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第四話 変化 2

前回、謎の前書きとなってしまいましたが、今回はちゃんと書こうと思います。

今回は、また新たな登場人物が加わります。いろいろ変なところがありますがご了承願います。

それでは、本編をどうぞ。

 おかしい。人通りの多い道を歩きつつそう感じた。いくらあっちが大規模な組織でも、もっと隠密で来るはずだ。静かに、かつ確実に殺しに来るはず。それなのにこういった尾行や、あからさまな行動を取るとは、愚の骨頂としか思えない。敵はまだこちらの力量を量っているだけなのだろうか。だとすれば、随分と慎重な奴らだ。

 そもそもオリオンとは一体どんな組織なのか。主な行動は何か。何の為に殺しに来たのか。あまりにも情報が少なすぎる。マスターがあんなに驚くほどの組織なら、自分の耳にも入ってくるはずなのだが、今日までそんな組織があるなどとは知らなかった。

「……どちらにせよ、この状況はあんまりよくねーよな……」

『ヒハハハハ! 気取り屋が!』

「お前は黙っていろ」

『余計な事考えてっと死ぬぜぇ、おい。ヒャハハハ。囲まれてるし』

 ふと気が付くと、見た覚えのないところにいた。いつの間にか人通りも少なくなっている。確かここを真っ直ぐ行けば繁華街に出ると思っていたのだが、ますますおかしい。

 とにかくここから出なければ。地図を取り出し、目でルートを追う。やはり道は覚えていなければいけないな、と一人呟いた。その瞬間、後ろから何かが当たったような気がして、慌てて振り向く。

「お兄さん、迷子なの?」

 自分より小さな女の子が、そこにいた。今時珍しい白髪で、おさげの女の子。が、瞳が濁っている。まるで自分の目と同じだ。透き通るような水晶玉を大事そうに持っている。

「……何か用か」

「迷子なんだ」

「話を聞け。何か用かって」

「道案内してあげる」

 女の子は濁った瞳で見上げた。そういえば、この子は話すときに口を開けていただろうか。声が聞こえない、それなのに言葉は分かる。それとも、自分が見ていないだけか。水晶玉に、自分の顔が映る。

「お兄さん、オリオンって知ってる?」

「……お前」

「知ってるんだよね? 殺し屋さん」

 戦慄を覚える。こいつ、何故俺のことを……。

「大丈夫よ、お兄さん。私は声をだしていないから、周りに気付かれる心配はないの。意思疎通っていうんだよねー? それに、私にはお兄さんの考えが見えるんだから。ちょっとしたことなら分かるんだよ」

「……まるで悟り、だな」

 冗談じみてそう言い放つと、女の子は表情を変えずに笑った。

「あははは。うまいね、お兄さん。否定はしないよ。私には……分かりやすく言ったら超能力があるから。嘘くさいって思うかもだけど、ね」

「……」

 険しい表情でその子を睨む。何もかもお見通し、とはこのことだろうか。先程叩き込んだ地図を思い描く。

「甘いね、お兄さん。今ここで私を殺せばいいのに」

「……ガキ、だからな。一応」

「意外。お兄さん、結構有名なんだよ? 変わり者って。常識外れなのかと思ってた」

「用件は」

「まぁ急かさない、急かさない。もうちょっとお話しようよ」

「今すぐここでお前の顔面を撃ち抜くぞ」

 女の子は不気味な笑みを浮かべて、わざとらしく肩をすくめる。まるで生き永らえてきた老婆のようだ。やること全てが手馴れているように見える。

「おー、こわ。お兄さん、掴みどころがないねぇ。お兄さんが分かんないや」

「お前如きが分かるはずがない。俺でさえ分かんねーんだ」

「弟さん、なら分かるかなぁ?」

 その単語を聞いた瞬間、考えるよりも早く銃をもつ手が女の子の眉間を捉えた。微かに残った道徳心で引き金を引く事はなかったが、今にも指を引きそうだ。ありったけの憎しみを瞳に込め、銃口の先を見る。誰にも弟の存在を引っ掻き回されたくない。何も知らないくせに。

「……お兄さん、やっぱり甘いね」

 女の子は水晶玉を掲げ、太陽の光に当てる。すると、身体の力が抜け、銃を握った右腕がだらりと下がった。手からは銃が滑り落ち、次第に足の方も感覚が無くなっていく。正に立っているのがやっとであった。足が小刻みに震え、最早気力だけで立っている。

「……!?」

「私はメノウ。触れた石を自在に操れるの。もちろん、その石に触れた人もね」

「……へぇ、そうかい」

 先程何か当たったような気がしたのは、あれは小石だったのか。メノウがいたずらっぽく笑う。

「最初からこれ使った方が早いんだけど、話してみたかったしね」

「残念だったな」

「話すことは何もないって? まぁ、別に強制的に殺しても構わないんだけど、上の方の命令があるから、それもできないんだなー、これが」

「大変なんだな、お前も」

「そうなんだよねー。一度に二人操らなきゃいけないし」

 胸の奥がざわめき、嫌な予感がする。俺と、もう一人……まさか……。

「あのお姉さん、ちょっと厳しかったな。お兄さんと違って」

 メノウは大人びたように笑い、長ズボンのポケットから三本の針をこちらに投げてよこした。自分はこの針の持ち主を知っている。針の金属音が、嫌な予感が的中したのを告げた。

「お兄さんが仲間に入らなければ、お姉さんも死ぬから。その点、よく考えてね?」

「……考えたな。けど、俺がそれでお前らの仲間に入るとでも?」

「ん〜、五分五分ってところかな。お兄さん、優しいもん」

 何故だかメノウの瞳が、少しだけ歪んだように見える。その瞳は懐かしいものを見るようだ。しかし、そう思った途端にメノウは背を向け、二度とその目を見ることは無くなった。

 今まで姿を見せなかった男が二人こちらに近付いてきて、いきなり鳩尾に拳を入れてきた。息が一瞬止まり、膝をつく。慌てて咳き込んでいるとすかさず男が後頭部を殴り、脇腹を蹴ってきた。顔を上げる事すらままならずに、鈍い痛みに耐える。意識が朦朧とするが、必死に立ち上がろうとした。

 ここで諦めれば、取り返しのつかないことになるだろう。どうにもならない状況で、ふとそんなことを考えている自分を見つけて、心の中で溜め息をつく。

『ギャハハハ! だせぇよ、オメー。傑作! 面白すぎ!!』

 耳障りな声がし、目を半分閉じる。

『ギャハハハ! ヒハハハハハハ!!』

「笑い……すぎだろ……っ」

「お兄さん、誰と話してるの?」

 笑い声の向こうから不安げな声がこちらに聞こえてきた。その言い方が弟と被り、妙に気分が悪い。すると、また狂気じみた声が嘲笑する。

『生粋のブラコンだな、おめー。今のお前、相当キモいぞ?』

「お前にも、分からねーだろな。いくらあいつが死んでからの付き合いでもな」

『何をごちゃごちゃと。おめーのことなら全部知ってるぜぇ? 世界で一番のブラコンだってなぁ!』

 笑い声が木霊すると同時に痛みが増し、荒い息をつく。視界が霞み、何もかもがぼやけて見えだした。

「俺は……」

『何しろ、お前は俺なんだからな』

 髪を掴まれ、頬を思い切り殴られる。コンクリートに身体をぶつけ、そこで頭の中にある何かが音を立てて映像が切れた。

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