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おれはお前なんかになりたくなかった  作者: 倉入ミキサ
第三章:小箱蘇夜花
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恥辱的な刑


 「真美香ちゃーん、準備できてるー?」

 「えっと、この赤いボタンを押せばいいんだよね?」

 「そうそう。わたしのスマホでムービーを撮っておいてほしいの。後で見返したいからさ」

 

 真実香は蘇夜花の赤いスマートフォンを構え、ピントを調整してから、画面上にある赤いボタンを押した。

 

 「よーし。それでは、今回の執行人は蘇夜花で、『彷徨さまよい人魚』をはじめまーす」

 

 ジョボジョボと水が出続でつづけているホースを手に持った蘇夜花が、『美晴』に近づく。

 

 「美晴ちゃん、あーんして」

 「……?」

 「あーん、して?」

 「は……?」


 『美晴』はワケが分からず、ポカンと口を開けた。

 そのわずかな隙間すきまを狙って、蘇夜花はホースの先をぐいっと押し込んだ。


 「んぐっ!?」


 一気いっきに、口の中が水でいっぱいになる。水を飲み込む準備は、まだできていない。

 『美晴』は首を左右に振って激しく抵抗したが、蘇夜花はそれを許さなかった。

 

 「ダメだよ、美晴ちゃんっ!!」

 

 一旦いったん、『美晴』の口からホースが外されたが、すかさず右肩をギュッと掴まれた。

 

 「うあぁっ……!?」


 ふたたび、ビリビリとした激痛が走る。これをらうたびに、『美晴』の抵抗する気力はがれていく。

 

 「もうっ! しょうがないなぁ。少し水の勢いを弱くするから、ちゃんと全部飲んでよー?」

 「はぁ……はぁ……」

 

 それに従うしかなかった。

 

 「んぐっ……、んっ……んっ……」

 

 あまり衛生的えいせいてきではないトイレ掃除用のホースの先端せんたんを、『美晴』はもう一度いちどくわえることになった。

 ホースの先から放出ほうしゅつされる水道水が、またのどの奥まで届いていく。

 

 「どーお? 美味しい?」

 「んくっ、んっ……んっ……。んぐっ……」

 「うんうん。美味しいお水をたくさん飲むんだよー」

 「んっ……! んぐっ……ん……」

 

 蘇夜花は家畜かちくたわむれるかのように、『美晴』をあやした。

 その、『美晴』は何度も苦しくなってホースを吐き出したが、そのたびに肩を強くにぎられ、痛みにもだえた。


 *


 それから10分ほど経過けいかしたころ


 (うぅっ……。いつまで続くんだよ、これ……)

 

 『美晴』は未だに、水を飲まされ続けている。

 確かにではあるものの、しっかりと拘束こうそくをしたわりにはいささか地味な嫌がらせだと、『美晴』は感じていた。

 そしていつの間にか、『美晴』の目の前にいるのは、蘇夜花、五十鈴、真実香の3人だけになっていて、あとの2人の姿は消えていた。

 

 「んー、そろそろいいかな? 美晴ちゃん、お疲れ様ー」

 「んぐぐっ……ぷはっ!」

 

 『美晴』の口から、無理やりホースが引き抜かれる。


 「はぁっ……、はぁっ……はぁっ……」

 

 周りの空気をたくさん吸って、呼吸を整えた。水じゃない物を、とにかくたくさん口の中に入れようとした。

 『美晴』がそうしている間に、蘇夜花の興味はすでに別の物に移っていた。

 

 「へー。美晴ちゃんって、こんなスカート持ってたんだ」

 「……っ!?」

 

 なんのためらいもなく、ごく自然に、『美晴』は蘇夜花にスカートをめくられた。

 エロガキがやるような嫌がらせとはまた違う、点検てんけんのようなスカートめくり。蘇夜花はそのまま、中をじっとのぞいている。

 『美晴』の視点してんからは、自分のスカートの中がどうなっているのかは分からない。ただ、蘇夜花の指の感触かんしょくだけが伝わってくる。


 「これ、白? いや……青い水玉みずたまかなぁ」


 蘇夜花は指でれ、何かの色や生地きじを確認した。

 こいつが見ているのは、スカートの中にある……何か。

 

 「おっ、おい……!!」

 

 途端とたんに恥ずかしくなって、『美晴』は精一杯せいいっぱいまたを閉じようとした。

 しかし、その行動が蘇夜花は気に入らなかったらしく、すぐにホースの口が『美晴』の顔面に向けられた。

 

