邂逅編/桜庭結翔、オープン・ザ・ディメンション!
「はぁ~疲れた~、でもノルマは達成できたぞ。」
いつもと同じ仕事を繰り返す日々。満足はできていないが、悪くはない人生だと思っている。
昔の俺は自分を変えたいと思いつつも、変化のない日々を送り続けていた。三日坊主での挫折もしょっちゅうだった。しかし、今日俺は変わる…!なぜなら…!
「桜庭、今月もお疲れ様。無事にノルマを達成できたな!先日振り込んだ給料は確認したか?ついに記念日だっけか?だが忙しいときに3連休を取るなんてどういうことだ?旅行にでも行くのか?」
矢継ぎ早に言葉を並べてくれる社長。いつもお世話になっている人だ。
「ついにシックス・ディメンションで遊べるんですよ!給料を貯めてようやく買えましたよ、社長!わくわくで昨日の夜も眠れませんでしたよ。」
「だから会社でうとうとしている時間が長かったのか…。ノルマを達成できているから良いんだが…。」
俺の名前は桜庭結翔。
現実世界ではうだつが上がらない社会人。社長からは良くしてもらっているが、会社では孤立気味。
先日、給料が目標まで貯まり、あるゲームへのログイン権を買うことができた。
俺が楽しみにしていたのはオンラインゲーム、「シックス・ディメンション」。ゲームとはいうが、多数の企業が経営に参加し、経済活動も行われている。それでいて現実とは似て非なる空間だそうだ。職業もスキルも現実とは違う世界!変わりたかった俺にとって、第二の人生を楽しむには相応しい場所だと思う。
「あいつまた社長と…」
「客からの評判が良いからって調子に乗ってるよな…」
お客さんとの信頼関係は築けているが、社内での評判は良くない。全員と仲良くしようとした結果八方美人と思われてしまっている。
「…社長、失礼します。」
「3連休でゲームを楽しんできな。連休明けには感想を聞かしてくれよ。」
「分かってますよ。繁忙期に連休をくださり、ありがとうございました。」
俺は会社を後にして帰路に着く。わくわく気分でで駆け足になる。いつもの道もテーマパークの一部のように感じる。
その日の夜。俺は準備を整えた。
夕食も食べた。お風呂にも入った。パジャマも着たし、目覚まし時計も止めてある。
このゲームは睡眠時間中にも遊べるゲームだそうで、現実世界での体調の悪影響はない。レム睡眠というものを利用しているようだ。無論、ログアウトはいつでも可能だ。
先日購入した「鍵状のデバイス」。名前は「メモリーキー」。20万円ほどかかるこのデバイスは人気商品のため品薄状態だが、電気屋で買うことができた。このデバイスは個人情報の認証やセーブデータの保護など最新技術が詰め込まれている。
俺はメモリーキーをすっと前に出し、言葉を唱える。
「オープン・ザ・ディメンション!」
俺の第二の人生をこの手に!
俺の人生に幸あれ!




