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おれはお前なんかになりたくなかった  作者: 蔵入ミキサ
第十四章:風太6歳 美晴4歳
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『風太』&『美晴』 vs 悪党


 『風太』はハンカチで手を拭きながら、トイレから出てきた。


 「ふぅ。風太くん、次どうぞ」

 「シッ……! 静かに……しろ……! 今は……それどころじゃ……ない……!」

 「えっ? 何かあったんですか?」

 「ほら、あれ……見ろ……。喫煙席の……あそこの……テーブル……!」

 「あそこにいるのは……あっ! お、お父さんっ!?」

 「間違い……ないな……。もう一人の……男と……何を……話してるんだろう……」


 『美晴』が隠れている物陰に、『風太』もそっと身を隠した。二人でコソコソと向こう側の様子をうかがいながら、聴覚を()ぎ澄まして、聞き耳を立てた。


 * 


 26番テーブルで継本(つぎもと)流壱(リュウイチ)と話している小太りの男は、どうやらタキハラという名前らしい。タキハラは流壱に敬語を使っているので、立場が下の人間なのだと推測(すいそく)できる。


 「タキハラ、お前の方はどうだよ」

 「いやあ、全然っすね。手垢(てあか)がついていない()となると、この業界の外で探さなきゃならないっすけど……アテがないもんで」

 「じゃあ、なんとしても美晴を連れてこなきゃならねぇんだな? まったく、骨が折れるぜ」

 「ははは……。恩に切ります。継本さん」

 「仕方ねぇな。その代わり、向こうへの接待は、お前がやっておけよ。俺ァ、お偉方(えらがた)のご機嫌取りは得意じゃないんだ」

 「もちろんっす! そこは約束させていただくっすよっ!」


 会話の内容から察するに、二人は何かの取引をしているようだった。美晴の名前も挙がってはいるが、まだ話の全容が見えてこない。

 流壱は「ふぅ……」とため息をこぼし、ポケットから乱暴にタバコを取り出した。それを見ていたタキハラは、すぐに手持ちのジッポライターに火を灯し、流壱の前にサッと差し出した。


 「……で、そんなに偉いんすか? 継本さんが言う、そのお方は」

 「ああ。裏の世界の首領(ドン)・貴族院汚邪留氏だ」

 「へ? 貴族院……?」

 「貴族院(きぞくいん)汚邪留(おじゃる)氏だよ。裏の世界では、絶大な権力(けんりょく)をもってる人物の一人だ」

 「汚邪留(おじゃる)さん……。いやあ、裏の世界とやらについては勉強不足なもんで、存じ上げないっす。どんなお方なんすか?」

 「汚邪留氏は、その名前の通り、平安貴族のようなお方だ。趣味は蹴鞠(けまり)。好きな食べ物は、金福屋の白まんじゅう。自分のことを『マロ』って呼ぶのは、現代日本じゃあの人くらいだろうよ」

 「へぇ、なんだか面白そうな人っすね。俄然(がぜん)興味(きょうみ)が湧いてきたっす」

 「興味を持つのはいいが、あまり失礼な態度はとるなよ? お前や俺の首くらい、汚邪留氏なら容易(たやす)くトばせる。もし怒らせたら、大手事務所でも簡単に潰れるだろうな」

 「ひええっ、マジっすか。やっぱり怖くなってきたっす……」

 「それだけの権力を持ってる人ってことさ。逆に言えば、気に入られさえすれば、業界内での堅い地位を得られる。俺も少し気に入られて、『ジュエル・ジェイル』に力添(ちからぞ)えをしていただいた」

 「今や大人気ロックバンドっすもんね。継本さんがプロデュースしてる『ジュエル・ジェイル』は」

 「汚邪留氏に気に入られる方法は、彼のワガママに応えることだ。……まあ、基本は女だよ。汚邪留氏は、特に年端(としは)も行かない幼い子供に、ご執心(しゅうしん)らしい」