 「わっ……!? なっ、なにすん……ぶぇっ……やめっ……ろ……!」

 

 聞き届けられない。

 

 「『やめろ』? 美晴ちゃん、そんな言葉どこで覚えたの? あんまり生意気なまいきなこと言ってると、その口も縛っちゃうからね」

 「くっ……!」

 

 蘇夜花は、ホースを持っている手を降ろした。

 『美晴』の目元を覆う前髪はびっしょりと濡れ、毛先からしずくがしたたっている。


 *

 

 その直後ちょくごだった。


 (うっ……! こ、こんな時にっ……!?)

 

 「あの感覚」が来た。一昨日おととい、美晴の家に初めて行った時にも起こった、「あの感覚」だ。

 道の真ん中で起こったあの時とは違い、ここはさいわいにも女子トイレだが、迷っている時間はあまりない。急いでパンツを降ろさなければならない。

 

 「くそっ……」

 「ん? どうしたの美晴ちゃん」

 

 身体からださぶっても、手の縛りは解けそうにない。

 

 「チッ……!」

 「急に暴れだしたね。何をしようとしてるのかな?」

 「べ、別に……何も……」

 「んー? 本当かなぁ?」

 

 落ち着きのなくなった『美晴』を見て、冷静な観察眼かんさつがんを持つ五十鈴は、その異変いへんをいち早く見抜いた。

 

 「美晴……? もしかして、出したいの?」


 五十鈴のその一言で、蘇夜花と真実香の二人も、『美晴』の異変に気付いてしまった。

 

 「えっ、出したいの!? 出したいんだね? 待ってたよ、美晴ちゃんっ!」

 「あはっ。もうすぐなの? もっと近くで撮らせてもらおうかなっ」

 

 『美晴』の尿意に対して、女子三人の反応は「驚愕きょうがく」ではなく「待望たいぼう」だった。もちろん、手の縛りを解いてくれそうにはないし、パンツを脱がせてくれそうにもない。

 『美晴』はそこでやっと、自分が水道水を飲まされ続けていた理由に気付いた。


 (あっ、そうか……。こいつら、最初からこれのためにっ……!!)

 

 と、連中の本当のねらいが分かったところで、どうしようもない。後悔すべきなのは、蘇夜花に連れられて体育館まで行ってしまったことだ。あそこから、全ては始まっていた。


 「ち……違う……! そういう……わけじゃ……なくてっ……!」

 「美晴はウソが下手ね。その余裕のない表情が、もう答えを出してるわよ」

 「う……!」

 

 五十鈴には、全てがお見通みとおしだった。


 (どうしようっ! こいつらの前で、らすなんてことになったら……!)


 『美晴』は拘束こうそくを解こうと、これまで以上に手足を動かしてあばれてみたが、やはり筋力きんりょく皆無かいむ女子のパワーではどうにもならなかった。美晴という少女の身体は、絶望すら感じるほどに弱い。

 

 「はいはい。暴れないでね美晴ちゃん」

 

 蘇夜花は『美晴』に近づき、尿意を必死に耐える『美晴』の腹部ふくぶを、優しい手つきでで回した。当然そんなことをすれば、限界はどんどん近づいてくる。

 

 「はぁっ……はぁっ……。やめろっ……」

 「ガマンは体に良くないよ? 出して気持ちよくなろうよ」

 「あぁっ……! ダメだっ……くそっ……!」

 「んー?」

 「待って……くれっ……! ほ、本当に……出るっ……!」

 「待っているのは、わたしたちの方だよ。ほら、しーしーして? みんなで見ててあげるから」

 「うぅっ……さ、さわるなっ……!!」

 

 『美晴』の両脚りょうあしは、ガクガクと震えだした。太ももの辺りの筋肉はしびれをはっして、もう一刻いっこく猶予ゆうよもないことを知らせている。

 「ダムの決壊けっかい」を、蘇夜花が一番近い場所で待っている。情けないと分かっていても、『美晴』にはもう、こうするしか方法がなかった。

 

 「お……お願……い……します……」

 「ふふふ。しゃべり方が変わったね。何のお願いかな?」

 「し、下着……を……! パンツを……降ろして……くださいっ……!」


 このイジメの主犯しゅはんに、頼み込むしかなかった。それがとてつもなくにくい相手でも、はじだと分かっていても、今すぐそこまで来ている「あの感覚」にはあらがえない。

 しかし……無情むじょう

 

