表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おれはお前なんかになりたくなかった  作者: 倉入ミキサ
第十三章:風太と美晴と菊水安樹
98/127

もう二度と会うことはない


 「風太……くん……」

 「なんだ? 美晴」

 

 二瀬ふたせの前に立っている、戸木田ときた美晴ミハル

 奥歯をグッと噛み締め、両手をギュッと握り締め、美晴は風太に向かってハッキリと言い放った。


 「その身体……わたしに返してっ……!!!」


 わたしに「返して」。まるで、それが自分のものであったかのような物言ものいいだった。

 風太は鼻でフッと笑うと、ヒステリックになっている美晴におくすることなく、一歩前へと進んだ。


 「返す? おれが、お前に?」

 「わたしのもの……なのっ……! その身体は……わたしが……使ってたのっ……! 『風太』として……の……新しい人生を……送るために……その身体は……わたしに必要なのっ……! 勝手に……持っていったり……しないでっ……!!」

 「おれが奪ったことになってるのか。お前の中では」

 「奪った……でしょ……!? とぼけないでよっ……! 風太くん……“あの日”……言ったよね……!? もう……元に……戻れなくてもいいって……!」

 「何を言ってるんだ? “あの日”って、いつのことだよ」

 「わたしの……望んだように……生きるって……!! 独りぼっちに……ならないように……、わたしと……一緒に……生きていくって……決めた……“あの日”っ……!!!」

 「ああ、やっと分かった。“あの日”って、決戦の日のことか」

 「決戦の日……?」

 

 ペンダントの効果が発動し、入れ替わっていた二人が元に戻った日。風太が男の身体に、美晴が女の身体に戻った、あの日だ。


 「美晴は、決戦の日のことをよく覚えてるんだな。正直……おれは、あんまり覚えてないんだ。ペンダントを発動させることに必死でさ」

 「ペンダント……?」

 「ああ。おれの首にある、この青いペンダントと……。お前も持ってるだろ? もう一つのペンダント」

 「こ、これ……? これが……何だって言うのっ……!?」

 

 美晴は、ピンク色の宝石がついた『入れ替わりペンダント』を、スカートのポケットから取り出すと、くしゃくしゃに丸めて風太に投げつけた。 風太はそれをキャッチしようとせず、自分にぶつかって地面に落ちるのを待った。


 (美晴がピンク色のペンダントをハズしても、おれの首に青いペンダントがある限り、元には戻らないみたいだな)


 特に問題はない。自分の首にさえペンダントがあれば良いのだ。

 風太は軽くため息をついてしゃがみ、落ちているピンク色のペンダントを拾った。そして、もう一度立ち上がるついでに、美晴の全身を下から上までじっくりと見た。二瀬風太の視点から、戸木田美晴を感じるために。


 (美晴って、こんなに小さかったんだな……)

  

 身長や体格は、あの春日井かすがい雪乃ユキノとそれほど変わらない。

 真っ黒なロングヘアで、前髪は瞳すらおおい隠そうとしている。

 うであしには、健康的な筋肉さえなく、運動不足であることがうかがえる。

 すべての印象を一言で言い表すなら、美晴は“幽霊ゆうれい”だ。そんな幽霊が、白いブラウスと紺色こんいろりスカートという「女子トイレの怪談かいだん」コーデに仕上がっている。幽霊+怪談で、夜中には絶対会いたくないタイプの少女が、美晴なのだ。

 ……と、ここまではいつも通り。


 (いつもの美晴……じゃないな。心の中が荒れてる。今までずっと『美晴』だったから、おれには分かる)


 鏡に映る姿を何度も見ていた風太は、現在の美晴の些細ささいな変化にも気づくことができた。

 ヘアブラシでキレイに整えられていた黒髪が、乱れ始めていること。

 ブラウスやスカートが、以前よりほんの少しだけ汚れていること。

 微熱びねつでもあるのか、全身の肌がほんのり赤っぽくなっていること。

 ……どれも、あまり良い変化とは言えない。


 (原因は、きっとおれへの怒りや憎しみ……。メチャクチャな逆恨さかうらみだけど、美晴らしいと言えば美晴らしいかな)


