反撃の狼煙
「見た……のか……!?」
「見ました!」
「会った……のか……!?」
「会いました!」
「おれも……見た……!」
「風太くんも、ですか!?」
「4歳の……美晴にっ……!!」
「6歳の風太くんにっ!!」
戸木田家のリビングルーム。
『美晴』と『風太』は、テーブルを挟んで対面に座り、奇しくも同じ体験をしたことを語った。
「でも、おれには……6歳の時に……美晴と……出会った……記憶なんて……ない……」
「わたしも、4歳の時に風太くんと出会った記憶はありません」
今の世界には、何の影響も現れていない。二人が過去の風太や美晴に出会ったことは、どうやらなかったことになっているようだ。
「タイムスリップというよりは、“追体験”ですね」
「ついたいけん……? なんだ……それ……」
「記憶の断片を見せられた、ということです。わたしの身体は『風太』なので、脳から引き出される6歳のころの記憶も『風太』のもの。そしてあなたの身体は『美晴』なので、脳から引き出される4歳のころの記憶も『美晴』のもの、なのではないかと。つまり、これも入れ替わりによって起きる現象の一つではないかと思うんです」
「うーん……、説明……されても……よく……分からない……。じゃあ、美晴が……童話の……お姫様に……憧れる……女の子……だったっていうのは……、本当のこと……なのか……?」
「ふえぇっ!? ふ、風太くん、どうし、どう、どうして、そそ、それをっ!?」
『風太』の顔が、ボフッと真っ赤になった。
「どうしてって……。そりゃあ……、おれは……4歳の……お前に……会ったから……」
「恥ずかしい……! なっ、なんだか、とても恥ずかしいですっ! 全部知ってるってことですよね!? ああああぁどうしようっ……! 4歳のわたし、変なこと言ってませんでした!? 絶対言ってましたよねっ!?」
「いろいろ……言って……た……けど……」
「やっぱり! えっと、その、多分それは、『若気の至り』というものなので、ほぼ忘れてくれると嬉しいですっ! 忘れてくださいっ!」
「わ、分かった……。忘れる……」
勢いに押され、4歳の美晴から告白されたことは、とりあえず記憶から消去した。もし11歳の本人に向かって、「小さなお姫様にキスされそうになったぜ」なんて言ったら、面倒なことになるに違いない。
「お前の……言う通りに……、だいたいは……忘れる……けど……。ひとつだけ……忘れちゃ……いけないこと……も……あった……!」
「忘れちゃいけないこと?」
「おれは……お前の……喉が……潰れる瞬間を……見たんだ……! 美晴が……こんな……しゃべり方に……なった……その……瞬間を……!!」
「……!」
「痛みは……おれも……感じた……。苦しくて……息ができなくなった……。声を……出せなくなった……美晴が……泣いてた……ことは……絶対に……忘れたくないっ……!!」
「風太くん……」
「おれが……見たのは……、4歳の美晴と……その家族の……全てだ……!」
美晴と父親と母親。家族三人の関係を理解できた『美晴』は、改めてまっすぐに『風太』を見つめた。
「美晴……の……方は……?」
「えっ?」
「美晴は……何を……見たんだ……? おれの……何を……知った……? 教えて……くれ……!」
「わ、わたしは、6歳の風太くんに会いましたっ」
「6歳の……おれ……は……どうだった……?」
「小さくて、健気で、ちょっぴりやんちゃで……でも、一生懸命だし、真面目だし、すごく良い子でしたよ」
「お、おう……」
いきなり褒められたので、『美晴』は少し照れた。
しかし、今『風太』から聞きたいのは、そういう言葉ではない。
「いやいや、そういう……こと……じゃなくて……さ……。おれの……過去の……中から……お前は……何を……見つけたのか……って……話を……」
「分かってます。わたしが見たのは、リブラちゃん」
「リっ……!!? リブ……ラ……!!?」
「はい。リブラちゃんに会いました」
「まさか……」
5年前の世界に閉じ込めたハズの、誰も知らないその名前。悔やんでも悔やみきれない、失ってしまった友達の名前。赤の他人の、『風太』の口から飛び出した。
「ごめんなさい。わたしなんかが、あなたを知ってしまって」
