第二話 自己紹介
重い沈黙が続いた。誰も発言なんてしない、そう思ったとき、一人の女の子が口を開いた。
「私の名前は北条美鈴。中学2年生よ。放課後に一人で買い物に行ったら誰かによって"ここ"に連れ去られたわ」
同じ学年なのに、行動力が凄いなぁとぼんやり思っていると、その子の隣にいた男の子も自己紹介し始めた。
「ぼ、僕は井上光。中学1年生。えっと……連れ去られてきました。 よろしくです」
光くんの自己紹介が終わると皆で自己紹介をする流れになってしまった。何を言えばいいのかなんて全くわからない。考え始める頃にはもう次の子の自己紹介が始まってしまっていた。
「俺の名前は清水蓮、よろしくな!中学3年生だ。せっかく受験勉強してたのによぉ」
「私の名前は愛川夢奈です。小学6年生。多分年下です。足を引っ張らないように気をつけます」
「私は、時透友梨佳ですわ。中学1年生。誰もが知ってる時透財閥の愛娘ですわよ」
そういうと、全員の顔から血の気が引いた。あの有名な時透財閥の娘……?親は犯罪に片足を入れてしまっても、お金ですべてを解決し、犯罪が起こらなかったという判決に変わったと言われている。しかも、娘はわがままなんだとか。げっ。なんで時透財閥のお偉いさんまでいるんだよぉ。
「俺は米倉亜樹。中1。他にはない」
「私は大島姫香です。中学2年生です。」
「佐藤雪」
雪ちゃんが名前だけ言うとみんなは「他には?」と聞き始めた。それでも雪ちゃんは「佐藤雪」としか言ってくれない。遂には皆が根負けして私が自己紹介をする番になってしまった。
「ふ、古月愛月桜です…中学1年生です。えっと……よろしくお願いします。」
私の自己紹介とも言えない自己紹介が終わると、美鈴ちゃんがチームで別れてこの世界を探索しようと提案した。皆が賛同する中唯一反対したのが時透友梨佳ちゃんだった。
「なんで、平民なんかの言う事を聞かないといけないのよ!そもそもなんでこんなくだらないゲームなんかに閉じ込められるのよぉ!?パパに言いつけるわ!」
と、全力で反対した。パパに言いつけるって……漫画の中かよ、というツッコミを入れそうになったが、本当に時透財閥の会長である友梨佳ちゃんのお父さんは怖い人だと思う。新聞でしか見たことはないが。そんなことを考えていたが無機質な機械の音声によってかき消された。
『トキトウユリカサン。アナタハコノゲームトサンカシャヲブジョクシマシタソレニヨッテバツガクダサレマス。』
と言った瞬間、友梨佳ちゃんの悲鳴が響いた。
「きゃああぁぁぁぁぁ!」
彼女の首についている輪っかから電流が流れていた。私にも同じ首輪が付いてるのかと思い、首に触れてみると案の定首輪がついていた。全員の視線が友梨佳ちゃんに向くと友梨佳ちゃんは顔を真っ赤にしながら叫び始めた。
「だずげでぇっ!やだぁっ!死んじゃうっ!!」そんな抵抗もよそに電流は変わらず流れている。2〜3分ほど経つとやっと電流が止まった。彼女は地面に崩れた。すかさず蓮君が
「じゃあ、3人グループに分かれて探索でいいかな?」
と友梨佳ちゃんに聞いた。友梨佳ちゃんは顔を上げながら
「仕方がないわ、いいわよ」
と、まるで何事もなかったかのように言った。美鈴ちゃんの指揮によりグループはこんな感じで分かれた。
Aグループ……美鈴、蓮、友梨佳
Bグループ……光、亜樹、姫香
Cグループ……愛月桜、夢奈 雪
私が所属するグループは全員女の子だ!とちょっとした安心を浮かべると、美鈴ちゃんは
「じゃあ、分かれましょ。ルール違反はしないように。
お互いの検討を祈るわ」
と言って「解散」とでもいうように手をひらひら振った。
その言葉を聞いてみんなは一斉にグループに分かれ別々の方向に向かって歩き始めた。
次回、本編から少し外れた話になります。
(視点が変わる)
ご承知おきくださいm(_ _)m