 美晴という女がどういう奴なのかを知っているからこそ、風太はあまり動揺しなかった。美晴がこうしてわめらすことさえ、風太にとっては想定内なのだ。


 「なんですか……? わたしの……こと……ジロジロ……見て……!」

 「別に。やっぱり、お前にはその姿が似合ってると思ってさ」

 「なっ……!? そ、そんな……わけ……ないっ……! それで……、二つのペンダントが……何なの……!? 話してっ……!!」

 「青色のペンダントと、お前が今投げたピンク色のペンダント。これは二つで一組のアイテムで、『入れ替わりペンダント』なんだ」

 「い……入れ替わり……?」

 「お前が100ノートで身体を入れ替えたように、おれもこのペンダントを使って身体を入れ替えたのさ。おれとお前は、2回入れ替わって、元の身体に帰ってきたんだ」

 「そんな……信じられない……。本当……なの……?」

 「本当かどうかは、この現実を見れば分かるだろ。今おれの前にいるのは美晴で、今お前の前にいるのは間違いなく風太だ。これ以上、何がウソだって言うんだよ」

 「そ、それは……そう……ですけど……」

 「まあ、元に戻るのも簡単じゃなかったけどな。失敗する可能性もあったし、いろんな覚悟も決めた。だからおれは、元の身体に戻れたあの日を、『決戦の日』って呼んでるんだ」

 「決戦……? それは……わたしと……戦うって……意味の……?」

 「そうだ。おれはもう、お前に何があっても、かわいそうだと思わない」

 「……!」


 美晴は目を見開き、風太を見つめた。

 風太は目をそらさず、正面からしっかりと、美晴の瞳の奥を見据みすえた。


 「ま、待って……。風太くん……、待って……ください……」

 「どうかしたか?」

 「わたし……わ、分からなくてっ……! ふ、風太くん……は……『あの日』……わたしに……言いましたよね……? お人形と……マスターで……、二人で一緒に……生きていくって……」

 「そうか」

 「えっ……? 言いました……よね……?」

 「忘れてくれていい」

 「わ、忘れて……くれて……いい……?」

 「それはウソだからな。お前をだました」

 「なっ……!?」

 「お前にはウソをついた。この身体を取り返すために。バカみたいに信じ込んでくれてありがとう、美晴」

 「……!!」 


 美晴は、ひどく痛む胸をきゅっと押さえた。しかし痛みをこらえきれず、ひとみうるんでしまっている。

 

 「お前がマヌケだったおかげで、おれは元に戻れた。今度、他の誰かと入れ替わる時は、もっと頭を使ったほうがいいぞ」

 「でもっ……! でも……風太くんはっ……!」

 「ん?」

 「あの時……最後に……言ってくれました……よね……? わたしの……こと……好きだって……! わたし……それだけは……信じてて……!! 風太くんの……こと……わたしも……

 「全部ウソだから、信じなくていいって。だいたいお前、おれに好かれるようなことを、何か一つでもしてくれたのか?」

 「え……」

 「お前みたいな自分勝手なクズを……誰が好きになるって言うんだよ。みんなから嫌われてるから、お前はいじめられっ子なんだろうが」

 「……!!」

 

 風太のするどい言葉は、美晴の胸を突き刺し、そして深くえぐった。

 美晴はハッと息を飲み、「あうぅ……」と言葉にならないつぶやきを口から漏らし、大きな涙の粒をひとつ、またひとつと、目尻めじりからほっぺたへと流した。

 