 「それなら、ウチの事務所にいる若い()を、何人か見繕(みつくろ)って……」

 「今までは、それで良かったんだがな。汚邪留氏のワガママが変わった」

 「と、いうと?」

 「『色がついたオナゴには飽きてきたのう。マロ、純白(じゅんぱく)なオナゴを飼いたいでおじゃる』ってな。汚邪留氏の言葉さ。ようするに、ジュニアアイドルや子役なんかの業界に染まったガキには、もう飽きたんだとよ」

 「なるほど。そういうことっすか」

 「今、どこの芸能事務所も、血眼(ちまなこ)になって、汚邪留氏の期待に添える女を探してる。まあ、手垢がついていない素人のガキを手に入れるなんて、合法的な手段ではまず不可能だがな。誰にもバレないように誘拐(ゆうかい)でもするか、裏のルートで身寄りのないガキを売買するか、もしくは……」

 「自分の娘っすね」

 「ああ。そのための美晴だ」


 流壱はタバコをふかし、怪しくニヤリと笑った。


 「へへっ、エグいっすね。継本さん」

 「おいおい、俺に感謝しろよ? 俺が昔、ガキを作っておいたおかげなんだから」

 「もちろんっす。汚邪留さんに引き渡す日まで、美晴ちゃんはこのタキハラが大事に預からせていただくっすよ」

 「そうしてくれ。もし美晴が言うことを聞かなかったら、身体に傷が残らない程度に、殴ってくれても構わない」

 「ぶへへっ。美晴ちゃんの父親のセリフとは思えないっすね」

 「そもそも俺ァ、ガキを作ることには反対だったんだ。美晴って奴は、初めから存在すら望まれてなかったんだよ。まあ、最後に俺の役に立ってくれそうで良かったよ」

 「美晴ちゃんの母親との交渉は、上手くいきそうなんすか?」

 「別れた嫁のことか?」

 「は、はいっす! 継本さんの元嫁……」

 「アイツは今、入院してる。様子を見に行ってきたが、心も身体もかなり衰弱していたよ。つまり、今がチャンスだというわけさ」

 「チャンス?」

 「判断力が(にぶ)ってるんだ。美晴の母親として、責任を果たせているのかどうか……心が揺れている。俺がもう少しその心を揺さぶってやれば、簡単に美晴を手放すだろうよ」

 「ってことは、順調なんすね? さすが継本さんっす!」

 「ああ。こっちは任せておけ。美晴は必ず、あの疫病神から奪い取ってみせる……! ふははっ、ふはははっ!!」


 *


 全ての真相が、明らかになった。

 継本流壱という男は、父親として娘を引き取る気など、毛頭ない。全ては自分のために、娘をどこかへ売ろうとしているのだ。怪しいおっさん同士の会話は実に分かりやすく、小学生の『美晴』と『風太』でさえも、その悪意を聞き取ることができた。

 

 トイレのそばの物陰で、『美晴』は怒りに震えていた。


 「そういう……こと……だったのか……! クソッ……! なんて……胸糞(むなくそ)(わる)い……!」


 奥歯をギリリと噛み締め、(こぶし)に力を入れる。肉体はひ(よわ)な女子でも、闘争本能は立派な男子だ。

 大切な友達をバカにされ、友達のお母さんもバカにされ……『美晴』の血走った目は、徐々に(けもの)へと近づいていった。蘇夜花(ソヨカ)をぶん殴った時と同じ、あの目である。


