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第一話 少女たちの掟

 こんにちは。

 ルーン魔法学園の生徒の皆様、ごきげんよう。本日は私、エリス・マティアーヌが担当させていただきます。


 はい。

 もちろん、本日もお勉強です。げんなりとされたお顔をされている方、今日はとっても大切なお話なので、最後までしっかりとお話を聞き、考え、受け止めてください。


 さて、本日ですが、もしも魔女であるメザーに遭遇したら……という仮のお話をしましょう。


 ええ、確かに魔女であるメザーはこの世界から根絶されたと言われていますよね。

 ですが、まだ我々は確証を得ていません。


 その証拠に、この地球上、つまり、アーゼナルの一〇八の都市や町の至る所に、デイモンが出現するファンタム・ホールが発生しているのはご存知だと思います。


 事実として、異形なるデイモンたちは存在していますよね?


 つまり、デイモンが存在しているということは、メザーがいても全くおかしくはないといういうことになります。


 なので、今までの概念を全て払拭し、メザーはもうこの世界にいない……という考えを改めることが本日の課題となります。


 では早速、メザーについてお話をしていきましょう。


 基本的にメザーは魔法少女であるシスターと同様に、属性魔法を使用します。属性については、もう既にご存知ですよね?


 フィフス・エレメントである、火、水、風、雷、土。


 それに加えて、ハイ・エレメントである、炎、氷、自然、音、大地。


 エターナル・エレメントである、光と闇。


 オール・エレメントというものも存在しますが、ここでは割愛させていただきますね。


 メザーもあなたたちと同様、適正のある者がおり、ほとんどのメザーが体内にレリックストーンを宿しています。


 なので、あなた方と同様に魔法が使用できるというわけです。


 いえ、同様というのは間違いです。正確に言うと、同じ属性魔法でも、更に強力な無詠唱魔法である零式ぜろしきを自在に操ります。


 そして、あなた方に託された魔法具である、ホーリー・デヴァイスを凌ぐ、古代魔法具のエンチャント・デヴァイスを使用します。


 なので一切の油断は許されません。

 実際にメザーに遭遇した時に、その恐ろしさを体感してからではもう遅いのです。


 というわけで、ここで問題です。

 もしもメザーと遭遇した場合の対処について考えてみましょう。


 相手は火属性の魔法を使用することがわかりました。

 対して、シスターAは水属性の魔法使いだとしましょう。


 さて、相手が火属性の魔法を使用してきた場合、どのように応戦するべきでしょうか?

 わかった人は手を上げてお答えください。


 はい。お時間となりました。


 メザーと遭遇したことがないあなた方は、どのように対処してよいのかわからないことでしょう。


 答えはとっても簡単です。

 ですが、少しだけ意地悪な問題でしたね。


 大半の方がこうお考えでしょう。

 火は水に弱いと――。


 ですがそれは大きな間違いです。


 まず、そもそも火属性の魔法に対して、水属性の魔法を使用することは安易と言えるでしょう。


 確かに属性同士には相性というものが存在します。しかし、メザーに関しては例外となります。


 威力の高い火属性魔法は、水などでは決して消えません。


 むしろ、水を注ぐことにより、火の勢いが増してしまう場合もあるのです。

 なので、明らかに自身の魔法が劣っていると判断した場合、対抗手段は一つです。


 ご自身が最も得意とする青魔法で対抗しましょう。

 つまり、無属性魔法であれば通じる可能性があることがわかっています。ただ、青魔法での攻撃方法は多くありませんよね?


 もし、それでも対処できない場合は、潔く撤退するのが魔法少女であるシスターの鉄則です。


 逃げることは格好悪い?


 いいえ、メザーに殺され、レリックストーンを奪われることの方がよほど格好悪い……というより、我々からすると非常に困ったことになってしまうのです。


 あなた方はノーマライズと呼ばれる儀式を覚えていますでしょうか?


