第三話 仲間 4
「……で。お前ら家の方はいいのか?」
レイは昇る朝日をみやりつつ、隣を歩く仲間に聞く。アルシャルは「んー」と言ってしばらく考えていたが、やがて、にこっと笑った。
「ま、家って言っても組織だし。仕事があったらくるでしょ」
「は? アルに仕事が来るぐらいなら、俺の方に来るだろ!? 普通」
「な!? 椎羅の方が優秀、みたいじゃんか! 取り消せよ!!」
「あ、アル君。前に頼まれていた腹巻き、出来たよー」
「腹巻き!?」
「うん。前何か血まみれだったから、また新しく作ったの」
「……アルシャル……お前何か勘違いしてないか?」
「そんな事ないよ、レイ。腹巻きは最高の防具なんだよ? 何より暖かい!」
「……。ワケわかんねー」
ガシガシと荒く髪を掻き毟り、ふと、一言も喋らない同僚に気が付く。いつだってこいつの顔は仏頂面だが、今はそれより険しい。眉間に皺が寄せられ、風がシアンの短い髪を弄ぶ。
「……? シアン、どうした」
「……尾行されている」
「!?」
一気に四人の表情が強張る。が、直ぐにアルシャルと椎羅は元の表情に戻った。尾行されていることを悟られないように振舞う。シアンがそういうのなら、そうなのだから。
シアンのコード名は「ウルフ」。本人は嫌っているが、レイから見れば十分あっていると思う。こいつはいつだって鋭い。味覚や嗅覚が優れており、いざとなると獰猛になる。動物に例えるなら、文字通り一匹狼といったところだろう。だから、組織の中でも頼りにされているのだ。それが、シアンのプレッシャーをかけることとも思わずに。
「シアン……いつからだ?」
「この土手に来た頃からだ。恐らく二人……」
シアンの目が急に細くなり、睨むような顔になる。これが四人への合図だった。戦闘開始である。十分な敵意を、シアンは感じ取った。いつの間にか、風は止んでいる。
「レイは詩衣を連れてここから離れろ。落ち合う場所はバーでな」
そうシアンが呟いたかと思うと、もうその場にいなかった。姿勢を低くして駆け出していくシアンの後に、アルシャル、椎羅と続いて行く。
レイは、慌てて詩衣の手を掴むと、一気に駆け出した。詩衣も戸惑わずにちゃんとついて来てくれている様だ。この場面に出会うのは何度もあるらしい。背後で、鈍く重々しい音と、短い悲鳴がする。走る速度を上げ、声や音を遠ざけた。ゆっくりと、頭の中の地図を広げる。ここからバーまでの距離はそう遠くない筈だ。次の角を右に曲がり、街に入るのが一番早い。
詩衣の手を引いて角に行き当たる。思わず足を止め、角から現れた人物に目を向ける。目の前に銃器と人が飛び出してきた。小さく舌打ちして懐に手を突っ込む。が、厳しい声が背後で響いた。
「伏せな!」
咄嗟に頭を低くすると、強烈な回し蹴りが飛んできた。回し蹴りは、そのまま孤を描いて銃器を弾き飛ばすと、詩衣が体を低くして相手に突っ込む。そのまま袖から数本の裁縫針を取り出し、素早く相手の右目に突き刺した。横目で相手を見て短い悲鳴を聞きつつ、さっと針を抜く。その動作は、手馴れたものだった。何気ない日常の中に、赤が染色される。長年塀としての役目を果してきたコンクリートの壁に、赤い花が咲いた。
「行くよっ!」
そう言って、詩衣がレイの手をとり走り出す。そんな様子に唖然としつつ、聞こえないぐらいの声で呟いた。額に冷や汗が浮かぶ。
「俺、一生こいつに勝てねぇ……」
どうも。更新が遅れてすみませんでした……。最初に言い訳をさせてもらいますと、「時間がなかった」のです。けれど、それは他の人にとっても同じことなんですよね。反省します!
それでは、ここまで読んでくださっている方々、ありがとうございます。これからは無理矢理にでも時間を作っていきたいと思います。