 「ダ~メ。あなたのつみは、それほど重いんだから。しっかり反省して、二度とわたしという弱者を苦しめようとしないでね」

 「そっ、そんな……!」


 限界が来た。

 『美晴』はぎゅっと目をつぶって、上を向いた。


 「あっ……!」


 ジワッ……。

 真っ白なパンツの、一部の色が変わる。


 「あっ、ああっ……!」


 変色へんしょくが、みるみるうちに広がっていく。

 もう止められない。


 「はぁっ、ああぁっ……!」


 身体にめ込んだ生温なまあたたかい液体が、なく出て行くのが分かる。

 『美晴』はついに、一時いっとき解放感かいほうかんを選んでしまったのだ。


 「ああっ……」


 チョポポポポ……。

 濡れた下着から便器内へと、水がしたたり落ちる音がする。


 「……」

 

 今の『美晴』にできるのは、ただ目を閉じたまま、顔をせることだけだった。

 同学年の女子たちに、女の身体で失禁しっきんしているところを、間近まぢかで見られている。それは、何かとカッコつけたい年頃としごろの男子にとっては、耐えられない羞恥しゅうち屈辱くつじょくだった。


 「はぁっ……はぁっ……」


 顔は紅潮こうちょうし、わずかに開いた口からは、美晴の声での小さな吐息といきが漏れている。


 「あらら。美晴ちゃんったら、こんなに汚しちゃって」

 

 蘇夜花はニヤニヤと笑いながら、『美晴』のスカートをまくり上げた。この場にいる全員に見せるために。

 

 「ああっ……!? やめろっ……!! み、見る……なっ……!!」

 

 『美晴』が太ももを動かして抵抗しているが、蘇夜花は全く動じず、それを止めようともしない。

 

 「ねぇ、恥ずかしい? 恥ずかしいよね? 『デメ』の時と比べて、どっちが辛い?」

 「うぅっ……。見るな……って……言ってるのにぃ……」

 

 苦しみに耐えかね、『美晴』の言葉にはどんどん力強ちからづよさがなくなっていった。

 この場にいるのは、ただの「自分の醜態しゅうたいから必死に目をそむけようとする少女」だった。


 *


 ツンと、鼻を刺激しげきする悪臭あくしゅう。それがただよう個室の外で、五十鈴が口を開いた。

 

 「蘇夜花、そろそろいいんじゃない?」

 「そうだね。真実香ちゃん、ほどいてあげて」

 

 指示を受けた真実香は、『美晴』の両手を縛っているヒモを解き、映像えいぞう記録用きろくようのスマートフォンを蘇夜花に返却した。

 自由になった『美晴』の両手は、真っ先にまたの間のスカートのすそを掴んで引っ張り、濡れたパンツが誰にも見られないように隠した。


 「はぁ、はぁ……」

 

 あとは足首にかけられた手錠が外れれば、『美晴』は完全に自由の身になる。

 蘇夜花はその手錠のカギを指でつまんで、『美晴』に見せびらかしながら言った。

 

 「コホン。じゃあ『彷徨さまよ人魚にんぎょ』を始めるよ。本番はここからだからね、美晴ちゃん」

 「……」

 「おしっこびっしょりのままじゃ辛いよね? 太ももとか、かゆくなっちゃうよね? だからね、さっきの美晴ちゃんの下着を返してあげようと思うんだ」

 「え……?」

 「でもね、わたしのお友達のリイコちゃんとサヤナちゃんが、美晴ちゃんの下着を隠しちゃったらしいんだ。ざ~んねん」

 「なっ……!?」

 「おっ、気付いた? つまり、お漏らしパンツをはいたままそれを探すのが、今回の刑ってワケ。上手く歩けないかもしれないけど、陸に上がった人魚のように頑張がんばってみてね」

 「ウソ……だろ……!?」

 「ヒントとしては……6年2組の教室のどこか、かな。ここは1階だけど、3階の教室まで行ってね」

 「この……状態のまま……、下着を……探し回る……なんてっ……!」

 「じゃあ、わたしたちはもう帰るから。あとはご自由にっ」

 「ま、待ってくれっ……!」


 『美晴』の足元に手錠のカギをほうり捨て、蘇夜花たちは女子トイレから出て行った。

 

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