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ひねくれものなんで

 唐揚げ……唐揚げかぁ。

 本当なら、ブライン液作って、漬けダレ作って……ってしたいんだけどなぁ。

 今からだと時間掛かり過ぎる……というか、お客さんに合わせて料理を出すなんてスタイルじゃなきゃ、下ごしらえ出来るんだけどなぁ。

 ……待てよ? という事は下味とか付けないタイプの唐揚げなら?

 ――自分で言っといてなんだけど、それはフライドチキンなのでは?

 でもまぁ、下味無しならそうなる……。

 いや、あるな。下味無しでもフライドチキンにならない料理が。


「あ、そっちにするんや」


 玉藻さんにナチュラルに思考を読まれつつ、そっちのレシピへ舵を切る。

 まずは鶏もも肉に塩コショウ、すりおろしたショウガ、酒を揉みこみまして。

 しばし置く。

 まぁ、これも下味だけど、唐揚げ程しっかりじゃないし、誤差だよ誤差。

 その間にタレのお準備。

 ニンニク、ショウガをすりおろし、長ネギをこれでもかとたっぷりみじん切り。

 そしたらそれらをボウルに入れて、そこに醤油、酢、砂糖、はちみつ、ゴマ油を入れてしっかりとかき混ぜる。

 

「何を作ってるんだ?」


 唐笠お化けさんが覗き込んでくるけど、分かるかなぁ?

 材料だけは知ってるかもだけど、油で揚げるとかは分からんよね?


「まぁ、見ててください」


 俺から言えるのはこれ位か。

 さて、馴染ませておいた鶏もも肉に片栗粉をまぶし、準備完了。

 フライパンに油を引いてそこに皮目から入れて揚げ焼きに。

 シャーー!! っていう高い系の肉が揚がる音が店内に響き渡りますわ。


「何の音だ?」

「高温の油で肉を揚げとるんよ」

「油で……揚げる?」


 実は揚げ物って結構歴史が古い。

 研究だと奈良時代には食べられてたらしい。

 ただ、油が高価だったこともあり、庶民の口には中々入らなかったらしい。

 で、江戸時代になって油が安価になって、江戸前で流行ったとの事よ。

 まぁだから、揚げるって調理法を知らなくても不思議じゃないって話。


「焼くや茹でるよりも高温で調理出来るからな。ま、未知なる調理法っちゅーことで期待しときや」


 なんて言ってますけどもね?

 作ってるの俺なんだよなぁ。

 まぁ、いいんだけどさ。

 さて、皮がパリッと揚がって狐色になったら、ひっくり返してこっちもじっくり。


「ほぉ」


 揚がった皮目の色を見て、唐笠お化けさんが感嘆の声。

 煮る、焼く、蒸すの調理法じゃあこんな狐色にはならんでしょ?

 ……なりそう。やめとこ。


「ちなみに、作っている料理を聞いてもいいか?」

「油淋鶏っていう料理ですね。ちなみに……」


 中国料理って言おうとしたけど、中国って言っても伝わんないよな?

 えーっと確か……。


「明の料理です」


 戦国時代の頃の中国は明って名前だったはず。

 数少ない俺のゲームの記憶にそうあったし。


「……明?」


 なお、伝わらなかったもよう。

 えーっと? じゃあなんて呼べば伝わりますかね?


「唐やな」

「だそうです」

「唐? ……唐か!!」


 玉藻さんに言われても最初はピンと来てなかったっぽい。

 でも、何度か声に出したら辿り着いたようで、目を見開いて驚いてたね。


「唐料理とは珍しい!」


 ……実際にその頃ってどんな料理食べてたんだろ。

 唐ってあれでしょ? ……めっちゃ昔でしょ?

 どれくらい前なんだろ。あとで調べとこ。


「そろそろやで」

「あ、はい」


 なんてしてたら揚げ終わりました。

 というわけでバットに上げ余熱調理兼余分な油を切るため少し放置。

 その間に、お皿に盛りつける準備をしましょ。

 お皿にサニーレタスを敷き詰めまして、そこにプチトマトを半分に切って乗せていく。

 黄色いプチトマトもあったからそれも盛りつけまして、いよいよお肉へ。

 目安で言うととんかつを切る時くらいの幅に包丁でカット。

 この切る時のザクッって音がいいよね。

 食欲をそそる音ですわ。


「固そうじゃな」

「思ってるほどじゃないですよ?」


 片栗粉だけで、衣をしっかりとは付けて無いしね。

 切り終わったらお皿に盛りつけて、上からたっぷりとさっきのタレをかけていくっと。

 油淋鶏のタレは具材が多い方が美味い。

 具体的にはネギがたっぷりの方が絶対に美味い。

 俺の持論だけど。


「お待たせしました、油淋鶏定食になります」


 白米とみそ汁、漬物と一緒にお盆に乗せてのご提供。

 当然、玉藻さんにも同じものを。


「鷹の爪は入れへんかったんや」

「欲しかったですか?」


 毎回思うんだけど、なんでこの人出来上がってから言うかな……。

 まぁ、唐辛子なら後からでもいいっちゃいいんだろうけど。


「うちはあった方が好みやな」

「じゃあ玉藻さんの方には入れますよ」


 唐笠お化けさんが辛いの大丈夫か分かんないしね。

 というわけで唐辛子こと鷹の爪を一本輪切りにし、玉藻さんの油淋鶏へと振りかける。

 すると、


「むむ? それは何だ?」

「香辛料の一種ですよ。……試しにどうぞ」


 まな板の上に残ってた、玉藻さん用に切った鷹の爪の先端を一かけら渡すと。

 それを恐る恐る指の上に乗せ……ペロリ。

 ――すると、


「んむっ!? ピリリと来たが吐き出すほどじゃあないな」


 この反応は大丈夫そうだね。


「どうします? 玉藻さんのように上からかけますか?」

「そうして貰おう。玉藻の姐御がそうして食べているのだ。それが一番美味い食い方に違いない」


 だそうです。

 それにしても姐御って……。

 なんて呼ばせてるんですか。


「さて、カラッとした気分になれる料理とやら、試させてもらうぞ!」


 俺の心の中のツッコミなんて露知らず、唐笠お化けさんは高々と箸を振り上げると。

 油淋鶏の一つを摘まみ、勢いよくかぶりつくのだった。

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