第6話 初めての魔物:スライム
「そういえばオウマはこんなところで何してたの?」
スランがぷるんと体を揺らしながら訊いてくる。
「薬草を集めてたんだよ。ギルドの依頼でね」
旺真は手にした布袋の中身を見せながら答える。
「へえー!お仕事してたんだ!えらーい!」
「そっちは何してたんだ?スラン」
「うん!びっくりさせる人を探してたらオウマを見つけたんだよ!オウマの『うわああ!』って声、サイコーだった!」
「ど、どうも……」
照れくさそうに頬を掻きながら、旺真は思わず笑ってしまう。
「いつもそんなことしてるのか?」
「うん!スライムって、人を驚かせるのが強さの証なの!だから強そうな人を驚かせると、他のスライムたちから『すっげー!』って言われるんだよ!」
「どこのモンスターアニメーションみたいな生活してるんだよ……」
スランはケラケラと楽しそうに笑っている。
「でもね、驚かせようとしただけなのに、たまにすぐ攻撃されちゃって……困っちゃう」
「そりゃ攻撃するだろ……。でも、何もしなければ襲ってこないって聞いてたけど、そういうことか。みんなただ驚かせたいだけで……」
旺真は改めて、人間と魔物の文化の違いを感じた。
「ねーねー!」
スランがさらにぴょんと跳ねて声を上げる。
「僕の家に来てよー!おとーさんとおかーさん、それに兄弟にも紹介したいの!人間に興味ある魔物、多いんだ!」
「え、家?スライムの家ってどこにあるんだ……?」
「この先の森の中に、スライム族の洞窟があるよ!」
「洞窟か……」
「そうと決まれば早くいこー!!」
楽しそうに駆け出していくスラン。
「おい、ちょっと待てよっ。まだ薬草摘み終わってないんだけど」
「まぁ面白そうだし、いいか」
不安半分、好奇心半分――
だが旺真の中で、「人間と魔物は話せる」という希望の火が、小さく灯り始めていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
スライムのスランと出会い、お互いに成長していく。
旺真は魔王と呼ばれるようになる一歩を歩みはじめました。
これからどんな2人の旅になっていくのか楽しみにしてください!