記録004:敗北の刻
神々の街を脱出しようとしたレオンとさとるは、光神の街の高い壁を越えて、静かな夜の空気に包まれていた。しかし、逃げる先には何もない──ただ、広がるのは無数の白い道、そして無限に続く神々の領域。
「ここは……いったいどこだ?なかなか出れない」
さとるは息を呑んで周囲を見渡す。何度も目を閉じ、開いてみたが、道は変わらなかった。どこまでも続く、白と光に包まれた世界。
「俺たち、どこにいるんだ?」
レオンもまた目を凝らしながら言った。
「逃げるしかない、まだ間に合うはずだ!」
さとるが先に走り出し、レオンも続く。だが、次の瞬間──突然、空気が重くなり、見えない壁にぶつかったように二人の動きが止まる。
「──捕まった……のか」
さとるは冷静に呟いた。
「ここから出るには、ただの力じゃ無理だろう。」
レオンが額に汗を浮かべながら後ろを振り返ると、街の住人──“光の民”たちが、薄い微笑みを浮かべて静かに近づいてくる。彼らの目にはもう、最初の優しさは見当たらない。
「逃がしはしないぞ、旅人たち。」
声をかけてきたのは、神々の使者のような姿をした者たちだった。その一人の口元から、光が蠢き、姿が変わり始める。
「お前ら、まさか──!」
レオンが後ろを振り返る。だが、もう手遅れだった。使者の顔は、今や邪鬼のように歪んでいた。
「さとる!」
レオンが叫ぶ間もなく、使者たちは一斉に光の矢を放ち、二人を包囲する。
「くそっ!」
レオンは瞬時に体を反転させ、空間を歪ませて光の矢をかわしつつ、目の前の邪神に一撃を放つ。だが、敵の神々の使者はそれを軽々と避け、再び彼の体に光の束を送り込んだ。
「この世界では、物理的な力では無意味だ!」
使者の言葉が重く響く。レオンは足元を見失いながらも、なんとか反撃の隙を狙って攻撃を続ける。しかし、次第に疲れが見え始める。
「さとる、まずいぞ!」
レオンの声を聞き、さとるは一瞬立ち止まるが──その時、目の前の邪神がまばゆい光を放つ。
「お前も……か!」
さとるは怒りをこめて力を振り絞り、周囲の空間を揺るがすような一撃を放つ。しかし、それもまた、光の使者には効かず──。
「やはり、物理的な力ではどうにもならぬ。」
その言葉とともに、二人は地面に押しつぶされるように投獄される。身体が動かない。意識は徐々に薄れていく。
そのまま、二人は“神々の監獄”に閉じ込められるのだった。