 「ううぅ……!! 痛いっ、痛いよぅ……!! 風太くん……やめてっ……」

 「もう帰れよ。おれの言葉を聞くな」

 「胸が……苦しいっ……! ううぅっ……うううぅぅ……!!」

 「おい、そこにしゃがむなよ。立て。早く立て」


 風太の声を無視し、美晴は道路の真ん中でしゃがみこんでしまった。そして、手のひらで顔を覆って、本降ほんぶりになる雨みたいにわんわんと泣き出した。

 風太はイライラしながら溜め息をつき、この障害しょうがいぶつをどうやったらけることができるかを模索した。


 「めんどくさいヤツ。泣いてどうなるって言うんだ」

 「うわあああぁん……! うああああぁぁんっ……!!」

 「うるさいな。男はそんな簡単に泣かないんだぞ。お前は、どうあがいたって女なんだよ」

 「ひぐっ……! だ、だって……風太くん……が……! ぐずっ……うぅっ……うわあああああぁんっ……!!」

 「話もできないのか。じゃあ、もう消えろよ。お前がここにいると迷惑だ」

 

 美晴は呼吸を整え、なんとか会話を続けようと努力した。


 「ううぅっ……う゛ううぅっ……! どう……して……? 風゛太くん……は……ぐすんっ……。風太くんは……どうして……そんなっ、ふう……に……なっちゃった……の……? ひぐっ……!」

 「は? どういう意味だよ? 言ってみろ」

 「い、言うけど……。お……怒らない……?」

 「怒らないから」

 「ぐすっ……! あ、あのね……? 風太くん……が……そんなに……ひどいこと……言うなんて……おかしい……の……。人を……き、傷つける……ような……こと……言う人じゃない……のに……。今の……風太くんは……なんだか……別人みたい……で……」

 「だから? 何が言いたいんだ」

 「安樹アンジュちゃん……って……子……! あ、あの子……と……一緒にいる……から……、風太くん……は……その……お、おかしく、なっちゃった……のかも……って……思ったの……!」


 そう言うと、美晴はおそおそる風太の反応をうかがった。

 安樹アンジュという謎の女が、風太に良くないことを吹き込んでいるのかもしれない……という、雪乃と同じ思考に、美晴もいたったのだ。突然現れた正体不明の存在に、疑念ぎねんいだくのは、雪乃であろうと美晴であろうと同じである。

 

 美晴は震える手で涙をぬぐい、風太の顔をチラリと見た。

 本人は「怒らないから」と言ったものの、今の発言で風太が怒ったりしないか、やはり気にかかる。


 「安樹のせいで、おれがおかしくなった……って言いたいんだな?」

 「せ、せいで……って……わけじゃない……けど……。原因は……そう……かなって……思うだけ……で……」


 そのセリフが終わらないうちに、風太は美晴のうで容赦ようしゃなくつかみ、グイグイと自宅の玄関の前まで引っ張った後、そこでパッと手を放した。

 眼前がんぜんには風太、背後はいごには玄関の扉で、美晴は逃げ場を失っている。


 「風太……くん……?」

 「何が分かるんだよ」

 「あっ……!?」

 

 美晴は、恐怖が混じった驚きの声をあげた。

 風太の血走ちばしった瞳が、自分の姿を捉えているのだ。

 

 「お前に何が分かるんだよ!!! 美晴なんかが、安樹の何を分かってるっていうんだ!!!!」


 あんじょう、風太を怒らせてしまった。

 美晴は身をちぢこまらせて、ぶるぶると震えながらギュッと目をつぶった。


 「ご、ごめんなさいっ……!」

 「お前、いい加減にしろよ!!! 安樹のこと何も知らないくせに、ワケの分からないこと言いやがって!!!」

 「うぅっ……! うううぅっ……!!」

 「おれをこんな風に変えたのは、安樹じゃないっ!! お前だよ!!! 何もかも、お前のせいだろうが!!!!」


 ドンッ!!