「いや……。勝手に……過去を……覗いた……のは……お互い様……だ……。おれだけが……文句を……言う……のは……おかしい……。まあ……、美晴に……知られるとは……思ってなかった……けど……」
「風太くんが、過去を隠したがっていた理由は……」
「情けない……から……だよ……。雷太兄ちゃんに負け……、リブラに負け……。リブラの……才能に……嫉妬まで……して……、それで……無駄に……リブラを……傷つけて……。雷太兄ちゃんが……おれを……見放すのも……当然……だよな……。あの日から……バスケットボール……には……もう……二度と近づかない……って……決めたよ……」
「負けて悔しいと思うのは、情けないことじゃないです」
「なぐさめは……いらない……よ……。ただ……悔しいだけじゃ……ないんだ……。お前は……女だから……、男が……真剣勝負で……女に……負けた……時の……気持ちは……分からない……だろうけど……」
「風太くんって、男がどうとか女がどうとか、やたらこだわりますよね。今、性別のことは関係ないと思いますけど」
「あるさ……。おれは……男だから……、女なんかに……負けちゃいけないんだ……よ……。あの時は……本当に……負けちゃ……いけなかったんだ……。たとえ……相手が……どれほどの……天才……だったとして……も……」
「だから、そうして逃げ続けてるんですか? 女のわたしに言わせれば、今のウジウジしてる風太くんの方が、よっぽど情けなくてカッコ悪いです」
「うるさいな……! 逃げずに……向き合え……なんて……、口だけ……なら……好きなだけ……言えるんだよ……! そんな……カッコだけの……前向きな……セリフで……片付けられるほど……簡単な……」
『美晴』がそう言いかけたところで、『風太』は大きく息を吸った。
「風太くんはっ!!!!!!!」
「わっ……!?」
「いつも、綺麗事のハッタリみたいな、自分に酔ったような恥ずかしい言葉ばっかり言ってます!!! まるで、臆病になる自分を、ムリヤリ奮い立たせるみたいにっ!!」
「なっ……!? う、うるさいなっ……!!」
「でも……! 風太くんのその言葉は、自分だけじゃなくて、みんなを安心させるんですっ!! わたしは、いつもヒーロー気取りでカッコつけの風太くんだから、助けてほしいと思ったの!!!」
「……!」
『風太』の言葉は、『美晴』の胸に痛いくらいに突き刺さった。
男としてのカッコのつけ方を、今回ばかりは間違えてしまったかもしれないと、『美晴』はそこで初めて気がついた。
「……」
「……」
また無言。
『美晴』の頭には、「だったらどうすればいいんだよ」というセリフが浮かんだが、それを口に出すことはしなかった。そのセリフこそ、本当にカッコ悪い言葉なのかもしれない。
『風太』もしばらく黙っていた。心境を吐露し終え、一旦落ち着こうとするために、「はぁ、はぁ……」と静かに呼吸だけをしている。
『美晴』はそんな『風太』の前に、一枚の手紙をスッと差し出した。
「なんですか? これは」
「お前の……お母さんからの……手紙……だよ……。病院に……行った時……それを……預かった……」
「手紙……」
「いいか……? 簡単に……説明するから……よく聞けよ……? おれは……病室で……お前の……お父さんに……会った……。お前の……お父さんは……娘を……、戸木田……美晴を……、引き取る……つもり……らしい……」
「お父さんが、わたしをっ!?」
「お前の……お母さんは……もちろん……拒否した……けど……、お前の……お父さんに……色々……言われて……考えが……変わりそうに……なってる……!」
「そんなっ、わたしはお母さんと……!」
「分かってる……! でも……、美晴が……お父さんに……引き取られれば……、美晴は……今の学校から……離れられる……! つまり……イジメが……終わるんだ……!! 生活だって……、今みたいに……苦労することが……なくなるかも……しれない……! お前の……人生が……大きく……変わるかも……しれないんだ……!!」
「……!」
「お前の……家族の……ことだ……! どうするかは……お前が……決めてくれ……! おれは……美晴が……決めたことに……従う……! 考える……時間は……お前が……その手紙を……読み終わる……まで……!」
「風太くんは? 風太くんは、どうするんですか?」
「おれは……今から……自分のことを……一生懸命……考える……! さっき……お前に……言われたことも……含めてっ……!!」
