第三話 仲間 3
やっとこの辺りで主要キャラクターが全員登場してきました。これまで読んでくださっている方々に、感謝です。では、本編をどうぞ!
景色も変わった頃には、走り疲れたレイが、その場に座り込んで息を整えていた。するとすぐに椎羅に追いつかれたが、最早視界に映っていない。二人とも、土手の草むらに座り込んだ。
「へっ。体力落ちたな?レイ」
「うる……っせ。お、前が。異常……」
「テメッ!まだ言うか!?」
椎羅が再び包丁を取り出そうとすると、後ろからその手を掴まれた。
「いい加減にしとけよ。もう十分じゃねーか?」
「……ちっ」
椎羅は舌打ちすると、包丁をしまい、川辺の方を向いて口を開ける。
「……どーすんだよ。殴り込みすんのか?」
「誰がそんな事するっつったよ。無視だ無視」
「鬱陶しくないか?」
「うるっせ。無視してたらあっちも、ちょっかいださねーだろ」
レイは目を閉じて、そう言い放つ。その様子にアルシャルは、幾らか安心した様で、安堵のため息を吐いた。
「そうだよな。あっちもたまたま僕らの事が目に入っただけかも」
「確信はないがな」
冷たくシアンがそう言い放つ。と、その後ろ側で、女性の声がその場を響かせた。
「お〜い」
振り返ると、空色の瞳を苛立ちに歪ませた少女が、買い物袋を提げてこちらへとやってくるのが見えた。椎羅が、反射的に回れ右をして一気に駆け出そうとする。が、その前に詩衣の腕が、椎羅の腕を掴んだ。
「詩衣?どうしたんだ?……こんな朝早くから」
「それを言うなら、あんた達も、でしょ?ねー?椎羅?」
にこりと自分に背を向けている椎羅へ笑顔で聞くと、椎羅はびくりと肩を震わせ、ぎこちない動作で振り返った。気のせいか、うっすらと冷や汗が額を伝っているように見える。そのまま朝日を背に立っている詩衣に、ぎこちない笑みを返す。
「あ、ああ。そう……うん、まぁ」
「で?時に君は何をしているのかな?お姉ちゃん、妹が帰ってくるなんて聞いてなかったんだけどなぁ〜?」
「ああああ、あのー……。で、電話が繋がらなくて!」
「ずーっと携帯電話のアンテナは立っていたんだけど?」
「え、えと、あー。時間が……」
「へぇ?レイと追いかけっこしてて?」
「うっ!」
どんどん詰め寄ってくる姉に気圧された妹は、ばつが悪そうに顔を背ける。どうやら、こいつにも頭が上がらない奴はいるらしい。いつも何かと苛めている相手が逆に追い詰められている様子は、どこか滑稽に見える。そんな椎羅も、とうとう謝った。
「ご、ごめん……」
「え?語尾まできちんと言わなきゃねぇ?」
「ご……めんなさ……い」
「よろしい」
満足げに頷く姉に、椎羅はすぐに照れくさそうな顔付きになり、「う〜」と呻く。アルシャルが軽く笑い、「それじゃ、行こうか」と立ち上がって歩き出した。
詩衣は、すかさず椎羅の隣へ行き、腕を組んだ。それを、妹は恥ずかしがって「やめろよ」と言うが、振りほどく事はしない。ふと、その姉妹を横から見てみた。
成程、顔の形や髪型などがそっくりで、双子と言っても通じるだろう。髪の色と眼つきを除けば、そっくりである。姉妹がよく似るというのは、本当だったのだとどうでもいいことを考えた。
「お前はいっつも詩衣には敵わないんだな」
そう言って椎羅を見る。続いて「ざまぁみろ」と半ば得意顔で笑った。
「てめっ!後で覚えてろ!?」
椎羅はそう言って、笑う。土手の青々と生い茂る、名も知らない草がさわさわと音を立てた。
ようやく受験という怪物が過ぎ去り、小説を書く余裕が出来ました。ここまで読んでくださっている方々、ありがとうございます。アクセス数を見る度に励まされております。
自分の小説を見て、こいつ痛いな、と自覚もしております。しかし、そこはこれから精進していきたいと思っているので見捨てないで下さったらと思います。勝手ですが、今後ともよろしくお願いします。




