第13話 新しい能力
森の静寂に、再び聞いたことのある電子音。
ピン、ポンパンポーン――
次いで、どこか感情のない“機械音声”が、旺真の頭の中に直接流れ込んできた。
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《スキル:マルチリンガル》
条件「複数の魔物の好感度が上昇する」を達成しました
新たな効果を習得します
効果:「新機能『MINE』の使用が可能になりました」
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「MINE……?」
突如、旺真の目の前にステータスウィンドウが開く。見慣れた情報が並ぶその画面――だが今日は違う。
いつの間にか、そのウィンドウの右端に小さな矢印が表示されていた。
「……スライド、ってことか?」
試しに指で右にスワイプすると、画面が切り替わる。そこには、どこか現代日本のスマホを彷彿とさせるインターフェース。中央に浮かぶのは、見覚えのある緑色のアイコン。
「……これ、LI……いや、MINEって書いてある」
興味に駆られて、その緑のアイコンをタップすると――画面が切り替わる。
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【MINE(M:魔物と I:いつでも N:念話ができるぜ E:え)】
――フレンドリスト
・スラン(スライム)
・ごぶろう(ゴブリン)
・ごぶすけ(ゴブリン)
・ごぶぞう(ゴブリン)
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驚きに目を見開いたその瞬間、またもや機械音声が告げる。
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《MINEとは:魔物といつでも念話ができまっせ》
《フレンドリストに登録された魔物同士は、言語が自動翻訳されるため、種族の壁を越えて会話が可能になっとります》
《ユーザー(旺真)は、フレンドと“文字”、“画像”、“動画”などの情報を、念じて送り合う事が可能でっす》
《フレンド登録条件:魔物との好感度が一定以上に到達した場合、自動的に追加されるのでがんばっ》
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「なんだこれ……まるで、異世界版のSNS……?」
「てか、お知らせの癖がすごい事になってる!絶対深夜テンションで作ってんだろ!」
「どうしたの?オウマ」
1人でツッこんでいる旺真を心配するスラン
「大丈夫だよ。スラン、……ちょっと凄い機能が追加された。」
「すごいってどんなの?どんなの?」
目をキラキラさせてスランは質問する。
「フレンドになったらいつでも会話出来たり、メッセージや画像を送ることが出来るんだって」
スランは嬉しそうに体をぴょんぴょん跳ねた。
「じゃあ、これからは離れてても話せるの? ボクが何か見つけたとき、伝えられる?」
「そういうことだね。……これ、絶対便利だ。それにゴブリンたちとスライムたちが仲良くなれるかもしれない」
旺真はMINEの画面を閉じ、そっと空を見上げた。
“ハズレスキル”と馬鹿にされた力は、今――
魔物たちと心をつなぐ、唯一無二の能力へと進化していた。
気絶したゴブリンたちを見下ろしながら、旺真は苦笑した。
「……みんな、幸せそうな顔して寝てるな。しばらく起きそうにないな」
その隣で、スランが心配そうにゴブすけの顔をつんつんと触る。
「だいじょうぶかな、ゴブたち……」
「まあ、撫でられただけだし、むしろ昇天してるって感じだな。……それより、さっきの“MINE”ってやつを試してみるよう!」
「マイン?」
旺真は心の中でスランの名前を念じながら、「聞こえるか?」と強く意識する。
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ピン――!
スランの身体がビクッと震える。
「っ! 今、頭のなかで旺真の声が聞こえた! なんで!?」
旺真はニッと笑って、スランに言う。
「やっぱり成功したな。これが“MINE”の力だ。お前に念話を送ったんだよ」
「すごい! テレパシー!? じゃあ、ボクもできるの?」
「たぶん、俺に向けて“話したい”って強く思えば伝わるはず。やってみて」
スランは真剣な顔で集中し、体を小さく震わせながら念じる。
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(おーい、聞こえるー? オウマー?)
旺真の頭の中に、はっきりと元気いっぱいのスランの声が響いた。
「……おお、バッチリ聞こえてる。すげぇなこれ」
「ほんとに話せてる! うれしい! これなら、どこにいても話せるんだね!」
2人の仲がより深まった。
どんどんと旺真と仲良くする魔物が増えていきます。
これからどんな魔物の仲間が増えていくのか楽しみにしていてください!