トランプ大統領の勝因
①インフレ
やはり物価高は大きかったと思います。日本の比ではないレベルでインフレが進み、特に家賃が高騰して賃金上昇に全く追いついていない状況は有権者達にとって無視できない環境だったのでしょう。ボーイングのストも生活の苦しさから始まりました。
米で家賃高騰が続く 生活困難者が過去最多の水準に テレ朝 2024/02/08 09:37
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000336139.html
苦境のボーイング、ストライキ継続の裏には NHK 2024年10月25日 20時18分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241025/k10014618781000.html
②不法移民問題
こちらも、まともな米国人ときちんと手続きを得て入国して市民権を得た合法移民からしたら、自分たちの職を奪う危険性のある不法移民にいい顔を出来るはずがありません。
ましてや、まともな米国人有権者が職を失って路上暮らしをしている時に、不法移民がホテル暮らしをしているあげく傍若無人に振舞っていたら猶更不満が溜まるのは当然と言えます。
宿泊1泊5万円…NY移送の〝不法移民〟への不満募る 産経新聞 2023/2/2 17:26
https://www.sankei.com/article/20230202-A5NHSYXEX5MHNNYH7E6WD4LPTQ/
下記の動画は実際にベネズエラを訪れ、現地の人に話を直接聞いている人の体験記になります。
この動画の2分50秒当たりの言葉は衝撃的です。最貧国ベネズエラでもさらに貧困層に当たる人や、犯罪者がアメリカに移民したから少し治安が改善したと言うのです。
このような人々はまともな教育を受けていない可能性が大です。単に教育を受けていないだけならまだ良いのですが、言い方は悪いですがまともな倫理観を持っていない可能性があります。このような人々が大量に流入してきては、そりゃ移民を見る目が厳しくなるのは当然と言えるでしょう。
南米ベネズエラで最も危険なスラム街が想像を絶する世界だった Bappa Shotaチャンネル 2024/07/13投稿
https://www.youtube.com/watch?v=01-BObFcXoI
③中絶やLGBTQ、民主主義といった理念が有権者に響かなかった。
女性の権利や、性的少数者の権利拡大はここ数年で急速に進みました。個人的には中絶の権利は個々にあると考えていますがそれよりも急速に進んだのがLGBTQへの権利拡大です。しかし、ここ最近は行き過ぎた権利拡大の負の側面も目立ってきました。特に、女性を自認すれば女性という事で肉体的には男性の人物が女性枠で出場し、女性選手が涙を呑む事態も起こってきています。それゆえに、反発の声も広がっていました。
トランスジェンダーが女子格闘家の試合に出場 当然の結果に・・・ 2021/12/01
https://www.youtube.com/watch?v=XUcFwIsKJmM
世界陸連・トランスジェンダーの選手 “思春期男性”で女子競技の参加禁止|TBS NEWS DIG 2023/03/25
https://www.youtube.com/watch?v=3vIBlFRfPik
ボクシング女子“性別騒動” 相手選手が開始わずか46秒で棄権(2024年8月5日)
https://www.youtube.com/watch?v=bOpEe-hw1gQ
パリ五輪で“性別騒動”アルジェリアのボクサー、生物学的な男と判明
中央日報 20224/11/5
https://news.yahoo.co.jp/articles/2dd11502fddcd9ab6b1f0912ddd9e0982ca67bb2
トランスジェンダーになりたい少女たち SNS・学校・医療が煽る流行の悲劇(書籍)
2024/4/3発売
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%9F%E3%81%84%E5%B0%91%E5%A5%B3%E3%81%9F%E3%81%A1-SNS%E3%83%BB%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E3%83%BB%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%81%8C%E7%85%BD%E3%82%8B%E6%B5%81%E8%A1%8C%E3%81%AE%E6%82%B2%E5%8A%87-%E3%82%A2%E3%83%93%E3%82%B2%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%BC/dp/4819114344
こうした事例が、多くのアメリカ国民にポリコレはもうたくさんだと思わせたのかもしれません。
最後に、ハリス氏が最も強く訴えていた一つに、「トランプ氏は民主主義の破壊者だ」というものがありました。彼は独裁者になりうるとも。
確かに、私もトランプ氏にその傾向があると思います。プーチンやハンガリーのオルバン大統領と仲が良いのも、性格が比較的同じだからでしょう。
しかし、トランプ氏の支持者達にとっては民主党とハリス氏こそが民主主義の破壊者だと言う捉え方でした。アメリカがアメリカでなくなってしまう。アメリカを守るのは自分達だとも考えていたとも思います。
さらに、無党派層にとっては彼が独裁者かどうかはあまり問題ではありませんでした。①で取り上げたように、インフレを何とかしてほしい。生活が苦しい。それをどうにかしてくれる人はトランプ氏だと考えたのでしょう。
少し前になりますが、日本でも「おにぎり食べたーい」というメモ書きを残して餓死した人物がおり、問題になりました。
北九州市生活保護受給者死亡事件(門司餓死事件)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%80%E5%8F%B8%E9%A4%93%E6%AD%BB%E4%BA%8B%E4%BB%B6
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/28537.html
想像してみてください。貴方が飢死にしそうな時に候補者が来て「民主主義の危機です! 私に投票して下さい!」そう言われて、心に響きますか?
