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伸び~~る

 玉藻さんに焼き上げてもらったピザは、ジュウジュウと音を立て。

 熱気でチーズが膨らんでは弾け、また膨らんでと繰り返し。

 見るからに熱いであろうピザに、ピザカッターを突き立てて。


「おい? 何してやがる?」


 かまいたち(父)の言葉を無視し、まずは半分に。


「バカ!! 切っちゃあダメだろうが!!」


 という言葉も無視。

 やっちゃダメなら玉藻さんが止めるんですわ。

 というわけでそのまま続けまして―。

 目算で六等分しましたら完成です。


「お待たせしました」

「切れねぇ料理を所望したはずだが……?」

「ですよ?」

「ええから食べり」


 事情の分からないかまいたち親子は首をかしげるも、玉藻さんが促したことで、それぞれピザを手に取って。


「わわ!! 凄い!!」

「こりゃ、どこまでも伸びそうじゃねぇか!!」

「確かに中々切れませんね!」


 食べようと持ち上げたら、チーズがうにょ~ん。

 これが俺解釈の切れない料理です。


「こんな伸びる食材、知らねぇぞ……」


 と言って観察しているかまいたち(父)を余所に、子供の方が好奇心に勝てなかったかピザをパクリ。

 すると、


「うま! 美味しいよ父ちゃん!!」

「なんて言うのかしら、味わったことが無い味がしますわよあなた!」


 それを追った母かまいたちも合わせて、ピザを絶賛。

 そりゃあね、全世界で食べられてる人気料理ですぜ。

 ……全世界は盛り過ぎかもだけど。


「お、おう」


 んで、ようやく父かまいたちもピザをパクリ。


「んおっ!? 舌にガツンと来る旨味がすげぇ!!」

「この伸びるやつ、これがとっても美味しい!!」

「それな、チーズっちゅう食べもんやで」

「ちぃず? ちぃず好き!!」

「乗せてある野菜も初めて見るものばかりで……この赤い汁は?」

「ソースの事ですかね? トマトという、さっぱりとした酸味とほんのり甘い果肉の野菜を使ったソースです」

「トマトは果物やで」

「一般的には野菜ですー。それに、国が定めた緑黄色野菜にも入っているんですから少なくとも日本では野菜です」

「ここ日本ちゃうけどな」


 話が脱線したけど、そんな俺と玉藻さんの会話が耳に入らないくらいピザに熱中してるねかまいたち家族。


「玉藻さん用に、と思って作ってましたけど、このままだと先にあの家族におかわりを出した方がいいような気も……」

「二枚目はホワイトソースで海鮮ピザにしてやり」

「……暗に普通のトマト使ったピザソース塗ったこのピザは自分のだと主張してます?」

「せやで?」


 小さくため息。

 まあ、いいけども。

 というわけで具材を乗せ終わったピザを玉藻さんに焼いてもらい、俺は次のシーフードピザへと移行。

 先ほどのソースじゃなく、ホワイトソースを使って、と。


「トマトの酸味と肉の旨味、ガーリックの香りにピーマンの苦み。チーズの塩味と全部が美味いなぁピザって」

「この土台もうめぇや。柔らかくモチモチとしててよ。特に端の分厚い所なんか、中々噛み切れねぇから最高だよ!!」


 ……多分、俺が生きてきた中で初めて聞いた感想だな。

 中々噛み切れないから最高、なんてさ。

 冷えて固くなった耳の部分なんて、ピザで唯一ヘイトを買う部分じゃない?

 後は乗せられたパイナップルとか。


「一切れがすぐに無くなっちゃいますね」

「お代わり作ってくれてるんだよねー?」

「一枚目と味が違うから期待しててください」


 既に二切れ目へと手を伸ばす家族に急かされながら、急ピッチで二枚目のシーフードピザを仕上げていく。

 と言っても、生地を伸ばして具材を乗せるだけだから難しくはない。


「……エビの下処理とかは?」

「全部終わっとるで」


 背ワタは取られ、尻尾の殻も剥かれた綺麗な剥きエビ。

 やや小さめの長方形に切られた真っ白なイカ。

 殻が外されたアサリ。

 シーフードミックスでお馴染みの面子が、ちゃんと個別に用意されてら。

 だったら、玉ねぎをスライスし、マッシュルームもスライス。

 ホワイトソースを塗った生地に、先に玉ねぎとマッシュルームを敷き詰めて。

 その上になるべく均等にシーフードたちを散りばめていく。

 チーズを乗せる前に、軽くブラックペッパーを振りかけて、一枚目同様チーズをドサー。


「玉藻さん、お願いします」

「はいな。任せとき」


 後は玉藻さんに焼いてもらうだけ、と。

 簡単ですね。


「ドライトマトとか乗せても良かってんけどな」

「あ、あれピザ用だったんです? てっきり後から使う食材だとばかり……」


 そうならそうだと言っておいて欲しい。

 シーフードにトマトが合う事なんて常識だし、それなら乗せてあげればよかったなぁ。

 ……ところで、なんで焼いた後に呟いたんです?

 焼く前に指摘してくれたら、全然間に合ったと思うんですけど。


「それじゃあ面白くあらへんやん?」


 面白いとかで決めないでください。

 後思考読むな。

 まぁ、気を取り直し、振り忘れてたパセリを焼き上がったピザに振りかけて、シーフードピザの完成。

 ……窯焼き出来るか? とは聞いたけど、一瞬で焼き上がるか? は聞いて無かったな。

 当たり前に一瞬で焼き上げられてるんですけれども。

 なんと言うか、玉藻さんとしばらく居ると、大体の不思議現象に耐性ついてくるな。

 正確には玉藻さんが引き起こす不思議現象に、だけども。


「お待たせしました。二枚目、シーフードピザです」


 どうせこの考えも読まれてるんだろうなぁと思いつつ、完成したピザをかまいたち家族へと差し出すのだった。

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