結局代表者ってなぁに?
「じゃあ、真人くん。行きましょうか」
「えっ?どこに?」
「何とぼけてるんですか?代表者になったんですから、もちろん異界対策本部ですよ」
「あぁ…」
そういえば、そうだったなぁ。俺、代表者なんだったわ。でもさ、鏡花みたいな超能力もないし、本当に間違いなんじゃないの?そうだといいなぁ…いや、そうに違いないよな。むしろ、その間違いに気づいてもらうために異界対策本部に行くんだよな。流石だなぁ。鏡花は。
「真人くんは本当は昨日のうちに行かなきゃダメだったのに、遅れてるからすぐ行きますよ」
鏡花の怒ってる顔も綺麗だなぁ。なんでマゾなんだろうなぁ。ほんと人間ってふしぎ。
「うーす」
そうして、鏡花に引っ張られるままマンションから出て、外に出た。そこには黒の高そうな車と、いかついグラサンスーツマッチョがいた。
異世界にでも迷い込んでしまったのか?今時のアニメでも見ないぞ。こんな光景。住宅地との圧倒的なミスマッチによって空間が歪んでいるような気さえする。
「すみません、鈴木さん。待たせてしまって」
「……いえ、全然大丈夫です…」
いやいや、全然大丈夫そうじゃないけど!?むしろ今すぐにでも帰りたそうな顔してるけどなぁ。てか、待たせてたってことは、昨日、鏡花が来てからずっと待ってたってことか?やべぇ、俺と鏡花がセックスしてる時、この鈴木さんはこの車の中で一人寂しくいたってことなのか。すごく申し訳なくなってきた。
「本当にすみませんでした」
俺は確かにクソみたいなやつだが、ここまで可哀想な人に追い打ちをかけたり、無視したりなんてできるクソじゃないんだわ。ほんとごめんね。グラサンくん!
「……いいから、すぐにでも行きましょう」
鈴木さんはグラサンでもわかるほどの鋭い眼光を発していた。おそらく、帰宅したいゲージがマックスまで溜まっているんだろう。大学で二徹してもなお帰れなかった友人のオーラと全く一緒だ。
そうして、大人しく車に乗り込んで十分ほどすると、異界対策本部に到着した。
めっちゃ近くにあったんだ。ここまで近かったら鈴木さんいなくてもよかったよな。可哀想だ。ほんと。
「では、失礼します」
鈴木さんは、少し早口になりながら急いで車に乗り込み、爆速で車を走らせて行った。
えぇ…俺らを送ってた速度より二十キロぐらいは速そうに見えるんだけど…本当に限界だったんだなぁ。
「真人くん、行きましょうか」
「はい」
中に入ると、別になんてことのない内装だった。あんまり会社のロビーと変わんないな。異界に行ってるんだし、モンスターの剥製とかあると思ってたわ。てか、やけに見られる気がする。もしかして俺に注目が集まってんのか?まぁ、選ばれしものだからな。当然か。
「真人くんこっちきて、能力の確認しなきゃダメだからね」
「能力って、確認できるの?」
「もちろん、そこの大きな石板あるでしょ。それに触れたら自分の能力のイメージが出てくるの」
デケェ、全然気づかんかったわ。内装普通とか言ってたのどこのどいつだよ!騙されたわ!
「へぇー、それって誰でも触れたらわかるの?」
「代表者だけね」
「なんで?」
「代表者はあの石板が選んでるの、能力に耐えられる器としてね。ちなみに普通の人が触れたら、全身の血が逆流して爆発して死ぬわ」
「ヒェ…」
お、恐ろしい。じゃあ俺が間違えて選ばれてたとしても死ぬってことじゃん、今死ぬか、異界で死ぬかしかないのか…最悪だぁ。
石板は大体三メートルほどだろうか?ここまで大きなものの前に立ったことがないからだろうか、異常なまでの圧迫感を感じる。恐る恐る石板に触れる。
―――――――――――
意識集中して〜どーんだよ!
自由に注目を浴びよう!みんな君に夢中さ!
さらに君はどんなものでも輝きを与えれるよ!!すごい!まるで敏腕プロデューサーだね!パチパチ!
君の力は【意識誘導】だよ。
がんばれ、ファイト!
―――――――――――
え??もしかしてこれが俺の能力のイメージなの?は??何が集中してどーんだよ。だ!何かの間違いだろ。こんなのイメージじゃないから、ただのおふざけ文章だろ。
俺はもう一回石板に手を当てた。けれど、一向に反応しない。何度も何度も当てた。けど、結果は変わらなかった。
いや、能力に不満とかじゃないんだけど、イメージとか言うからさ、超常的な感じでさ、ビビッと体に来ると思うじゃん?こんな感じでさ、説明されてもさ、困るわけよ。なんだよ意識誘導って、マインドコントロールとかじゃなさそうだし、意識だけ誘導するって結局どうなんの?
