第14話 魔物達の橋渡し
MINEの新機能を試し終えた旺真は、地面に倒れたままスヤスヤと幸せそうな顔で眠るゴブろう、ゴブすけ、ゴブぞうを見下ろして、ふっと息を吐いた。
「……さすがに、そろそろ起きてくれよな。ずっとこのままじゃ困るし」
隣のスランが小声で囁く。
「気持ちよさそうに寝てるから、起こすのちょっとかわいそうだね……」
「そうだけどな、まあ一応……“テスト”も兼ねてさ」
(じゃあ、やってみるか……)
旺真は三匹のゴブリンに向けて同時に念話を送った。
⸻
《おーい、起きろー。ゴブろう、ゴブすけ、ゴブぞう。早く起きろー》
⸻
数秒の静寂の後――
「ッ……!」
「はっ!? うわっ、寝てたゴブ!!」
「び、びっくりした……! 何が起きたゴブ!?」
「……神様の声!? いや、違う、オウマ様の声だゴブ!!」
三匹のゴブリンがバネ仕掛けのように飛び起きる。
「夢!? 夢じゃない!? でも触られたのは現実ゴブ!!」
「し、幸せすぎて心臓止まるかと思ったゴブ……!」
ばたばたと慌てふためき、互いに顔を見合わせながら混乱する三匹。
その様子を見ていた旺真とスランは、たまらず――
「ぷっ……くくく……! あはははっ!」
「起きた、起きた~! びっくりしてる~!」
腹を抱えて笑い出す。
ゴブろうは寝ぼけ顔で頭をかきながら、訝しげに旺真を見た。
「今、頭の中に直接語りかけてきたのはなんだったんだ?」
「さっきのは俺の新しい能力。“MINE”ってやつで、離れててもお前らに話しかけられるんだ」
スランは笑いながら、ぷるぷると身体を揺らした。
「でも、みんな元気に起きてよかった! ね、旺真!」
「ああ。まあ……ちょっと面白すぎたけどな」
森の一角、穏やかで平和な空気が流れていた。
意思が正常に戻ってきたゴブろうが、急にびしっと姿勢を正して片膝をつくと、真剣な顔で旺真を見上げた。
「オウマ様!」
「おう……?」
「あなた様は……我らゴブリン族の夢を……たった一瞬で叶えてくださった……!」
続けてゴブすけとゴブぞうも、同じように膝をついてぺこりと頭を垂れる。
「オウマ様は……我らの希望ゴブ……!」
「これからもゴブリン族の導き手として、我々を導いてほしいゴブ……!」
「いやいやいや! 勝手に導かせるな! 俺はただ女の人を助けに……!」
「……オウマ様、謙遜なさらず……」
「うん、オウマ様、オウマ様!」
すでに呼び名は定着しつつあった。横でスランがクスクスと笑いをこらえている。
「“オウマ様”……なんか偉そうで良い響きだねぇ」
「いや、やめろ……変な宗教みたいになるんだよ……」
そんなやり取りの後、旺真はふと思い出した。
「あ、そうだ。もともと今日は、お前たちに一つ相談しに来てたんだ」
「ご相談ですかゴブ?」
「スライム達がいつも活動している場所を、ゴブリンたちが荒らしていることが多いらしくてさ。スライム達が困っているらしんだよ。だから、生活範囲のことで何か話し合えたらなって」
すると、三匹の表情が一気に真剣になる。
「それは一大事ゴブ!」
「オウマ様が困られているゴブ!」
「この件は……長老に相談するべきゴブ!」
「長老……?」
旺真が首を傾げると、ゴブろうがうなずいた。
「我らの部族の知恵袋ゴブ。部族のことも、こういう特例も、全部長老が決めてるゴブ!」
「ちょうど今回の件も、長老に伝えたいと思ってたゴブ。こんなすごい出来事、報告しないと罰が当たるゴブ!」
「うむ、長老ならきっと感動して泣くゴブ!」
「泣くの!?」
スランがちょこんと前に出てきて小さく囁く。
「行ってみようよ、旺真。ゴブリン達と話に……!」
旺真はため息をひとつついて、にやっと笑った。
「じゃあいくか。案内よろしく、ゴブリンたち!」
「「「オウマ様のためならなんでもゴブ!」」」
こうして旺真は、ゴブリンたちの集落へ向かっていく――。
旺真のスキルはまだまだ進化していきます。
これからどんな能力になっていくのか楽しみにしてください!