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第16話 ゴブリンの長老

集落の最奥。

天高くそびえる太い木の幹に沿って建てられた、大きな木造の家。

何段もの木の階段を登っていくと、やがて苔むした重厚な扉の前にたどり着く。


「ここが……長老の家か」

「いかにも偉いって感じだねー」


旺真とスランは、ゴブろうたちに案内されながら、扉をくぐる。

中は意外にも広く、中央には年老いたゴブリンが座っていた。

頭蓋骨が持ち手になっている杖を持ち、長い耳には骨製の装飾がいくつもついている。


「おい、ゴブろう。さっき伝え聞いた“人間の女に頭を撫でてもらった”というのは本当なのか!?」


長老がゴブろう達に向かって叫ぶ。

凄みのある声色に体が強張る旺真。



「本当ゴブ! このお方が夢を叶えてくれたゴブ! 落雷が落ちたような衝撃だったゴブ!」


「うるさい! 妄想はやめろ! 人間の女が、我らに触るなどあるはずがない!!」

長老は杖を床にドンと突き立て、立ち上がる。


建物全体が揺れるのを感じる。


「もし本当なら……本当なら、わしも触ってほしいぞ!!」


急に寝転がり、床の上で手足をバタつかせて叫ぶその姿に、旺真は思わず心の中でつぶやく。


(いやいやいやいやいや、部屋に入った時に感じた威厳はどこいったんだよ、いい歳したゴブリンが……子どもかよ……)


「でも、嘘だったらどうしてくれる!? 男なんか食いたかないが、腹立ち紛れに食ってやるぞ!」

長老は起き上がり、涙目で怒鳴る。


(羨ましすぎてめっちゃ怒ってる……)


旺真はMINEを使えれば、念話で動画や画像を送れるので証明できると考えるが、こんな状況で好感度が上がるはずがない。


「すぐに女性を攫ってきて、目の前でやってみせろ!」

そう迫る長老に、旺真はすかさず止める。


「いや、それはやめてください! 攫うなんてしたら夢が遠のいてしまいます!」

(こんなとこに連れてこられる女性が可哀想すぎる)


「じゃあどうするつもりだ!」


「そうですね……」と旺真が答えに詰まったその時、隣でスランがぼそりと言う。


「人間の女の人が、ずっとここにいてくれたら……全員、頭を撫でてもらえるのにね」


「……」


旺真は一瞬フリーズする。


(ずっとここに……って、いやいや、絶対無理だろ。

こんなところに長くいたら普通の人間なら精神崩壊してしまうだろ……)


しかし――


(いや、逆に“ずっといる”ようなもので、みんなの夢が叶えられる“何か”を……)


ふと、脳内で何かがひらめいた。


「……わかりました。俺が、この場所に“夢を叶えるもの”を作ります!」


「ほう?」


「それで、誰でもいつでも頭を撫でてもらえるようにします。

だからその代わりに、工作が得意なゴブリンを何人か貸してもらえませんか?」


いつの間にか椅子に座り直している長老は目を細めてじっと見つめたあと――


「……夢が叶うのなら、まぁ良かろう。

ゴブテツと ゴブカを呼んでこい!」


長老の家にドタドタと現れたのは、体格ががっしりとした2匹のゴブリンだった。

ひとりは太い腕と金槌を持ち、もうひとりはゴーグルのようなものを身につけている。


「ゴブテツとゴブカ。こいつらは我らゴブリン族の誇る、モノづくりの兄弟だ。

武器、道具、家……何でも作れるぞ」


「お前ら、こやつの手伝いをしてやれ! そして、わしの夢を叶えるのじゃ!」


「わかったゴブ!」「任せるゴブ!」


頼もしそうな笑顔を見せる兄弟に、旺真は小さく息を吐いた。


(みんなのためではなく、自分の夢の為かよ……よほど羨ましいんだろうな……)

と心の中で呟く旺真。


こうして、旺真はゴブリン族の夢を叶えるため、

ゴブテツとゴブカの工房へと足を運ぶのだった。


ここまで読んでくださりありがとうございます!


これから命をかけた工作が始まります。

旺真はゴブリンの夢を叶えるための何を作るのか

どのような展開になるのか楽しみに読んでください!

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