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エイプリルフールの死んだふり

作者: 有原優
掲載日:2026/04/01

「バアン」




 北見は福島を打つ振りをした。


 銃で撃つ振りだ。




 いつもしていた。銃で撃つ振りをしていた。


 いつもの習慣だった。




 だけど、その日は違った。






 ★




「え、なんで」




 福島恵果の体から血が止まらない。僕は玩具で彼女を撃ったはずだ。なのになぜ、彼女は口から、お腹から血を流して倒れているんだ。




 意味が、意味が本当に分からない。


 どうしてどうして、本当に意味が分からない。




 僕は撃ったマネを舌だけなのに。




 僕はその場から逃げ出した。訳が分からなかったから。




 ★




「えへへ、上手く行った」




 上手に彼をだますことが出来た。


 作戦が上手く行った。




 今日はエイプリルフール。


 一年で唯一嘘をついていい日だ。


 その日にわたしは屈指の死んだふりをした。


 彼を、北見悟をだますために。




 上手く行って良かったと思う。


 これも私の演技力が高いからかな。




 まあでも、エイプリルフールだとは気づいているだろうけど、でも、種明かしだけはしないとね。




 私は立ち上がって、そして彼の後を追う。


 種明かしをするために。








「――え?」




 瞬間、私を襲ったのは凄まじい痛みだった。


 何が起きたのかすら分からない。だけおd、唯一わかるのは、まずいという事。




 私はそのまま意識を暗闇に持っていかれた。






 ★






 僕は家に帰った。


 訳が分からないままだ。


 僕はベッドに沈む。


 僕は警察に逮捕されるのかな。そもそもなんであんなことになったの?


 意味が分からない。




 僕のせい、だよね。




 っどう考えても今のままじゃだめだ。




 このままじゃ。




 僕は家を出た。




 彼女のために救急車を呼ばなくてはならなかったのだ。






 僕は家を出た。その瞬間だった。




「悟、大変」母さんだ。「それどころじゃない」僕は叫んだ。




 しかし、つぎの瞬間、信じられない言葉を聞いた。



「実は――――」



 その言葉を聞いて、僕は居ても立っても居られなくなった。


 いったい、どうして。……




 なんで



 なんで




 なぜ、






 そして僕が病室に行くと、恵果は目をつぶり、ぐっすりと眠っていた。信じられない信じられない。


 どうして、一体どうして!!






 僕は時計を見た。


 13時半




 事故にあったのが、11時50分という事らしい。




 痛々しい姿。全身傷だらけの彼女を見て、僕の心は、深く傷ついた。




 今気づいたことだが、今日はエイプリルフールだったらしい。


 つまり、今日彼女は死んだふりをしていたのかもしれない。僕の撃つ振りを受けて。




 っだとしたら、まさに僕のせいじゃないか。




 僕があの場から逃げた。エイプリルフールだという事を知らずに、彼女の死んだ振りが本当だと信じ切って。




 ああ、僕はなんてことをしたんだ。全て、僕のせいじゃないか。


 きっと僕を追う最中に、事故にあったのだ。


 種明かしをするために、



 僕を追っている時に。





 ……犯人はすぐに捕まった、否自首したらしい。




 だけど、そんな事は今となってはどうでもいい。今僕が気になる事は、恵果の生死だけなのだから。
















 ――






 ――




 ――






 それから、三ヶ月が経った。恵果はまだ目を覚ましていない。






 僕は毎日彼女を看病してきた。まだ目覚めると信じたい所だけど、




 でも、一向に目を覚ます気配がない彼女を見ると、正直辛いところがある。目を背けたいところだ。




 いつまでも待ってはくれないだろう。


 もし容体が悪くなれば、きっと彼女は……


 恵果の治療が打ち切られる可能性もある。




 僕はまたため息をついた。






 僕は学校終わりにまた病院に向かった。きっといつもと同じことだろう。また眠っている恵果を見るだけになるだろう。






 ――そう思っていた。






「あれ、悟君?」




 病室にいくと、恵果がそうかすれた声で言う。


 掠れているのは当たり前だ。っだってずっと眠り続けていたのだから。


 いや、そんな事よりも、




「恵果大丈夫なのか?」


「うん、大丈夫だよ?」


 不思議そうに彼女が言った。何を言ってるの?なんていう枕詞がついてもおかしくないだろう。




「本当に大丈夫なのか?」


「大丈夫だって。……一体どうしたの?」


「いや、でも、車にひかれて」


「あー、あれならエイプリルフール」


「え?」


「エイプリルフールだよ。中々しゃれてるでしょ」


「何がだよ」


「死んだふり。車にひかれて死んだふりすることで、二重の仕掛けをこうじていたんだよ」




 確かに恵果は死んだふりをしていた。今回の事故もそれの延長戦という事かよ。




「エイプリルフールはもう過ぎているんだよ」


「あはは、そうだっけ。でも」




 にっこりと笑って。




「エイプリルフールドッキリ、成功!!」




 そう元気よく言ったのだった。


 それに対し、僕はもう一度、「種明かし遅いんだよ、三ヶ月過ぎてんだよ」と言った。すると、恵果はまた笑った。



 ただ、そこには楽しい空間が広がるのみだった。






 おまけ




 私は長い夢を見ていた。




 彼が、悟君がわたしに呼びかける声。




 こっちに戻って来いと叫ぶ夢。



 ずっと足が動かなかった。



彼の方に足を突き動かすことが出来なかった。




 だけど、



 ある日足が動いた。



 彼の元に戻ってこれたのだ。



 その瞬間、悟の顔が見えた。


 悟の表情を見て、わたしはほっとした。



 死んだふりという事にしたけれど、車が突っ込んでくるなんて、予想だにしてなかった。


 だけど、それをふくめてドッキリという事にしたら、悟くんは見事に笑ってくれた。



 えへへ、良かったあ。


 悟君が泣いてくれて。



そして、私を心配してくれて。



そして、最後は笑ってくれて。

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