記録002:幼き日の思い出
神界に到達し、最初に飛んだとき、まるで風そのものが自分を包み込んでくれるような感覚だった。浮遊する島々がまるで手を伸ばせば届きそうな距離にあり、自分とさとるは軽々とその空間を駆け抜けていった。
だが、光神の島に近づくにつれ、その美しさに圧倒されていった。目の前に現れた光の住人たちは、自分たちを一斉に見つめていた。その視線がどこか冷たく、無機質に感じたのは気のせいではないだろう。
そして、突然──それはレオンにしか分からなかった。
目の前が歪み、光がぼやける。そして次の瞬間、どこか懐かしいような風景が広がっていた。まるで夢の中にいるような感覚だった。空気が重く、どこか痛いほど静まり返っている。
──あの時のことが、蘇った。
自分は幼い頃、孤児院で育った。周りは常に冷たい目で自分を見て、寂しさに耐えながら過ごしていた。ある日、自分は彼女と出会った。
彼女は自分と同じ年頃の子供だった。だが、彼女には悲しみが溢れていて、他の子供たちと同じように笑顔を見せることができなかった。彼女は酷い虐待を受けていた。孤児院でも、いつも一人で過ごしていた。
自分はただ、そんな彼女を放っておけなかった。
少しずつ、自分は彼女に話しかけるようになり、友達になろうと努めた。その時、彼女の目に見えた微かな光が、自分は忘れられない。
彼女は、最初は自分を信じてくれなかった。それでも、自分が何度も手を差し伸べ、何度も声をかけるうちに、少しずつ心を開いてくれた。そして、やがて彼女は自分の唯一の友達となった。
しかし、自分は彼女を守ることができなかった。
ある日、彼女は自分の前から消えてしまった。身体はあまりにも弱っていて、あの酷い環境に耐えきれなかったのだ。自分が気づいたときには、すでに遅かった。
彼女が最後まで持っていたもの、それは自分があげた小さなネックレスだった。自分が渡したネックレスを、必死に握りしめていた。
その光景が今でも目に焼き付いている。彼女が最後に微笑んだ顔、その横顔を忘れることはできなかった。
その時の後悔と、無力感。──自分の力の無さに、自分はただ呆然と立ち尽くしていた。
その瞬間、突然目の前の光景が引き戻された。現実に戻った自分は、さとるの顔と、あの時、ネックレスをあげた時の優しい彼女の顔が重なって見た。
「さとる、あいつを守れる男になりたいんだよ」
自分はそう言っていた。
「ありがとう……」
かすかに聞こえた気がする。あの子の声が。
あの子を、守りたかった。あの時の自分を、どうにかしてあげたかった。だから、今度は絶対に──守れる男になりたかった。
そして、さとると一緒に光神を倒すため、進んでいこうと決意した。
──こんな思いはもう、二度と味わいたくない。