 「おい、美晴……! おれは……もう……ガマンできない……ぞ……!」

 「トイレですか?」

 「は……?」

 「ガマンできないなら、早く行ってきてください」

 「お前っ……! 何を……フザケたこと……言ってるんだ……!! 今の会話……ちゃんと……聞いてなかった……のか……!?」

 「いいえ、しっかり聞いていました」

 「だったら……、おれが……怒ってる理由も……分かるだろ……!! 絶対に……許さないぞ……!!! ぶん殴ってやる……アイツ……!!」

 「その必要はありません」

 「はあ……!? お前……いい加減に……しろよ……!!」

 「だって、あなたより、わたしの方が怒ってるから」

 「え……?」


 『風太(ミハル)』は静かにキレていた。

 その怒りは、『美晴(フウタ)』の比じゃない。


 「わたし、ちょっとぶん殴ってきますっ」

 「えぇっ……!? お、おい……!!」


 *


 雄叫(おたけ)び。

 (オス)が叫ぶことをそう言うのなら、(メス)が叫んだ場合はなんと言うのか。そんなことはどうでもよくて、『風太』は心の底から湧き上がる怒りを声に変えて、精一杯叫んだ。


 「う゛わ゛あ゛ああああああああーーーーっ!!!!!!」


 喫煙席に座る二人の男は、その少年に気付いた。流壱は振り向き、タキハラは立ち上がった。

 しかし、その少年の頑丈な(こぶし)が、流壱の左頬のそばまで接近しているということまでは、まだ気が付いていなかった。あと10cm……5cm……3……2……1。


 「なっ、なんだコイツっ……!?」

 「継本さん、危ないっすーー!!!」


 ガシャンッ!!!!


 *


 「はぁ、はぁ……!」


 『風太』は、自分が出した想像以上の力に驚愕し、震える拳をじっと見つめた。男子の筋力と怒りのパワーが乗算(じょうざん)されれば、これほどまでの力になるのか、と。

 そして『風太』は、二人の悪党へと視線を移した。小太りのタキハラという男は、まだ状況が理解できずに固まっている。憎き継本流壱という男は、顔面をテーブルに打ち付け、苦痛の表情を浮かべている。


 「痛てて……!」


 鼻血も出ている。


 「なんだよ、この野郎……!」  

 「わたしはあなたを……オマエを許さないっ!! 継本流壱っ!!」

 「あァ!? どこのガキだ、お前は!!」

 「戸木田(ときた)望来(ミライ)の娘っ! 戸木田(ときた)美晴(ミハル)っ!!」

 「は?」


 そいつは美晴だと名乗ったが、流壱は首をかしげた。

 どこからどう見ても、完全に男子。しかも、全く知らない少年だ。美晴ではない。


 「ウソつけっ!!」

 「戸木田美晴……! の、友達っ……!! 今は……!」

 「友達じゃねぇかっ!! そんなヤツ知るかよっ!!」

 「うるさいっ!! もう二度と、美晴とお母さんに近づくなっ! オマエなんか、どこかに行っちゃえ!!」

 「チッ! 美晴の友達だかなんだか知らねぇが、何も関係ないお前こそ引っ込んでろよ。美晴は、俺のところへ来るんだっ!」

 「行かないっ!! わたし、絶対に行かないからっ!」

 「お前じゃねぇよ、クソがっ!!」


 流壱は鼻血を拭いて立ち上がり、『風太』に詰め寄った。

 『風太』もなかなかがっちりした体格の男子ではあるが、やはり、大人と小学生ではまるで違う。ブチ切れた流壱は、『風太』の腕を乱暴にガッと掴み、自分の方へと引き寄せた。


 「ガキが、調子に乗りやがって……!」

 「きゃっ!? は、放してっ!」 

 「なんだ、その反応は……! 女みたいな声出すんじゃねぇよっ! 気持ち悪ぃな!!」

 「うぅっ、痛いっ……! 腕がっ……」

 「警察にでも連れて行けばいいのか? まったく、いきなり他人を殴るなんて、こいつの親はどんな教育してやがるんだ……!」

 「暴力は、悪党(ちちおや)からの教育っ……! いつか……仕返ししてやろうと思ってた……!! 暴力でっ……!!」

 「うっせえな! お前、美晴のなんなんだよ……! 美晴は、お前のなんだってんだよ!!」

 「わたしと一緒に、戦ってくれる人……!」

 「あァ!?」


 気を取られてはいけない。

 しかし流壱は、少年に気を取られて、迫り来る少女の方には、気付くことさえできなかった。もう少し冷静に周りを見て、状況を判断していれば、()()()()は、避けられたかもしれないのに。

 そして再び、雄叫(おたけ)びが聞こえる。見た目は(メス)だが、中身はしっかり(オス)である。


 「う゛お゛お゛おおおああああーーーーっ……!!!」


 ドゴォッ!!