 そうです。

 入学前に受けた適正検査であるサバトに合格したあなたたちに与えられた最初の試練でしたね。


 適正のあるレリックストーンを体内に取り込む儀式でしたが、大変苦痛だったでしょう。


 それでも、今こうしてルーン魔法学園の生徒として授業を受けている以上は、これからシスターになるという意識を強く持っていただく必要があります。


 ちなみに、レリックストーンがイニシャライズ、つまり、体外へと摘出されるのは、二十歳を迎えるか、もしくは死した時になります。


 つまり、メザーに殺されてレリックストーンを奪われるということは、今までの全てを無駄にしてしまう、それほどまでに重要なことなのです。


 命よりもレリックストーンの方が大事なのか?と思った方もいらっしゃると思います。

 まさに、その通りなのです。


 以前の授業でお伝えした通り、レリックストーンは神々の力を宿した聖遺産なのです。


 一見すると、綺麗なただの宝石にしか見えませんが、そこには神々各々の属性が宿っているのです。


 なので、人間であるあなた方ヒュンメルの命と同等、場合によってはそれ以上のものだとここでははっきりと言わせていただきます。


 なので、メザーと遭遇した場合の対処方法は、増援が来るまで生き延びる、もしくは撤退するというのがセオリーとなっているのです。


 メザーを倒すことができるシスターは、数えられる程度でしょう。


 いえ、この時代には……。おっと、なんだか皆様、表情がお固いですね。


 ではお話を少し変えて、シスターの掟について少しおさらいしましょう。


 基本的にシスターは2マンセルで行動します。少人数精鋭、二人で一つ。それがシスターなのです。


 シスターの片割れはマスターとなり、教え子であるメメントを育成します。基本的にソロでの行動は禁じられています。


 理由はただ一つ。

 もし仮に、どちらか片方が絶命した場合、必ずレリックストーンを持ち帰る為です。シスターの三つの掟の一つですよね?


 おっと、また表情がお固くなってしまいましたね。


 しかし、戦いに身を投じる以上は、その可能性はあり得ないことはないのです。

 それを覚悟の上で、あなた方はここにいるものだと私は理解しています。

 その上で、お話を進めますね。


 死に際に手を握るだけで、あなた方に宿りしレリックストーンはイニシャライズされます。

 なので、これから見習いであるメメントになる皆様は、たとえマスターが死した場合でも、必ずレリックストーンを回収してください。


 万が一掟を破った場合、そのシスターには厳罰処分が下されます。具体的には、レイティングの降格、剥奪という形になります。


 レイティングはシスターの力量を示す唯一の指標であり、シスターは昇格の為に日々デイモンと戦い続けるのです。


 そして、最終的に神に近しい存在となり、世界を平穏に導く――。

 それが、シスターとして選ばれしあなた方の運命なのです。


 その対価として、第八信徒であるファティマまで昇格したシスターは夢を一つだけ叶えることができます。


 夢は無限大です。

 あなた方シスターたちはその対価の元、今日も一人前のシスターとなる為に勉学に勤しんでいるのです。


 あなた方は選ばれし者という自覚を常に持つ必要があります。そしてシスターは、いつでも、清く正しくがもっとうとなります。


 もし仮に、世界が平穏にならなかった場合、親しき者が命を落とすことになるでしょう。

 メザーやデイモンで溢れ返った世界を想像してみてください。

 決して、ヒュンメルはその世界では生きていけませんよね?


 なので皆様は、一日でも早いマスターへの昇格を目指して、鍛錬に励みましょう。

 最後に、シスターの三つの掟について私に続いて復唱してください。


 一つ目。

 知られてはならない。


 シスターはこの世界、アーゼナルの民であるヒュンメルにその存在を知られてはいけません。


 万が一、ヒュンメルと遭遇した際は、記憶を改変する魔法により、その一切の痕跡を消すことが義務付けられています。


 二つ目。

 守らねばならない。


 この地球、アーゼナルはもちろんのこと、シスターはアーゼナルの民であるヒュンメルを守ることが義務付けられています。


 敵の存在をいち早く探知し、ヒュンメルが危険に晒されることのないように努める必要があります。


 三つ目。

 渡してはならない。


 シスターに宿りしレリックストーンは神々の残した聖遺物です。

 万が一、仲間が死した際には、必ずレリックストーンを持ち帰ることが鉄則となっています。


 はい、よくできました。

 って、居眠りをしている人はもう知りませんからね?

 それでは、授業を終わります。

続きは予約投稿してます。

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