それよりも「お前を食わせてやる。減税して生活を今よりも楽にさせてやるよ。」そう言ってくれる候補に心が動くと思いませんか? その時、目の前の人物が独裁者かどうかなんて大きな問題にならないはずです。
歴史を振り返れば、ヒトラーは第一次世界大戦でボロボロになり、ドイツ国民が悲惨な状況に置かれていることを利用して政権を奪取しました。アウトバーンの建設など雇用を重視して人々に職とパンを与えたからです。
架空の小説で申し訳ありませんが、銀河英雄伝説における同盟の帝国領侵攻作戦の時、解放した帝国領の臣民はラインハルトが焦土作戦を実施したため米粒一つ残っていない状況でした。それ故に、人々は同盟軍人にこう言いました。「政治的自由よりもまずは生きる権利をくれ。食べ物が無いんだ。」と。
人々にとっては自分たちの政治的自由よりもまずは今日食べるパンを欲したのです。そしてそれは当然の反応です。衣食住足りて礼節を知る。まず衣食住が無いのに政治的自由なんて、人々の心に響かないのです。
民主党は民主主義を守ると言う理念を掲げましたが、その理念は今日と明日のパンという切実な現実に負けたのです。
④エリート層&富裕層と労働者層の意識の乖離。
これはもう長々と説明する必要もないでしょう。今回ハリス氏を応援した層は大学生及び大卒の比較的高学歴の人達でした。富裕層やマスコミ、テイラースウィフト氏を始めとした芸能人も多くは民主党支持でした。その人たちは上記のLGBTQや気候変動に敏感で、それらの政策を推し進めてくれるであろうハリス氏を応援しました。これは2020年のバイデン政権。及び2016年のヒラリー・クリントンの時と一緒です。
上記の問題は確かに大事だと思いますが、やはり目の前の生活には勝てませんでした。それだけ労働者層の貧困化が激しい、格差が広がっている証拠だったのでしょう。
今日と明日のパンが食べられるかどうかわからない人に、10年後を想像しろと言っても無理です。10年後に自分が生きている確証がないからです。その人たちに向けて気候変動がーと訴えてもおそらく心に響くことはなかったでしょう。
そして、そんな労働者層を低学歴と言って見下したのも2016年と同じ構図だったのだと思います。
⑤ハリス氏の弱さ
バイデン氏から急遽変わったというハンデはあったと思います。しかし、こう言っては身も蓋もないですがハリス氏は元々評判の良い人ではありませんでした。
「将来の大統領候補」ハリスの人気が凋落した理由 ニューズウィーク 2022/1/19
https://www.newsweekjapan.jp/sam/2022/01/post-79_2.php
記事の中で
「ハリスが部下をいじめる「意地悪な上司」だという噂もある。この噂を裏付けるように見える材料は、大統領選や副大統領就任後にスタッフが続々と離職していることだけではない。上院議員時代の19年、ハリスの事務所スタッフの離職率は、アメリカの上院議員100人の中で最も高かった。」
と事務所スタッフの離職率の高さを指摘しています。元々人格的に特別優れた人物ではなかったようです。黒人女性という本来ならかなりのアドバンテージがあったはずなのに、今回の選挙では黒人有権者層も女性有権者層も固めきれませんでした。それがトランプ氏の激戦州7州全州奪取に繋がったのではないかと思います。
一時はアイオワ州でリードとも言われていましたが、ふたを開ければトランプ氏が22万票差で勝利しました。まあこれはマスコミのリサーチが不確かだったとも言えますが。
「アイオワをなめるなよ」、驚きのハリス氏リードに奮い立つ民主党 Bloomberg
2024年11月5日
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-04/SMFPDMT0AFB400
さらに、バイデン氏から交代した後のしばらくはトランプ氏を全米の支持率でリードしていたにも関わらず選挙直前で急落してしまいました。
ハリス氏、「敵陣」のインタビューに苦戦 質問はぐらかす場面多く 毎日新聞
2024/10/17
https://mainichi.jp/articles/20241017/k00/00m/030/104000c
敵対的なマスコミに乗り込んでインタビューを受けたのは良かったと思いますが、そこでのやり取りがちぐはぐだったことが選挙直前で有権者たちに「ハリスの頭は空っぽだ」と思わせてしまったのではないでしょうか?