 *


 パンチを一発。

 『美晴』のいつもの技、「腹パン」だ。蘇夜花や界などに放って、何度も失敗している技だが、今回はクリーンヒットしたらしい。

 流壱は『風太』を手放して、3歩ほど後ずさりした。


 「うぐぇっ!! おえぇっ……!」


 ファミレスの床に、流壱がツバを吐き出す。痛みはどっしりと重く、深い。

 流壱がギロリと見上げると、そこには加害者である、(くだん)(むすめ)がいた。


 「美晴か……!? 畜生っ!」

 「全部……聞いた……からな……。さっきの……おっさん同士の……会話……」

 「なんのことだ?」

 「とぼけても……無駄……だ……。お前は……もう……父親じゃない……! 二度と……お母さんに……近づくな……!!」

 「ふはは、なるほど……。まさか、美晴とその友達に聞かれちまうとはな。それなら、もうウソをつく必要はねぇか」


 流壱は、余裕そうに笑みを浮かべると、ズボンのポケットを漁り、車のカギを取り出した。そしてそれを、立ちつくしているタキハラに向かって、放り投げた。


 「タキハラぁ!!」

 「わっ!? な、なんすか? 流壱さんっ!!」

 「いつでも出られるようにしておけ。俺はこいつと、少し話をしなきゃならん」

 「こいつ……って、まさか、この女の子がっ!?」

 「ああ、美晴だ。へへっ、薄気味悪くてブサイクなガキだろ?」


 もうお前は娘とも思っていない。流壱は、そう言いたげな目をしていた。

 『美晴』の手にも、力が入っていく。できることなら、もう一発ぐらい殴っておきたいと、闘志を燃やして。

 タキハラが慌ててこの場を去った後、(いか)れる『美晴』と『風太』を目の前にして、流壱は話を始めた。


 「あー、まさかな。今日はまさかの連続さ。分かるか? 美晴」

 「知るか……!」

 「くくっ、まさかあの美晴に、大層(たいそう)なボーイフレンドができたとはなぁ。美晴のことだから、てっきり学校ではいじめられてるもんだと思ってたぜ」

 「……!」

 「もっとしっかり、(のど)を潰しておけばよかったなぁ。他人とコミュニケーションがとれないように、言葉を話せなくしておくべきだった。今回の諸々は、完全に俺のミスだ」

 「狂ってるのか……! お前はっ……!!」

 「そんな生意気な口が()けるのも、7年前の俺のミス。反省点の多さは、人生に起伏(きふく)がある証拠。……なんて、何かのセミナーで言ってたな」

 「何が……言いたいんだ……よ……! さっき……から……!」

 「いや、小学生のお前らには難しかったか。たかだか11歳のガキが、大人の世界に首を突っ込むもんじゃないってのが、今回の教訓だな。……お前なら分かるか? 美晴のボーイフレンド君」


 流壱が、『風太』に指をさして問いかける。


 「なんなの!? ワケの分からないことばっかり言って!!」

 「ボーイフレンド君よぉ、もし美晴の母親に会ったら、伝えておいてくれるか? 『美晴ちゃんは、お父さんと一緒に暮らすと決めたらしいです』って」

 「は……!? そんな伝言、お母さんに伝えるわけがな」


 その刹那(せつな)


 「じゃあな。伝言を頼んだぜ」


 長く、力強い、(あし)。大人の男の脚だ。

 大人の「蹴り」が、いきなり飛んできた。防御も回避も、できるような速度じゃない。流壱の脚は、『風太』の腹部を綺麗にとらえ、その勢いのまま遠くへ吹き飛ばした。


 「か、はっ!!」


 『風太』の身体は浮き、ドスンと着地してからも、ファミレスの床を転がった。

 『美晴』は、数秒遅れて「蹴り」に気づき、ダメージを受けた『風太』の元へと、駆け寄ろうとした。 

 

