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第4話 異世界で初めてのお仕事

ギルドの扉を開けた瞬間、旺真は思わず立ち尽くした。


「……おお……」


中は思っていたよりもずっと広く、賑やかだった。

分厚い鎧を着た戦士、ローブをまとった魔術師風の男女、巨大な剣や斧を担いだ筋骨隆々の冒険者たちが、酒を飲んだり依頼を話し合ったりしている。


(……完全に場違い……!)


俺みたいなヒョロい高校生が、紛れ込んでいい場所じゃない気がした。


だけど――

「ようこそ、冒険者ギルドへ!」


明るい笑顔の受付嬢が、俺に気づいて声をかけてくれた。


その一言で、少しだけ緊張が解ける。


「えっと……その、仕事をしたいんですけど」


「はい、もちろん!どなたでも登録できますよ♪」


笑顔のまま手続きが始まり、必要な書類に名前や年齢を記入する。


「進藤旺真さん、ですね? 珍しいお名前ですね。」


「まぁ遠い地域が出身の旅人でして、、、」

(さすがに異世界から無理やり召喚されて、戦力外通告受けましたとはカッコ悪すぎて言いたくない)


「そうなんですね!ではステータス確認を行いますね。こちらの魔道具に手を置いてください」


促されるまま、クリスタルのような球体に手を置くと――


ぱあ、と淡く光って、浮かび上がる文字と数値。


「う〜ん……スキルは少し珍しいですね。ただ、戦闘向きではなさそうなので、ランクはFからのスタートになります」


「……ですよね」


王様にも役立たず扱いされたんだ。今さら驚きはしない。


「ギルドランクはS〜Fに分かれていて、Sが最高、Fが初心者です。依頼をこなしてポイントを貯めれば、昇格していきますよ。最初は簡単な雑用や配達などが中心ですが……」


「はい、それでいいです。今日泊まるホテル代も稼がないといけないんで……」


「かしこまりました♪ では、依頼はクエストボードから選んで、紙を持ってきてくださいね」



俺はカウンター横に設置された巨大な掲示板へ向かった。

「討伐」「採取」「運搬」などカテゴリごとに色分けされていて、ランクごとに仕切られている。


Fランクのエリアには――

•「市場の掃除」

•「迷子のペット探し」

•「荷物運び」

•「薬草摘み」


「……俺でもなんとかなるか……?」


選んだ依頼書を手に受付に戻ると、さっきの受付嬢が確認してくれた。


「薬草摘み、ですね?」


クエストボードを前に少し迷ったが、結局それを選んだ。


「はい、それならこちら。街から南の草原地帯に生えている“ヒルア草”を10本採取してください。報酬は銀貨4枚です」


「おお……悪くない」


(なんかクエストっぽいし、これはいいんじゃ……?)


「ただし、街の外に出ることになるので、多少の危険は伴います」


「危険……?」


「スライムなどの弱い魔物が、たまに出るんです。でもご安心を。今回はそれなりに安全な範囲での依頼になっています」


「それって、スライムは弱いってことですよね?」


「はい、動きはそんなに早くないですし、刺激しなければ襲ってきません。出会ったら走って逃げれば問題ありません。ただし――」


受付嬢はそこでピシッと顔を引き締めた。


「ギルドは、依頼中の事故・死亡などに関しては一切責任を負いません」


「…………マジですか」


笑顔で言われると逆に怖い。

が、もう受けるって決めたし、銀貨4枚は魅力的だ。


「大丈夫ですよ。皆さん最初はそこから始めますし、薬草摘みで腕を磨く冒険者も多いんです。武器はお持ちですか?」


「……いや、何も」


「でしたらこちらをお貸しします。使い古しですが、小型の短剣です。護身用にどうぞ」


そう言って手渡されたのは、刃こぼれもある短剣だった。いかにも冒険者ごっこって感じだが、今の俺には十分だ。


「それと、これがヒルア草の見本です。白い葉っぱに紫の縁取りが特徴です。間違って毒草を摘まないようにしてくださいね♪」



はじめての異世界フィールド


ギルドを出て、南門を通って街の外へ。


「……おお……」


一歩出ただけで、目の前に広がる異世界の大地。

見渡す限りの草原、鮮やかな緑と青空、遠くに見える山々。ファンタジーRPGでしか見たことがない景色が、現実として目の前にある。


(すげぇ……)


魔法も剣もスキルも、今は何もできない俺だけど。

それでも、こうして最初の一歩を踏み出した実感に、胸が高鳴った。


「よし……まずは、薬草を探そう」


ポーチにある見本のヒルア草を確認しながら、草原を歩き始める。


しばらくすると――


「……あった!」


岩陰に、見本と同じ白と紫の草が生えている。


慎重に摘み取り、ポーチに入れる。


「あと9本……楽勝かも?」


そう思って歩き出した――その時だった。


「ぶるるるっ……」


「……え?」


突如、ぷるんと揺れる水のかたまり――が現れた。


ここまで読んで頂きありがとうございます。


ギルドで依頼を受けることにした旺真。

宿は銀貨2,3枚で泊まれるので、とりあえず薬草を摘めたら今日の寝る場所は確保できる。


果たして初めてのおつかいは成功するのか!?

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