 風太の左手のこぶしは、おびえる美晴の顔の横を通過し、玄関の扉に思い切りぶつかった。その大きな音に「ひぃっ……!」とびっくりして、美晴はまたボロボロと涙の粒をこぼし始めた。

 

 「うぅっ……うわあああぁんっ……」

 「何度でも言ってやる!!! 美晴との出会いは、最悪だった!!! だから、お前のことはもう忘れたいんだよ!!! もう二度とおれの前に現れるなっ!!!」

 「うぅっ、ぐすんっ……! ふ、風太……くんっ……!」

 「名前も呼ぶな!!!! 今後、絶対におれの名前を呼ぶなよっ!!! お前の声とか、しゃべり方とか、全部、ムカつくんだ!!!」

 「そ、そんな、ことっ……。ひぐっ……うっ、うわあああぁあぁんっ……!! うああああぁぁんっ……!!!」

 「はぁ、はぁ……好きなだけ泣いてろ。でも、安樹は本当に何も関係ない。おれをうらむのは勝手だけど、おれの大切な友達まで恨むつもりなら、おれはここでお前を殴るからな」

 「ひうっ……!?」

 「ボコボコにして、二度と学校に来られなくしてやるからなっ!!」


 その言葉は、美晴の心臓をグチャっと握り潰した。


 「ああ……あ……。あ……ああ……あ……」


 おそれ、きずつき、かなしみ。負の感情を涙として溢れ出させることで、美晴の心はかろうじて耐え続けていたが、ついにその許容きょようりょうを超えてしまった。つまり、風太の最後の言葉により、美晴の心はバラバラと壊れてしまったのだ。

 悲しみの涙を通り越した状態。それが、今の美晴である。


 「ああ……あ……あ……」


 目はギョロリとまん丸に開き、口はパクパクと動いて意味不明な呟きを吐き出し、全身の筋肉は活動をやめてダラリとした脱力だつりょく状態じょうたいに入った。まるで、糸が切れた操り人形のようだ。

 しかし、そんな状態になった美晴に対しても、風太は相変わらず無情むじょうだった。


 「どうした。腰が抜けたか?」

 「あ……ああ……あ……」

 「話せないのか? それなら、もう終わりだな。おれは家に入るよ」

 「……」

 「悪いけど、そこどいてくれるか? お前の後ろにあるのは、ウチの玄関の扉なんだ」

 「立……て……なぃ……」

 「そっか。じゃあ、無理やり入る」


 風太は美晴を軽く押しのけ、玄関の扉を開けた。

 あと一歩で念願ねんがんの帰宅である。扉を閉めて、カギさえかけてしまえば、もう二度と美晴に会うことは……。


 「ま、待って……!!!」


 放心ほうしんモードからハッと我に返った美晴は、家の中に入ってしまおうとする風太のTシャツのすそを、咄嗟とっさに掴んだ。


 「わっ!? 服を掴むなっ!!」

 「た、立ちたいのに……立てないのっ……!」

 「知るかよっ! 手を放せって言ってるだろ!」

 「ちょ、ちょっと……待って……!」

 「待たないっ! 話はもういいだろ!」

 「い、いや……! まだ、まだ……!」


 風太の服を右手で掴み、左手で掴み、さらに右手で掴み、よじ登るかのようにして、美晴は立ち上がろうとした。

 しかし当然、風太はTシャツごと身体を下に引っ張られている。


 「なんだお前っ! ゾンビかよっ!」

 「こ、この服……! わたしも……着たことある……!」

 「はあ!? そんなこと、今はどうでもいいだろ!? 頭がおかしくなったのか!?」

 「この……ズボンも……! 男の子の……服……! わたし……着てたのっ……!」

 「入れ替わってた時の話だろうが! それはもう終わったんだよ! 本当に大丈夫か、お前っ!」

 「この……ペンダントもっ……! 青い……宝石が……キレイ……って……思って……! ずっと……つけてた……!」

 「!!?」


 くるった目をした美晴は、風太の身体にすがるようにからきながら、襟元えりもとのペンダントのヒモにまで触れた。絶対にハズしてはいけない、絶対に壊してはいけない、大事な大事なペンダントに、気安きやすくベタベタと。


