知る。

 ボブカットの髪は洗いざらしでまだ少し湿り、日焼けはどこまでも健康的。

 農作業で鍛えられた体には、肥満に見える無駄肉はまったくない。しなやかな筋肉が、皮膚一枚下で張りつめているのが一目でわかる。

 それでいて、ブルージーンズに白のTシャツ、首にかけた水色のタオルという簡素な服装の布一枚下で、出るべきところが見事に自己主張している。

 月夜は、つい彼女から距離を取る。

 美しさの種類が違いすぎる。夜ならまだしも、昼に並んで比べられたらダメだ。

「あっ、切ってくれてるんだ。ありがたいな」

 幹生が千野から野菜の大皿を受け取って、一礼する。

 バーベキューもぼたん鍋も、おおむね準備は整った。

「ああっ、こいつぁいけねえや!」

 だが、そこで香が大声をあげる。

「こんないいもんがあって、酒がねぇなんて殺生じゃねえかい?」

 そういうと、何人かが「そうだそうだ」と同調する。エスとか和歌恵とか。

「洋酒ならあるけど。ウィスキーにジンとラム」

「んな強ぇ酒、ちびちびやりながらバーベキューだなんて、盛り上がりゃしませんや。鍋だって、やるなら日本酒でしょう。あっしがひとっ走り、牛の字ぃ引っ張ってきます」

 洋酒派の幹生の持ち合わせでは納得せず、香は席を立って走りだす。

 牛の字こと、クロカワの黒革(くろかわ)(ひしめき)というキノコの娘が、酒豪でしかも日本酒党だ。彼女をこの宴会にひっぱりこめば、日本酒の一升や二升はついてくる。

「くひひひ……ほら、これならあみでも焼ける……」

「わーい」

 アルゲンティが親切にも、肉とニンジンとヒカゲシビレタケを串に刺してあみに渡す。

「にゃ」

 ゼラが目にもとまらぬ早業で、箸でキノコを弾き飛ばし、かわりにシイタケを挿し直す。

ヴォトカ(ウォッカ)じゃないのが惜しいねー」

 といいつつ、部屋では和歌恵は手酌でラム酒を注いでいる。

「おーい、香ほったらかして飲み始めるのか……?」

「酒に文句いうヤツはほっとき。俺はウィスキーもらうで。国産ウィスキーはもともと大阪のモンやからな。大阪のウィスキーは日本一、今や世界一や。ほれ、月夜も」

「エスさんがおっしゃるなら、いただきます」

 と、庭ではエスがウィスキーの瓶を開け、月夜と自分に注ぐ。

「あの、そろそろダシが沸いてしまいますから、始めませんと」

「香も間が悪いねェ。じゃあゴボウさンとニンジンさンから」

 紫とかほりも、野菜を鍋に入れ始める。

「なんだかなし崩しで始まっちゃいましたえ」

「ほんとに自由だなぁ、みんな」

 始まる宴の景色が黒にフェードアウトしていき、アルゲンティの顔だけが丸く残る。

「くひひ。この話にオチなんかないよ……。俺達の日常はこれからだ……」

 メタ発言を残して、丸く残ったアルゲンティも消え去る。

 どうも、最終回のあとがきまでお付き合いいただきまして、ありがとうございました。

 15年くらい前から、ちょくちょく二次創作書いたりblog書いたりしてましたが、なろうでははじめましてになります。あっ昭和生まれがバレる。

 友人に「キノコの娘大賞」に書いてみないかと誘われて、登録してみて書いてみました。


 最初は、文庫本一冊くらいの文量になるようなのを目指して、200KBくらいになる気宇壮大な話を書いてやるぞー、と意気込んで書き進めたものの、100KBくらいで止まってしまって。

 気が付けば、締め切りが11月末なのにもう11月18日。

 こりゃとても間に合わないということで、急遽、新しいものに方向転換。


 私、しっかりした長い物語というのは、読むこともあんまりないし、書くとなるとどうやってストーリーを組み立てればいいのか、わからなくなってしまって。ま、苦手なんです。

 たまにやろうとすると、決まって失敗する。

 そんな私が普段読んでるものはといえば、漫画ですらストーリー漫画あんまり読まなくなって、もっぱらまんがタイムきららばっかり。きらら・キャラット・MAX・ミラク、四誌とも毎月読んでます。

 それからあの「GJ部」も、原作1巻から、こりゃ絶対ヒットすると読み続けてました。


 じゃあ試しに、GJ部方式の四コマ小説にしてみようと。

 やってみると、頭が四コマ的なものに慣れてるせいか、わりと調子よく書ける。

 まあ、11月末も来ちゃったので、16話で一旦終わりにしましたが、時間があればまだまだ書けそうな気がします。



 私は大阪生まれの大阪育ちでして、ニセクロハツのエスはお気に入りでした。

 大阪的属性をどんどん盛れるし(笑)

 毒がまた良くて、構造式といい作用といい、実にクール。

 ちなみに彼女は書籍版とウェブ版でちょっとデザインが違ってまして、ウェブ版では裏地の構造式模様がありません。書籍版のデザインのほうが、クールなような彼女も実は派手好きな大阪人っぽくていい気がしたので。


 ヒカゲシビレタケのアルゲンティも、無茶なことして話を動かす変人キャラとして重宝します。存在自体が違法薬物なもんで、書いちゃやばいことも多いですが。大丈夫かな……

 キモかわいい、とは散々使われた言葉ですが、キモかわいいアルゲンティの、キモい、という要素をどう解釈してどう与えられるか、いろいろ夢が広がるキャラです。

 とはいえ、実は没にした作品の方で色々楽しんだキャラでして、今回書いた分では、少なくとも量的に物足りないところはあります。今回の出番だけじゃなあ……

 まあ、気が向いたらもっと書こうかな。



 さて、ムダに長いあとがきでしたが、また会う機会があればそのときまで。


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