あまりに支離滅裂なので、マスコミが援護したケースすらあります。
ハリス氏の“意味不明発言”をCBSが“差し替え” インタビューに応じるも逆効果に?「まさにフェイクニュース!」トランプ氏猛反発 FNNプライムオンライン 2024/10/15
https://news.yahoo.co.jp/articles/3b4605b3a59f1e4e0585af4699d8603b0dfa677e
記事内の一部引用
言葉のサラダ(word salad)とは「文法的には正しくても意味が支離滅裂な文章」のことを言う。直裁に言えば「言語明晰意味不明」ということで、かねてハリス副大統領はこの「言葉のサラダ」の使い手として知られていた。
これでは、人々に自らの理想や主張を受け入れてもらえるわけがありません。
対して、トランプ氏は単純明快「Make America Great Again!」通称MAGA。かつて輝いていたアメリカを取り戻し、再び偉大な国に!です。誰にでもわかるスローガンです。日本でいえばかつての高度経済成長期のような輝きを取り戻す!です。年配の人ならあの時の良さを知っている分余計に響いたでしょう。今振り返ると、民主党にはこうした一貫したスローガンがなかったように思います。
何をしたいのかわからない。有権者にやりたい事を伝えられない。実際、バイデン大統領の副大統領時代にあなたは何をしていたのかと言う問いに彼女は答える事が出来ませんでした。目立った実績がなかったからです。
それゆえに、トランプ氏は嫌だと言う層に頼るしかなかったのです。そしてそうした人たちは民主党が思っていたよりも遥かに少なかったのです。
私も共和党内にもトランプ嫌いが一定数いるので、もう少し拮抗するかと思っていましたが、全然違いました。
結論
今回のトランプ氏の勝利を個人的に総括させて頂くと、トランプ氏が強かったというよりも、民主党が自爆したというのが正しいのではないかと思います。
①のインフレに対応できず、労働者層の生活が苦しくなっていることに気が付かず
②の不法移民に対する目が厳しくなっている事に気が付かず
③のポリコレに人々は予想以上にうんざりさせられている事に気が付かず
④それを重視して自分たちの生活に見向きもしない労働者層によるエリート層と富裕層への怒りに繋がっている事に気が付かず
⑤ハリス氏の弱点に民主党は気が付かなかった。
なんの事はありません。民主党は2016年とほぼ同じ失敗を繰り返したのです。そして、2016年よりもさらに深い傷を負ったのです。
今回、トランプ氏は完全勝利に近づいています。
全米の総得票数でハリス氏を上回りました。過去2回は全米規模では負けていたのにです。上院も共和党が多数派を奪還し、まだ確定はしていませんが下院も共和党の伸長が伝えられています。
総得票数、上院、下院。全てで共和党が優勢とくれば、これはもうトランプ氏個人の問題ではありません。民主党というリベラル層が国民からそっぽを向かれたと考えざるをえません。
繰り返しになってしまいますが、民主党は2016年と同じ過ちを犯し、理念を振りかざして生活苦の労働者層の切実な願いから目を背け続けたのが敗因だと私は分析します。
さて、長々とここまでお読みいただきありがとうございます。最後に、これを書いている途中でとても良い動画を見つけたのでご紹介したいと思います。正直、この僅か1分50秒の動画に、上記で書いたこと以上のものが詰まっています。
英国のBBC
【米大統領選2024】勝因と敗因は何だったのか……米有権者に聞く
https://www.youtube.com/watch?v=krJr_WQ033E
一人の男性
「結局のところ、いつもの支払いや日々の食料品を買うのに十分なお金があるかが重要だったんだと思います。そういうシンプルな話です。」
一人の女性
「私達のような平均的なアメリカ人は置き去りにされたと感じたんです。ビヨンセが集会で歌ったりするそういう華やかさは私にとって大事じゃありません。私にとって大事なのはどうすればいつか家が買えるだろうとかいつか子供が作れるほど余裕が出来るかなどです。」
一人の男性
「ハリスのメッセージには内容が何もなかった。」