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第18話 物作り

「……ゴブぅ……」

「んん……天国かと思ったゴブ……」


最初に目を覚ましたのはゴブろうだった。

続いて、ゴブてつとゴブかもゆっくりと意識を取り戻す。


「お、おおい……さっきのは刺激が強すぎた……」

「……一瞬天国に行って来たゴブ……」


「目、覚めたか」

と、紙に作ろうとしているものの概要を書いていた旺真が顔を上げた。


「おう……お前の力、マジですごかったゴブ……!」

と感動しているゴブか。

「オウマ様の力は凄すぎるゴブ」

オウマの凄さを再び感じて浸っているゴブろう。


「そういえば、 何を作るつもりゴブ?」とゴブてつが旺真に聞く。


「……教えてやるよ」

旺真は作ろうとしているもののイメージをゴブてつとゴブかに送り、言った。


「“頭を撫でてくれる女性”を作るんだ」


「……これ……は?」

「作りものなのか?本物の人間ぽいゴブ」

と旺真から送られてきたイメージが今まで見たことないものなのでゴブてつとゴブかは理解しきれていない。


「そう、作りものなんだ。フィギュアっていう。人間の姿を切り取って、まるで動き出しそうなくらいリアルに作られているものがあるんだ」


「……! それ……凄いゴブ!」


「このフィギュアを女性をモチーフにして、手を差し出して頭を撫でているような姿にする」


「それがあれば、オラたちいつでも夢を見られるゴブ!」


「よし、じゃあ早速始めようぜ」

旺真はやる気に満ちた目で二人に言った。


「俺たちで、ゴブリン族の夢をカタチにするんだ」


「「おおおおおゴブッ!!」」

————————————


作成に入るために会議を始めていた。


「本当なら、ポリ塩化ビニルとかで作るんだけどな……」

ぽつりと呟くと、ゴブてつとゴブかが同時に首を傾げた。


「ポリ……なんとか?」

「それ、食えるゴブか?」


「いや、食えない。人間界で使う素材だ。柔らかくて、細かい造形ができて、塗装もきれいに乗るやつ」

「でも、ここにはそんな素材ないし、今回は“木”で作るか」


「木ゴブかー……ちょっと難しいけど、やってやるゴブ!」

「うん、ゴブてつとオレでやれば、きっと大丈夫ゴブ!」


旺真は、頷く二匹を見て、小さく息を吸い込んだ。


「じゃあ……これから作る像の“モデル”を見せるよ」


女性が少し膝を曲げて、優しく笑いながら子どもの頭を撫でようとする姿。

その瞬間を、心の中で思い描き、イメージとしてゴブてつとゴブかに送る。


二匹は一瞬で静止し、目を見開いた。


「……な、なんて可愛いゴブ……」

「このお姉さん、天使ゴブ……!」


旺真は心の中で呟く。


(……あー、ごめんな白川、モデルにするのはちょっとどうかとも思ったけど……でも、作るなら可愛い人のほうがいいし。許してくれ)


旺真は学校の美少女である白川 澪の制服姿フィギュアを作ろうとしていた。


「さあ、作業を始めよう。細部までしっかり作るぞ。撫でてもらってるって“錯覚”できるレベルでな」


「おうゴブ! 任せろゴブ!」

「この可愛い差を完璧に完璧に再現するゴブ!」


—————————-


それからの毎日は、木削りと造形の連続だった。


木材の選定から始まり、切り出し、荒削り、磨き、彫刻。

顔の表情、指の曲がり方、手の位置まで。


旺真は、妥協を一切しなかった。

その集中力に、ゴブてつとゴブかも必死に喰らいつく。


「この指のラインがちょっと違うゴブ!」

「こっちは笑顔が足りないゴブ!」

「撫でる手の角度を少しだけ変えて、もっと優しく感じるようにしよう」

「ここにふんわりした前髪が入ると、めっちゃ“白川”感あるな……」


昼は作業、夜はゴブすけやゴブぞうが用意してくれた食事を囲み、次の日の打ち合わせを行う。

一週間が経つ頃には、工房にはまるで生きているような美しい“像”の姿が現れ始めていた。


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