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第40話 吾郎君の方がよっぽどヘンタイじゃん!

 相変わらずの豪奢な門構えに設置してあるインターホンを鳴らす。

 着替え等、リュックに詰め込んで、俺は再び御世ちゃん宅に訪れる。

 最新型のインターホンのモニターに映し出されたのは、クリーム色のショートボブに、丸眼鏡をかけた、学校で見せるいつのもの姿の御世ちゃん。やっぱりこの姿が起源にして頂点!


「お邪魔しま~す」


 朝この家に居たのに、お邪魔します、というのもおかしな話だが、再び御世ちゃんの家に入る。

 すると、とてとてと可愛らしい足音を立てて、御世ちゃんが出迎えに来てくれた。


「待ってたよ~。っていうか凄い荷物⁉」


 家に帰った俺はリュックにこれでもか、というほど詰め込んだ。

 着替えに、折り畳み傘に、モバイルバッテリーに、充電器に、洗面用具に……。

 もはや、これから長期間の旅行にでも行くのか、というくらいの荷物量になってしまった。


「楽しくなってつい」

「ここに住む気満々じゃん」

「いやっ……その……すみません、調子乗りました」

「良いって、良いって。吾郎君は私の専属パートナーなんだから」

「専属っ⁉」


 その響き、なんだかすごくいいな。

 そうだ。俺は今日から公私で、御世ちゃんに捧げるんだ。


「捧げます……」

「えっ、何、急にこわっ」

「やばっ。なんか心の声がいつの間にか漏れてた」

「うん、でも不思議と悪い気はしないね。ありがとっ」


 御世ちゃんは昨日同様、俺の頬に唇をつける。柔らかい感触が伝わり、幸福度が爆発的に上昇する。

 心が熱を帯び、半ば衝動的に御世ちゃんを抱きしめる。

 付き合ったばっかり。文字通りアツアツである。

 この温度が永遠に保てるといいな。

 いつも、いちゃつくカップルを冷ややかな目で見ていたが、いざ当事者側になると、そういう人たちの気持ちが分かる。うん、そうだよね、身体を触れ合うことで愛を確かめたいよね。


「ねえ、お腹すかない?」

「そういえば……」


 スマホの時計を確認すると、既に午後一時を回っていた。

 起きたのは、正午とはいえ、この時間まで何も食べていないと、流石にお腹がすくわけで……。


「冷蔵庫に食材も無いし……吾郎君、良かったら一緒にスーパーに買い出しに行かない?」

「うん、もちろん!」

「じゃあ、着替えるから待っていてね!」


 暫く待っていると、私服姿の御世ちゃんが登場した。


 そういえば、俺が見たことある彼女の格好は制服かパジャマ姿しかない。だから初めて私服姿を見る。

 彼女の格好はデニムジャケットに、白のプリーツスカートという春らしい涼やかなコーデだ。


「どうどう?」


 御世ちゃんはくるくると回って、俺にアピールしてくれる。その仕草を見て、ドギマギする。


「似合っているよ」

「ありがとっ!」


 御世ちゃんは朝顔のようなとびっきりの笑顔を見せてくれた。


 ☆


 スーパーに向かうために、俺と御世ちゃんは横並びで外を歩いている。

 そういえば二人で一緒にどこかに出かけるのって、これが初めてだよな。スーパーに買い出しに行くとはとはいえ、これって……。


「なんか、デートみたいじゃない?」


 俺が思っていることを、先に御世ちゃんが言ってくれた。俺と御世ちゃんは一心同体みたいだ。


「だよね。俺も同じこと思ってた」

「えっ、吾郎君も?」

「うん。でも明日が正式なデートだよね。今日は何だろう?」

「デートの予行演習?」

「デートの前乗りとか?」

「それは絶対違う」

「急に突き放すのやめてくれない⁉」


 こんな何気ない会話でさえも幸せだ。

 突然の出来事であったが、御世ちゃんと付き合えて本当に良かった。

 しばし無言で歩いていると、御世ちゃんはもじもじとしながら尋ねた。


「……ねえ、手、繋がない?」

「えっ……」

「一応デートってことになっているみたいだから、どうかなって。嫌なら大丈夫だよ」

「嫌なわけないよ。でも、今の俺の手、汗まみれだし、今繋いだら不快な思いをさせてしまうかも」

「そんなことないって。むしろ吾郎君の汗に触れたい」

「うわぁ、ヘンタイだ」


 バシッと背中を叩かれた。

 どうやら、わりと間違ったツッコミをしてしまったらしいので反省。

 こうやっていい意味で忌憚なく、接することが出来るのもいいよなあ。


 そんなことをしみじみ思っていると、俺の手に御世ちゃんの手が僅かに触れ合う。

 それを皮切りに、御世ちゃんの手は何度も俺の手に触れる。

 それは間違いなく「手を繋ぎたい」というサインだ。流石に、今まで付き合った経験が無い俺でもそれくらいは分かる。

 俺は男らしく、ちょんと触れた御世ちゃんの手をガッと力強く握る。

 昨日も手を握ったが、その時と比べると少し感触が違った。昨日よりも湿り気があり、気持ち悪い言い方をすれば『御世ちゃん濃度が強い』。

 どうやら、御世ちゃんも俺と同様、緊張しているらしく、手から汗が噴き出している。

 御世ちゃんの汗のエキスが、俺の手を通して注入される。それになぜか興奮を覚える俺。

 ……俺の方がよっぽどヘンタイじゃないか!


「手……繋いでくれたね」

「御世ちゃんと手を繋げて嬉しいよ」

「ごめんね。私の手も汗だくみたい」

「ごめんね。その汗に興奮を覚えて」

「くふっ。吾郎君の方がよっぽどヘンタイじゃん!」

「その通りです」

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