代表者じゃなくてヤギじゃね?
「くそ、もうこんなところ来ないぞ…」
あの後、能力のレベル判定を行いレベル2だと認定された。下から二番目のレベルらしいが、レベル2は一般的に銃火器に匹敵する能力を指すらしい。俺の能力は銃火器に匹敵するわけないと思うだろ?そのどうりでほぼほぼ一般人と変わらないのにレベル2判定を受けてしまったわけだ。なんでも未発見能力は判定が少しだけ上回って判断されるらしい、それに加えて精神作用系能力は危険度が高いものが多く、対処方法が確立されていないためレベルが高くなりやすいそうだ。
しかし、代表者たちではすぐさま新人の能力の概要は知れ渡る。彼らはチームを作り異界はと赴くからだ。まぁ、簡単に言えば強い新人を仲間にして、ザコい新人を仲間に入れないようにするためだな。ひどいとはいうなよ。俺だってその立場になればザコは遠慮するに決まってるからな。命の取り合いに足手纏い入らないから。
そしてなんで代表者たちが異界に行くのか?それは今の世界において異界の資源、情報を多く持ち得たものが勝者となるからだ。代理戦争的な意味もあるわけだな。さらに、ほっておくと化け物が出てくるらしい。間引きしないと災害が起こる。この石板が世界各国に現れてから、即座に対応しなかった国は特例なく全て滅んだ。化け物が出てきちゃったらその国は終わりってことだ。
そして代表者たちを最も困らせる問題があった。それは生命維持のために異界にいかなくてはならないことだ。もし、異界に行かず、魔素と言われるものを取り込まなかったら死ぬ。この石板はものぐさには厳しいのだ。取り込み方には大体二通りの方法があるらしく、モンスター、異界の生物を殺して吸収する方法と魔石などの魔素を含む物質を取り込む方法だ。多くの代表者たちは日常的にモンスターを倒して生活している。そのため自主的に魔素を取り込もうとはしない。しかし俺のような戦闘向きではない能力を持つものはどうするのか。それは魔石を仕事の対価としてもらっているらしい。
例えば【並列思考】という能力を持つものは、この本部で事務員として働き対価をもらう。大体月収五十万+魔石10個って感じらしい。魔石は魔鉱石と言われる山岳エリアにて発見される緑色に淡く光る結晶を加工したのことだ。それ一個で大体一週間は持つらしい。そうすると俺も事務職として働きたいところだが無理らしい。難しいではなく無理なのだ。はじめに例に出した【並列思考】や、【鑑定】【危機占い】などの能力、業務において圧倒的アドバンテージがあるか、もしくは特有の恩恵を受けることができる能力でないと事務職としては雇えないらしい。【水生成】などの能力持ちも頑張って異界に行っているらしい。水生成はどう考えても思考誘導より強いというのは置いておく。飲み水がノーリスクで手に入るのは弱いわけないだろ。いい加減にしろ!
そして俺は必要にかられ異界に入った。しかし、ゴブリンと戦うことができないのだ。正確にいうと戦いたくない。俺の手持ちでは戦う術がないからだ。あいつら、勝手に能力持ちにして戦わせるくせに戦い方を教えてくれない。月十万で教えてくれるらしいが、なんで金取るのかわからん。ムカつくなぁ。さらに支給品として渡されたのがらレベル1アーマと刃渡り15センチほどのナイフだけってふざけてんのか?こんなの無理に決まってんだろ。しかし、能力持ちになると身体能力が常人の2倍にはなるらしいので大丈夫だと言われた。俺はそんな力持ってないけどな。全く訳変わってない気がするけどな!
しかし、俺はある秘策を思いついたのだ。異界のゲートを入ってすぐにあるのは草原エリアで、比較的優しいエリアだ。ここで一番強いのがゴブリン、一番弱いのはデカいミミズだ。ミミズはどこにいるのかわからない。いわゆるレアモンスターらしく基本的にエンカするのはゴブリンだ。しかし、俺はゴブリンとやり合う自信がない。そこでこの草原に生えている草を食った。そうすると体に魔素が満たされていく感覚がある。俺は天才だった。大体100本ぐらい食ったら一日分魔素を取り込むことができた。ゴブリンから何してんだこいつと言わんばかりに見られたが気にしない。俺は賢いからな。
そんなこんなで、一週間草を食っているだけの生活をしていた。すると総監から呼び出しを喰らった。
「楠原くん、なんで呼ばれたかわかる?」
「いえ、全くわかりません」
総監は大きなため息をつきながらいう。
「君が草原エリアで草を食べていることは報告にあがっているんだけど、なんでモンスターも倒さずに草食べてるの?」
「俺ゴブリンとかとやり合う自信ないんで」
はぁ…と俺に聞こえるようにと思えるほど大きくため息をまたついた。
「草食べてどうなるの?」
「魔素を取り込めます。大体100本ぐらいで一日分溜まります」
「ほぉ…そうなのか。それは初めて聞いたな」
まぁ、俺みたいなビビリでザコいやつしか考えないからなぁ。そこらへんの雑草と大差ないもん食べてるの惨めだし。
「しかし、戦闘訓練を受ければいいじゃないか。別に体格は悪くないんだ。一ヶ月頑張るだけでもだいぶ変わると思うぞ」
「すみません。お金ないんで」
「…そうか、だが、もう草を食べるのはやめてもらおう」
は?俺の生命線がなくなるじゃないか!
「いや、それはちょっと…」
「実はな、君が草を食べ過ぎているから異界の生態系が少し崩れかけているんだ」
えぇ…そんなんで生態系崩れんなよ。仮にも異界だろ?