 「うわぁっ!? 入れ替わりペンダントに触るなっ!!」

 「入れ替わり……? そ、そっか……! これのせいで……元に……戻っちゃったんだから……、このヒモを……ちぎれば……もう一度……入れ替わること……が……」

 「やめろっ!!」


 ペンダントを守るため、風太は腕にグッと力を込めて、美晴を押した。

 すると、美晴の華奢きゃしゃな身体は、想像よりも遥か遠くまで吹っ飛んだ。


 「はぁっ、はぁっ……! クソっ!!」


 美晴の安否あんぴ気遣きづかっているヒマはない。

 風太は急いで玄関の扉を閉め、ガチャンとカギをかけ、家の中に逃げ込んだ。


 「ぺ、ペンダントは!? 無事か……! よ、良かった……」


 さいわい、ペンダントはちゃんと風太の首元にあった。まだまだ効力が続いているらしく、魔法が解けたりはしていない。とりあえず、一安心。

 風太はホッと胸を撫で下ろし、大きな溜め息をついた。


 「ふぅ……。忘れよう。美晴のことは」


 *


 翌日。

 月野内小学校の保健室。


 「へぇー。それで、キミたちの入れ替わり物語は、おしまい?」

 「おしまい」


 風太は、昨日の美晴との一部いちぶ始終しじゅうを、安樹に語った。そして、話の最後に、これでもう美晴と関わることはないと、言い切った。


 「なんか、あっけないね。男女の別れ話としては」

 「あのなぁ……。決着の話だぞ? おれと美晴との間に、決着をつけたんだ」

 「それで、美晴ちゃんを男のパワーで突き飛ばして、本当に全部おしまい?」

 「ああ、終わりだ。もうアイツと会うこともないしな」

 「へぇ……。でも、美晴ちゃんは大丈夫かな?」

 「何が?」

 「キミに突き飛ばされて、ケガとかしてないかなって思ってさ。あと、ショックで不登校になっちゃってるかも」

 「それなら大丈夫だ。今朝けさ、美晴が登校してるのを見た。見た感じ、いつもと変わりない様子だったぞ」

 「ふ~ん。美晴ちゃんの様子を、わざわざ、見に行ったんだ~?」


 安樹はイタズラっぽくニヤニヤと笑った。


 「な、何かおかしいか?」

 「いやあ、『美晴のことなんかもう忘れる!』と言った割には、まだ随分と気になってるみたいだなぁと思ってさ。ムジュンしてない?」

 「そっ、それは……たまたま見かけただけだっ! ケガをさせる気はなかったし! とにかく美晴のことは、これからゆっくり時間をかけて忘れていくんだよ!」

 「そうなんだ。ま、せいぜい頑張ってよ。ちゃんと彼女のことを忘れられるといいね」

 「おう! これから楽しい思い出をいっぱい作って、嫌な記憶を全部上書きしてやる!」


 風太は意気込いきごみ、左手でガッツポーズをした。

 今の風太の言葉に、ウソはない……と、思いながらも、安樹はそっとまどの方を向いて、小さな声でボソッと、独り言をつぶやいた。


 「あーあ。ボク、なんとなく分かっちゃった。風太にとって、美晴がどういう存在なのか」


 少しだけ、かなしい目をして。

 風太には絶対聞こえないような声で。


 「ん? 何か言ったか、安樹?」

 「べーつにっ。何も言ってないよ。ボクもそろそろ行動しなきゃ置いてかれるなって、思っただけ」

 「行動? どこかに行くのか?」

 「どこか、ねぇ……。あっ、そうだ! 良いこと思いついた!」

 「おっ、なんだ? 良いこと?」

 「今日の放課後、デートしようよ♪」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