 「お、おいっ……! 大丈夫かっ……!?」


 が、その行動すら遅すぎる。

 『美晴』の脇の下から、大人の太い腕が二本伸びてきて、後方へググッと強く引っ張り、そして高く持ち上げた。


 「ふはは、捕まえたぞ美晴っ!!」

 「く、くそっ……放せ……! この……バカっ……!!」

 「女のくせに、なんて口の利き方してやがる。こういう調子に乗ったガキには、大人のお仕置きが必要だな」

 「うぐぅっ……!?」


 あろうことか、流壱は首を絞めてきた。『美晴』はジタバタと藻掻(もが)いたが、大人の男が相手では、女子小学生の肉体ではどうすることもできない。抵抗も虚しく、『美晴』は薄れゆく意識をなんとか(とど)まらせることで精一杯になった。


 (ああ……マズいっ……!)


 力が抜けていく。空気が上手く吸えず、全身の機能がオフになっていく。

 ほんの少しの油断が、最悪の事態を招いてしまった。


 「大人をナメるんじゃねぇよ。クソガキ共が」


 *


 ファミレスの店員が、慌ててやってきた。これほどの騒ぎに、駆けつけないはずがない。

 しかし流壱は、暴力沙汰なんてまるでなかったかのように振る舞い、「いやあ、娘とちょっとケンカしましてね。今はほら、大人しく寝ています」なんて言いながら、背中におんぶしている娘の顔を見せた。娘は何か(つぶや)いていたが、店員にはむにゃむにゃ寝言を言っているようにしか聞こえなかった。


 そして、平然と退店。悠々(ゆうゆう)とファミレスを去る流壱の背中に()われながら、『美晴』は弱々しくかすれた声で尋ねた。


 「どこに……連れてく……気……だ……」

 「黙ってろ。お前はもう、大人を楽しませるための愛玩(あいがん)動物(どうぶつ)だ」

 「動……物……?」

 「ああ。20歳になるくらいまでは玩具(おもちゃ)にされて、後はゴミ山にでも捨てられるだろうな。まあ、それも運命だと思って、受け入れてくれよ」

 「そ、そんな……」


 待ち受けるのは、過酷な運命。(のが)()ぬ、無間(むげん)地獄(じごく)。元の身体に戻るどころじゃなく、ヒト科のメスとして生きる道しか、残されていない。


 「チッ! タキハラのやつ、早く車をよこせよ……!」


 ファミレスの駐車場。

 もしタキハラの車が来て、それに乗せられてしまえば、全てが終わる。そうなる前に、誰かが『美晴』を助けなくてはいけないが、『風太』はすでにノックアウトされてしまった。絶対絶命だ。

 例えば、ここに正義のヒーローが現れて、流壱を華麗(かれい)にやっつけてくれれば、『美晴』は助かるが、そんな都合のいいヒーローなんて……。


 「あの、すいません」


 いた。


 「あァ?」


 背後から、謎の男に声をかけられ、流壱は振り返った。


 「その子は、美晴ちゃんですよね?」

 「そうだが……って、お前は誰だ!? 何者だ!? なんて格好してやがるっ!?」


 なんと、そいつは服を着ていない。身につけているものは、ボクサーパンツとくつ下だけだった。

 そして一番の特徴は、首から上が……鳥。


 「と、鳥人間っ!? なんなんだ、お前っ!! 名乗(なの)れっ!!」


 その鳥人間は、決めポーズをしながら名乗った。


 「はっはっは。晴天に舞う、霹靂(へきれき)のごとき怪鳥!! 私の名は、サンダァーーーーーバァーーード、マンっ!! 最強天才超絶無敵のスーパーヒーローが、お助けに参った!!!」

 

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