表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/18

第7話 正体、バラしてないよね?

 今日の日本史の授業は歴史系の番組を見るため、視聴覚室に移動だそうだ。


「二宮、行こうぜ」

「ああ」


 俺と七山は勉強道具一式を持って、視聴覚室に向かう。


 ……その背後には、一ノ瀬さんがべったりとついてきている。


「なあ、二宮。後ろ」

「……知ってる」

「なぁ、本当にどういう関係なんだ? やっぱり、昨日告白したんだろ?」

「違うから!」


 まあ、告白ではないにせよ、それと同等レベルのビッグイベントがあったのは確かなんだが。


「ところでさ、さてぃふぉの正体お前は――」


 七山の口からさてぃふぉの話題が出たその時、朝と同じように腕がグイっと引っ張られ、後ろに連れ去られた。

 一ノ瀬さんは「ふー」と息を吐きながら、腕で額の汗を拭く。


 俺と一ノ瀬さんは七山に聞かれないように十分に距離を取りつつ、こそこそ会話をする。


「せーふ」

「言わないって」

「今、危なかった。戦略的撤退」

「待って。俺は今日からこんな生活を続けないといけないのかい?」

「身バレダメゼッタイ」

「そんなポスターの標語みたいに」

「私たちはまだ知り合って間もない。まだ二宮君の信頼度は高くないから。私が信頼できるようになるまで続ける」

「まあ、しゃーないか。俺は良いけど、七山が困惑しているからなあ」

「そこはごめん。でも我慢してほしい。私と二宮君との秘密だから」

「うん。分かった。とにかく俺は言わないから。信じてもらえるように頑張るよ」


「おーい、二宮ぁ。俺を置いてくなよ」

「悪い悪い」

「頼む、教えてくれ。お前と一ノ瀬さんの関係。せめて付き合っているか付き合っていないかだけ!」

「だから付き合ってないって。あと、さてぃふぉのことは今度からノーコメントだから」

「ちょ、それどういう!」


 俺はできるだけさてぃふぉの話題を七山としないように心がける。正体をバラすことは神に誓ってないが、それでも彼女を心配させないようにするためだ。


「はぁ、喉乾いたな~」


 昼休み。

 喉が渇いたので一人で、中庭にある自動販売機に向かう。

 すると、背後から妙な視線を感じる。

 後ろを振り返ると、なぜかそこに一ノ瀬さんが居た。


「うおわあ! 居たのか! どうしたんだ?」

「目を離すと怖い」

「俺はやんちゃな子どもか!」

「大丈夫だよね? 正体バラしていないよね?」

「俺、今一人だよね⁉ 誰にバラしそうだったんだよ⁉」

「……うーん、鳥とか」

「それなら良くない⁉」


 これ、一人の時間も監視されるの?

 推しに認知されるのは嬉しいけど、推しに監視されるのは厳しいよ!


「あと、ふつーに私も買いに来たから」


 そう言うと、一ノ瀬さんは本当に見ているのか? と疑いたくなるほどの目まぐるしいスピードで自動販売機のボタンを押す。

 すると、ごとん、と毎度おなじみのよっちゃんオレンジが出てきた。


「それならそうと、先に言ってくれ」


 良かった。そっちがメインの目的か。


「ふー、トイレスッキリした~」


 授業の合間の小休憩。


 授業中ずっと我慢していたトイレにありつけて、スッキリする。

 手を洗っていると、俺は心臓が飛び出そうになった。

 なんと、鑑越しに一ノ瀬さんの姿があった。もうこれホラーでしょ! 


「ちょちょちょ、本当に何しているの?」

「正体、バラしてないよね?」

「トイレでバラすかあああ! つーか、その前に色々と失っているものあるの気づこ? 普通に男子トイレだから、ここ!」


 やはり登録者十万人を達成するような人は、どこか頭のネジがぶっ飛んでいるのだろうか?


「そういえばそっか。二宮君は男で私は女か」


 そんな当たり前のことを今さら言われても困るんだけど。


 不幸中の幸いか。俺たち以外に人は居ない。ここで出くわしたら色々と終わりそうなので、一ノ瀬さんを早急に追い出す。

 が、トイレのドアを開いた瞬間、七山とばったり出くわしてしまった。


「あっ」

「はっ?」


「……じゃあ、そういうことで」

「二宮、ちょっと来ようか」


 俺は七山に警察にしょっ引かされる罪人の如く連行された。


「これは流石におかしいよな、二宮」

「本当に俺も分からないんだって。いつの間にか一ノ瀬さんがそこに居たんだって」

「そんな見え透いた嘘がまかり通るなら警察はいらねえんだよ!」

「そう言われましても、本当なんだもん」

「もういい! 単刀直入に聞く! シたんだろ! 個室で!」

「するかぼけぇ! つーか、小休憩でできるわけないだろ!」

「それもそうだが……」


 押し問答をしていると、俺らの間を、一般通行人Aみたいに何気なく一ノ瀬さんが通って一言だけ。


「私が間違って入った。それだけ」


 この一言が決め手となり、言い争いは終結した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