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第11話:成長

城の裏手に広がる大きな訓練場。石畳の演習地には木の人形や訓練用の標的がずらりと並び、それぞれのスキルに合わせたエリアが区分けされている。

高校生たちは朝早くから訓練場に集められていた。

セレスティアが壇上に立ち、静かに告げた。


「今日より、皆様にはご自身の“スキルの性質”に応じて、戦闘訓練を受けていただきます」


彼女の隣には、二人の熟練者が控えていた。


「こちらは、我が王国が誇った剣の達人――元・王国騎士団団長、レオン・ヴァルグレイ将軍」


「……力を使うなら、人を守るために使え。それが剣士の誇りだ」


銀髪に鋭い瞳、逞しい体躯の男が一歩前に出ると、全員の背筋が自然と伸びた。


「そして、魔導の頂きに立ち続けた賢者――元・精鋭魔導部隊長、マグナス・イゼリア」


「人の力は、“制御”してこそ真価を得る。魔法は感情の爆発ではなく、理の流れだよ」


長い白髪と深い皺の刻まれた老魔術師が、魔導杖を軽く地面につく。白川 澪と山崎 奏が、その圧倒的な魔力に息をのんだ。


「それぞれの力を高めるため、戦闘系の者はレオン将軍、魔法・支援の者はマグナス殿の下で訓練を行います。」


エリセリアが一礼すると、場が引き締まる。


——————————-


「構えは悪くない。だが――遅い!」


レオン団長の木剣が振るわれると、神城 蓮はギリギリで受け止め、足元が大きく滑った。


「くっ……!」


「“スキル:煌剣”の力に頼りすぎだ。お前の剣筋は力に任せている。だが、剣は“心”が通らねば殺しきれん」


「……もう一度お願いします!」


蓮は息を整えながら立ち上がる。その背には迷いはなかった。


学校では学級委員長であり、正義感の強い蓮は人1番訓練に取り組んでいた。


一方、花村 輝義は模擬戦で三人の攻撃を受けながら、巨大な盾を構えていた。


「絶対攻撃を通さない……!」


輝義のスキル:鉄壁の誓約フォートレス・オースは防御力が大幅強化され、守るという意思が強ければ強いほど効果が増す。


訓練兵が様々な攻撃を行ってくる、輝義は術撃も剣撃も盾で受け止めている。



「――よし。いい感じだぞ!」


レオンが満足げにうなずくと、蓮と輝義は互いに視線を交わし、小さく頷いた。


————————————

マグナスが手を組み、三人を見渡す。


「では……スキルを試してみよう」


「……ヒール・レイ……!」


彼女の光が訓練用に傷を負わせられた人形兵に降り注ぐと、瞬時に傷が癒えていく。


「回復速度は申し分ない。だが、“どこに、誰に、どう使うか”……その判断力を鍛えていけ。癒しの力とは、命を繋ぐ覚悟の力だ」


「……はい!」


澪は震えながらも、確かに成長していた。彼女の瞳には強い意志が宿る。


澪は学校では誰にでも優しく、みんなの注目の的である。まだ旺真が城から出て行ってしまったことを悔いている。


(旺真くんの分も強くならないと……)


山崎 奏は横で、魔導笛で旋律を奏でていた。


「風よ、響け。仲間に加護を……《ブレッシング・リズム》!」


旋律が響くと、周囲の魔力が活性化し、澪の魔法の回復速度が上がる。


「うん、息が合ってきた……」


マグナスは微笑みながらうなずく。


「音の魔法は“協調”こそすべて。己の美学だけでなく、仲間の流れを見極めろ」


「了解、先生。調和の音を探ってみるよ」


山崎 奏はよく喋り、友達も多い方だ。たまにうるさいくらい。吹奏楽部に入っていて、サックスやっている。自分のスキルは相性が良く、上達も速いと思っている。


木陰の射撃台にて、水無月 由良が弓を構える。

由良の狙いは、動く的。

しかし、彼の視界にその的はない。


由良のスキル: 千射千中は照準を合わせた対象に必中の矢を放つ。隠れた敵にも感知攻撃が可能。ただし、発動には精神集中が必要。


「……千射千中――」


ズパッ!


音すら立てずに放たれた矢が、完璧な軌道で標的を貫いた。


「集中力は文句なし。ただし、妨害に耐える精神力を今後は鍛えていく必要があるな」


由良は無言でうなずき、矢を次の一本へと変える。


——————————————


雑木林の奥、薄暗い空気の中で、獣道を踏み鳴らす足音と、甲高い喧噪が響いていた。


「……なぁ、ゴブろう、そろそろ行こうゴブ」

ゴブぞうが焦った声で言った。


「これ以上遅れたら、また長老に怒られるゴブ!

“お前達はいつもトロい”ってこの前も怒られたゴブよ」


「うるさいゴブ、そんなの知るかゴブ!」

ゴブろうがキッと睨み返す。


「オレは頑張ったゴブ! ずっと森で待ってて、危ない目にあって、やっと連れてきたゴブ……。

だからちょっとくらい……ちょっとだけでいいから……頭、撫でてほしいゴブ……」


「だけど……泣いてるゴブよ……お前が声荒げるから、よけい怖がってるゴブ……」

ゴブすけが困ったように宥めるが、ゴブろうはただ項垂れていた。


「オレたちゴブリンは……ただ、一回でいいから……人間の女性に優しく触れられてみたいゴブ……

頭をなでて、欲しいだけゴブ……

……それだけなのに……なんでいつも、怖がられるゴブ……」


その声はかすれて、震えていた。


泣き崩れる女性を前にして、ゴブろうは怒ってなどいなかった。

ただ――夢を叶えられない現実に、泣いていた。


「なぁ……このまま連れて帰って、また“恐怖”だけを与えて、

……それで……結局怒って食べてしまうを繰り返すのか……?」


重い沈黙が流れる。


そのときだった。


「――それなら、俺がその夢を叶えてあげようか?」


森の茂みから、静かな声が届いた。


「……!」


ゴブリンたちは一斉に振り返る。

そこには進藤旺真と、スランの姿があった。


「え、人間の男……? なんだ貴様ら……!?」


驚きと警戒の色を滲ませるゴブリンたちに、旺真はゆっくり手を上げて、敵意がないことを示す。


「聞いてたんだ。君たちの話……」


旺真の表情は、真剣だった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


城の方と旺真の進捗の両方を進めるのは少し苦手なので、読みにくい点があると思いますがよろしくお願いします!

これから旺真がゴブリンとどう関わっていくのか楽しみにしてください!

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