第17話 ゴブてつとゴフか
「こっちゴブ!」
「遅れるなゴブ〜!」
そう言って、嬉しそうに先を歩くのはゴブてつとゴブか。
旺真とスラン、ゴブリン3匹はその後ろを少し距離を取りながらついていく。
歩いていると異質な建物が現れた。
ゴブリンの集落の中では大きい建物で、しっかりとした構造を持つ木造建築。
入口には鉄の扉、屋根からは煙突が伸び、そこからうっすらと白煙が立ち上っている。
「ここが……工房?」
スランがぽつりと呟く。
「みたいだな、職人がいるぞ……って感じだな」
「さあ、入るゴブ!」
「お前ら、度肝を抜かれるゴブよ!」
ギイ……と扉が開かれる。
中に入ると、そこにはまさに“職人の住処”とでも呼ぶべき光景が広がっていた。
壁沿いには整然と並べられた武器たち。
剣、斧、槍、弓……さまざまな金属の武具が輝いている。
中央には鍛冶場があり、赤く燃える炉が唸りを上げていた。
脇には木工用の道具や、家具らしきものが並んだ工作スペース。
大小のハンマー、ノミ、鋸……そのどれもが年季の入った手仕事の道具だ。
「……これ、マジでゴブリンの工房か?」
旺真が思わず呟くと、ゴブかが誇らしげに胸を張った。
「当然ゴブ! 武器も道具も、オラたちが全部作ってるゴブよ!」
「俺たちはゴブリンの中でも特別なクラフト兄弟ゴブ!」
「……これは、想像以上に本格的だな……」
「で、何を作るつもりゴブ? 早く言うゴブ!」
「オラたちの腕が鳴るゴブ!」
ワクワクした様子の二人に囲まれて、旺真は苦笑を浮かべる。
「……うーん、言葉で説明するの難しいんだよな。俺のスキルを使えば、イメージで伝えられるんだけど」
そう呟いた旺真は、ふと後ろを振り返る。
「……ゴブろう、ちょっと来てくれる?」
「なんだゴブ? また何かしてくださるゴブか?」
ゴブろうがとてとてと近づいてくる。
「まぁ、待ってて。今からすごい体験させてあげるから」
そう言って、旺真はMINEで、人間の女性に「よしよし」と頭を撫でられるゴブろうの映像を、直接ゴブろうの脳内に送信する。
「……んふっ♡」
ゴブろうの目がハートになったかと思うと、そのままふらりとよろけて――
「……ゴブぅっ♡」
ドサッと音を立てて、気絶した。
「お、おい! ゴブろうがまた倒れたゴブ!」
「しかも……あの顔……!!」
ゴブろうが倒れたことで騒ぐゴブすけとゴブぞう。
「……これが、俺のスキル。イメージをそのまま脳に送れるんだ」
「す、すごいゴブ……」
「こんなゴブろうの姿を見たことないゴブ……」
目を丸くして驚くゴブてつとゴブか。
その瞬間――
旺真の脳内に、また機械音が響く。
【通知】
「ゴブテツ」「ゴブカ」の好感度が上昇しました。
MINEのフレンドに追加されました。
「よし……これで二人にもイメージを送れるな」
旺真がそう呟くと、ゴブてつとゴブかはすぐさま地面にひれ伏すように頭を下げた。
「オラにも送ってくれゴブ! お願いゴブ!!」
「オラにも夢を見せてくれゴブ!!」
「……しかたないなぁ」
旺真は苦笑しつつ、二人にも自分達が頭を撫でられる映像を送ってあげる。
「……ゴブぁぁ♡」
「……天ゴブぅぅ♡」
ドサッ!
「みんなこうなるんだね!」
楽しそうに見守るスラン。
目の前でゴブてつとゴブかが仲良く同時に倒れる。
「……しばらく休憩だな」
旺真がぼそりと呟くと、スランが横で笑いながら言った。
「ゴブリン達って、ほんと面白いね」
ここまで読んでいただきありがとうございます!
ゴブリン達の人間味が伝われば嬉しいです。
これからも楽しんで読んでいただければと思います。