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もしかして?

 卵をたっぷり使う料理。

 まず思いついたのはオムライスだけど、こう……凄くぶっちゃけると、


「卵焼きだろ? 卵焼きだね。卵焼きか」


 とか言われかねないじゃん?

 だったら何だろうって考えた結果……。

 まぁ、カルボナーラかなって。

 生クリームとか使わないタイプのカルボナーラ。

 あれなら卵結構使うし。

 というわけで早速調理に入りましょ。


「昇」

「なんでしょう?」

「プリン作ってや」

「……分かりました」


 えー、料理変更です。

 カルボナーラからプリンに変えます。


「あ、それとは別に、やで?」


 変更しないみたいです。

 追加だそうです。

 なんで手間を増やすかなぁ……。


「ぷりんって何だい? ぷりんとは? 食べ物?」

「南蛮の甘味や」

「甘いのか。甘いんだね。甘いものは好きだよ」


 蛇骨婆さん、疲れそうな喋り方なんだよなぁ。

 まぁとりあえず、プリンと並行してカルボナーラも作っていきましょ。

 まずは麺を茹でるために鍋でお湯を沸かし。

 その間に卵を四つ、内三つは卵白と卵黄に分け、卵黄だけ使用。

 全卵を使う四つ目と一緒にボウルに入れ、粉チーズとブラックペッパーを加えて混ぜる。

 で、お湯を沸かしてる鍋とは別に鍋を用意しまして。

 そっちの鍋に、牛乳、砂糖、生クリームを入れて加熱。

 さらに別のボウルに卵を割り入れてかき混ぜる、と。

 ……流石に料理を並行して作るのは面倒だなぁ……。


「卵……」


 あと、卵を割るたびに蛇骨婆さんがめっちゃ見てくる。

 俺じゃなくて卵を。

 しかも、かき混ぜて黄身を破った瞬間に一気に落ち込むんだ。

 なんと言うか、罪悪感を覚えるからやめて欲しい。

 続いてカルボナーラの具材の準備。

 玉ねぎを刻み、ブロックベーコンもややぶ厚めにカット。

 ……以上! これらをフライパンで炒めますわぞ~。


「昇、冷蔵庫の中のもん渡してやり」


 なんてやってたら玉藻さんからの指示が。

 もちろん従いますけれども。

 ……って言われてもなぁ。

 別に蛇骨婆さんに渡すような物なんて……。

 ――あったわ。

 多分これだわ。


「これですよね?」


 取り出したるはウズラの卵。

 ……結構いい値段するんだぞ、これ。


「そうそうそれや」


 やっぱりか。

 蛇骨婆さんにウズラの卵を渡せば、目を輝かせながら手を伸ばして来て。

 伸ばした腕に巻き付いていた蛇が、パクリ、と。


「あ」

「あ」


 俺と蛇骨婆さんが同時に声を上げるも、ウズラの卵を飲み込んだ蛇は、舌をちろちろとご機嫌そう。

 そんな蛇の動きに、俺と蛇骨婆さんは顔を見合わせて笑い合い。


「まだありますから」


 と、冷蔵庫から、パックごと蛇骨婆さんに手渡し。


「ありがとう。早く食べたい。美味しかった」


 ……ん? なんか今、蛇骨婆さんの言葉おかしくなかった?

 受け取っただけで美味しかったって……。

 あ、これもしかして、三回同じような言葉を離してるんじゃなく、腕に巻き付いた蛇も蛇骨婆さんに続いて話してるってこと?


「昇、焦がすで」

「あ、はい」


 衝撃的な事実に気が付いたせいでちょっとぼーっとしてたわ。

 火にかけてたプリン側の鍋がいい感じなので火から降ろし、粗熱を取り。

 かき混ぜた卵と合わせてかき混ぜかき混ぜ。

 この辺でパスタ用の鍋が沸騰したので、オリーブオイルを垂らしたのち、塩をパッパ。

 そこに麺を投入して、茹で時間はしっかり守る、と。

 そいでそいで、混ぜ合わせたプリン液を一度漉しまして、容器に入れたら蒸し焼きに。

 オーブンのバットにまずは布巾。その上に容器を乗せて、追加で沸かしたお湯を注いでオーブンへ。

 そのまま三十分ほど蒸し焼きにしたらプリンが焼き上がり。

 焼き上がったら冷やさなきゃだけど、冷やす作業は玉藻さんに任せましょう。


「卵、美味しい。とても美味しい。ちょっと小さい」


 蛇骨婆さんはウズラの卵にご満悦の様子。

 ……待って? 蛇骨婆さん本体も食べてない?

 流石に両腕の蛇用じゃないの? ウズラの卵って。


「どっちでもええよ」


 ダソウデス。

 そうこうしている間にパスタ麺が茹で上がったので、具材を炒めていたフライパンに麺を打ち上げ。

 混ぜておいたカルボナーラソースをフライパンに入れ、茹で汁をお玉一杯分入れて混ぜ合わせていく。

 茹で汁を入れるのは乳化させるためね。

 これをするとしないとじゃあ大違い。

 仕上げに軽く塩を振り、追いブラックペッパーを振りまして。

 麺全体がソースと絡んだら完成。

 卵たっぷりカルボナーラ、出来上がりっと。

 お皿に盛りつける時に、トングで掴んで回しながら立体感を付けるのがポイントね。

 高さ出してけ。


「お待たせしました、カルボナーラです」

「……かるぼなーら?」

「卵を使った麺料理ですね」

「いい匂い。美味しそうだね。早く食べよう」


 ざっくりとし過ぎた説明だけど、噓は言ってないもん。

 あと、蛇骨婆さん、聞きなれない単語だとキョトンとしながら繰り返すのちょっとかわいい。

 両腕の蛇も首をかしげて何の事? ってしてるのも可愛い。

 ウズラの卵はもう既に全部食べられてしまっている。これは可愛くない。


「昇、蛇骨婆には箸でええで」

「玉藻さんはフォークでいいんですよね?」

「当たり前やん」


 というわけで言われた通りにお箸とフォークを提供しましてっと。

 それじゃあご注文の『たっぷりの卵を使った料理』おあがりください。

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