「真人くん、どんな能力だった?」
「なんか意識誘導だった。ところで鏡花はどんな感じなイメージが来たの?」
「私?んー、なんか空間が歪んで捩れていくようなイメージだったかな」
なんなそれ、すげーかっこいいんですけど。俺みたいなクソイメージじゃないじゃん。
「無事に能力もわかったことだし、総監のところ行こっか」
「えっ…そんな偉そうな役職の人と会うの?」
「まぁ、一応私たちも公務員だし最終チャック的なやつだよ。だからそこまで緊張になることないよ」
「そうなんだ」
面接と変わんないってことか、じゃあいけるかな。面接とか受験でしかしたことないけど。なんとかなるっしょ。
そうして、エレベーターで五階まで上がり総監室の前まで行った。来る途中にはやけに高そうなツボが10個ぐらいあった気がする。無駄なお金かけてんなぁ。
鏡花がドアをノックした。するとドアの向こうから「入っていいぞ」と若い女性の声がした。
「失礼します。異能課第三班隊長、笹部鏡花です。一月の代表者、楠原真人を連れてきました」
「楠原真人です」
部屋にはよくドラマで見るような社長室みたいな机に椅子があって、そこには美しい長髪の女性がいた。それも巨乳だ。鏡花は虚乳だが、彼女は巨乳だ。
「まぁ、そんな堅苦しくなくていいぞ。笹部くん。そして、そこの君が楠原真人くんだね。はじめまして。私は天川玲、ここの総監を務めさせてもらっている」
おぉ…なんか優しそうな上司って感じだ。その横にある禍々しい物体をのぞいたらだが。天川の隣にはおそらく俺より刃渡りが多いであろう大剣が立てかけられている。それもモン○ンにでできそうなぐらい無骨なグレートソード的なやつだ。なんでそんなのあるのかなぁ…やっぱり、帰りたくなってきた。
「ところで、一ついいかな?」
「なんでしょうか」
「なんで昨日に来なかったんだい?朝には彼の家にはついていたんだろう?時間はあったはずだ」
オワタ^_^キレてますよこれ。まぁ、そりゃそうだわ。昨日のうちに連れてかないと行けないのに一日遅れで連れてくるんだもんなぁ。それも俺と鏡花がセックスしてて遅れたとかいえねぇ。絶対にいえねぇ。
俺は鏡花とアイコンタクトで絶対言うなと念を押した。鏡花は一瞬とぼけたような顔をしていたが、即座に理解したのか任せてくれと言わんばかりにアイコンタクトを返してきた。よし、これで一安心だ。
「私とご主人様でセックスしていたので遅れました」
「「え?」」
何言ってくれてんのおぉぉ!今、言うなって言ったよね!(言ってない)このバカ女がぁぁ!ほら見ろよ。総監も意味がわからなくて、意味もなく腕時計見始めちゃったよ!どうしてくれんだよおおぉぉぉぉ!!!そのやってやりましたって言いたげな顔やめろ。殴るぞ。
「………そうか、とりあえず彼の能力について聞こうかな」
現実逃避しないでぇぇぇ!あんた総監なのにいいのか?!
まぁ、無かったことにしてくれるならいいか。
「えっと、【意識誘導】でした」
「ふむ、意識誘導ね」
総監は机からバインダーを取り出して、ペラペラとめくっていく。そして、徐々に顔が曇りはじめていた。そうして、最後までめくり終わってから、総監は真剣な顔になっていた。
「楠原真人くん、君の能力【意識誘導】は未発見能力だね。今のままだと判断がつかないから、私に使ってみてくれ」
未発見!まじか、俺もしかしたら運が向いてきたのか?
「いや、使えって言われましても使い方わからないですし、それより能力使っても大丈夫なんですか?」
俺はただ疑問をぶつける。
「ああ、周りに被害が出る可能性のあるものは使っては行けないが、君の能力はおそらく精神作用系能力の一種だろう。そうゆう場合なら問題ない。いざとなったら隣にいる笹部くんが止めてくれるだろう」
「なるほど、ちなみに使い方って教えてくれない感じですかね?」
「能力は使おうと念じたら大体使えるよ。失敗しても気にするな。誰も能力のちゃんとした発動プロセスなんて知らないから」
まじかぁ…ガバガバ理論で能力って発動されてたんだなぁ。念じるだけなら俺だってできそうだ。
「わかりました。じゃあ行きます」
意識誘導発動してえぇーー
なんか総監の首が一瞬だけカクッて動いた。
「ふむ、なるほど。もういいぞ。だいたいわかった」
まじかよ。すげー。そんな一回で能力の大体の力量わかるとか流石だなぁ。
「わかりやすく言えば、街中にいる奇抜な服装をした人を見つけた感覚だ」
「え?それってどうゆう」
なんかめっちゃしょぼそうな雰囲気漂ってきたなぁ。
「まぁ、一瞬気が取られるだけだな。なんて言うか…不意打ちの時に便利じゃないかな?気をそらせるしな」
「ソッスカ」
やっぱりクソ雑魚ナメクジ能力だったわ。これじゃ異界行ったら死ぬな。
もーヤダァぁぁ!!!俺おうち帰る!!