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第55話(最終話) 私の裏方になってください

 俺と御世ちゃんが出会ってから、五年という長い月日が流れた。


 二十二歳になった。もう立派な大人である。

 俺と御世ちゃんはというと、高校を卒業後、大学に進学せず、就職もせず、専業の動画配信者として活動を始めた。


 そして、俺と御世ちゃんは現在、とあるオフィスの一室に招かれていた。


「取材を受けていただきありがとうございます。ウェブメディアナタリーの十塚と申します。まず、この度は『チャンネル登録者数100万人』達成おめでとうございます」

「……あ、ありがとうございます……。さてぃふぉ……です」

「この度は取材の依頼ありがとうございます。さてぃふぉのマネージャーを務めさせていただいている二宮吾郎と申します。ここからはさてぃふぉの代わりに、私が質問に答えさせていただきます」

「分かりました。では、お伺いいたしますが、最近飛ぶ鳥を落とす勢いで再生数、登録者数を増やしている『さてぃふぉちゃんねる』ですが、その要因は何だと考えていますか?」

「はい。五年前、顔出しスタイルに変えてから、方針をガラリと変更しまして、今まで断っていたコラボ動画や案件動画を積極的に受けていくことで、より多くの視聴者に認知された結果だと思っております。

 また、生配信を行い、SNSを積極的に動かしと、ファンとの距離感を縮め、より愛されることが出来たことも要因だと考えます。

 あとは最近、サブチャンネルを開設して、そこでゲーム実況動画以外の日常系の動画などをアップしております。ファンからは『さてぃふぉの普段とは違う一面が見られる』と好評を頂き、それも伸びている要因と考えておりす」

「なるほどですね。ちなみにこういう大規模なチャンネルさんは基本的にチームを組んで活動していると思うのですが、『さてぃふぉちゃんねる』はさてぃふぉさんと二宮吾郎さんの二人三脚で?」

「そうですね」

「ちなみに、二宮さんはどのような業務を?」

「主に撮った動画の編集・管理を行っています。企画立案も基本的に私が。さてぃふぉのマネジメントも。あとは、今日のような依頼の対応、打ち合わせ等も自分の業務ですね。あとはボディーガードとか」

「ボディーガード……ですか?」

「ええ。さてぃふぉは見ての通り女性ですし、顔出しすることでストーカー被害等、色々とトラブルに巻き込まれる可能性があるので、それを防いでいます」

「へー。そうなんですね。最後に今後の目標を教えてください」

「ひとまず、チャンネル登録者数100万人という大目標を達成したので、まだあんまり定まっていませんが、今後とも『視聴者の皆さんに楽しんでもらえるような動画を作る』をモットーに、動画づくりに取り組みたいと思っています」

「本日は取材ありがとうございました」


 インタビューが終わると、俺と御世ちゃんは部屋を退室して、オフィスを出る。


 そして駅ビルの少し高級なイタリアンの店で一休み。


「ひやあー、疲れちゃー」

「お疲れ、御世ちゃん」

「と言っても、私は何にもしていないけどね」

「こういう対応は全部俺がやるって決めていたけど、本当にしゃべらないんだね」

「うるさーい。いつまで経っても社会不適合者で悪かったですねー」

「そういうところも御世ちゃんらしくて良いけどね。もう、かれこれ一緒に居て、五年なんだから」

「しっかし、こういうインタビュー? 的なやつ、初めてだったから緊張しちゃったな~」

「まさか、こんな取材を受けるとは思ってもみなかった。やっぱり100万人達成すると違うなー」

「改めて、登録者100万人おめでとー!」

「いや、これはこっちのセリフだよ。本当におめでとう、御世ちゃん。それにここ最近の御世ちゃんの頑張りは、はたから見ても凄まじいものがあったよ。まさか、こんなに順調にいくとは思っていなかったから」

「いやいや、吾郎君の方こそ裏方として滅茶苦茶頑張ってくれたから。というか、一人でやらせすぎたよね、私」

「ちょっと大変なこともあるけど、御世ちゃんのためなら全然辛くないし、むしろ一緒に仕事できて楽しいよ」

「そう言ってくれるのはありがたいけど、そろそろ他のスタッフ雇う? やらしい話、それくらいの収益はあがっているから」

「いや、御世ちゃんと二人がいい。ごめん、ワガママで」

「ううん。私もそう思っていたから、嬉しいよ」

「あのー、それとさ、大事な話があるんだけど良いかな?」

「なに、急にかしこまっちゃって」

「俺は永遠にきみのパートナーで居続けたいと思っている。さてぃふぉのパートナーとして、そして一ノ瀬御世ちゃんのパートナーとして」

「うん。私も」


 俺は鞄に大事に忍ばせておいた“婚約指輪”を取り出した。


「一ノ瀬御世さん。俺と結婚してください」


「えっ?」


 御世ちゃんは心底驚いたようで、目をキョトンとさせている。


「勿論、時期尚早なのは分かっている。でも、ずっと考えていたんだけど、俺は御世ちゃん以外考えられないんだ。100万人いったら、プロポーズするって決めていて……。

 御世ちゃんは俺にとって正真正銘の“人生のパートナー”だから」


 精一杯の頭を下げ人生一度切りの懇願をする俺に、御世ちゃんは最高の笑顔で答えてくれた。


「もう一度、私の口から言うね。二宮吾郎君、“私の裏方になってください”」

 ここまで、拙著『推しの人気配信者が、クラスの隣の席にいる陰キャ女子だった件 ~誰も知らない有名配信者の正体をなぜか俺だけが知っている~』をご愛読いただきありがとうございました。

 これにて完結です。本作は『推しとしての好き』と『異性としての好き』をテーマに書きました。皆さまの心に少しでも残れば幸いでございます。

 本作は終了しますが、主人公の吾郎やヒロインの御世は、別作品のモブとしてどこかに登場するかもしれません。別作品も投稿中&投稿予定なのでそちらもどうかよろしくお願いいたします。

 最後に、もしよろしければ、応援ボタン、☆マーク等押していただければ幸いでもございます。励みになります。

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