『美晴』は正座に座り直し、ぎゅっと目をつぶった。そして、深く深く、海の底を目指して進む潜水士のように、思考の奥深くへと沈んでいった。何かを見つけるまでは海上に顔を出さないつもりだと、心の中で静かに誓って。
*
同時刻。場所は変わって、やまあらし公園。
今日は月野内小学校の創立記念日。ということで、平日にも関わらず、小学生たちは休暇を楽しんでいる。公園というと、ヒマな小学生たちの絶好の遊びスポットであり、ワーワーキャッキャッと元気な声が公園内に響いている。
「まったく、子どもはいいねぇ。悩みなんてなーんもなさそうで」
それを言うのは、イチゴみたいな頭の女。新米音楽プロデューサーの、端野苺子である。かつては「BASKET★」というガールズバンドのリーダーを務め、音楽プロデューサーである継本流壱とは当時に一悶着あり、今では同業者としてインネンの仲になったのである。
「はあ……。『継本流壱をぶっ潰してやる!』とは言ったものの……」
持っている力が、まるで違う。大手に所属している流壱は、その実績から今や業界でも有名な敏腕プロデューサー。対して、この苺子という女は、弱小「おせんべいプロダクション」に所属する、実績も何もない新米ヘボプロデューサーだ。本来なら、ケンカを売るのもおこがましい相手である。
「でも、バカにされて悔しかったし……! あいつにケンカを売ったことに、後悔はない……! アタシだって、あいつよりも凄い音楽プロデューサーになってみせるさっ!!」
そうだよ~♪ がんばって~♪
「がんばるぞ! ヘボプロデューサーとは言わせないっ!! まずは、音楽の才能がありそうな奴をスカウトして、アタシのプロデュースで超一流の歌手にしてやる! どこかにいないか!? ダイヤの原石っ!!」
ホットケーキ~♪ すてきなケーキ~♪
「なんだよ、この変な歌はっ!! さっきからっ!!」
歌声が聞こえる。
苺子が振り向くと、その声の主はベンチに座っていた。ハート型のエレキギターを持っているが、実際は電源も引かずに弾いてるフリをしているだけの、元気な声で歌をうたう、小学生くらいの女の子。
「こんにちは~♪ ららら~♪」
苺子はそいつに詰め寄った。
「お嬢ちゃん、一人?」
「その頭~♪ イチゴみたいだね~♪ 変なお姉さん~♪」
「そうだよ、これはアタシのトレードマーク……って、普通にしゃべれよ! 歌うなっ!」
「それは無理~♪ わたしは普段から~♪ こういうしゃべり方~♪」
「歌・う・なって!」
苺子は、その子のほっぺたをむぎゅっとつまんだ。
「いふぁいへふ。はなひて。ふつうにひゃへえまふ」
「お嬢ちゃんは小学生?」
「うん! わたしは、春日井雪乃! 小学6年生だよっ♪」
「雪乃か。アタシは苺子。隣に座ってもいい?」
「うん。いいよー」
苺子と雪乃。大人と子どもで、並んでベンチに座っている。
「弾けるの? その、手に持ってるやつは」
「ううん。まだ全然弾けない」
「どうして歌ってるんだい?」
「昨日、ジューンロックフェスっていうイベントに、友達と一緒に行ってきたの。苺子さんは知ってる? 『ジュエル・ジェイル』ってバンドとかが出てたの」
「ああ、昨日の……」
苺子と流壱が言い争った場所が、そのフェスの舞台裏である。表では、流壱がプロデュースしているバンド『ジュエル・ジェイル』がライブをしており、その観客席に雪乃がいたらしい。
「いろんなバンドが出てて、いろんな歌を気持ち良さそうにうたってた。そしたら、わたしも歌ってみたくなっちゃって。だから、この公園でギターの練習をしながら、歌ってたの」
「へぇ。気持ち良さそう……か」
「うんっ! やっぱり、大声で歌うと気持ちいいねっ! わたし、歌うの好き! もっと大きくなったら、友達とカラオケとか行ってみたいかも……!」
「歌うのが、好き……」
苺子は少しばかり、その雪乃という少女に興味を持ち始めた。
「雪乃は、上手くなりたいと思う?」
「えっ? 歌を? ギターを?」
「どっちもさ。上手くなって、みんなに聞いてもらいたい?」
「えへへ……。なれるなら、なりたいかもっ! いつのまにか上手くなってたら、みんなびっくりするよね! 風太くんだって、『雪乃、すごいな!』って言ってくれると思うし……」
「ん? ふーたくん?」
「あっ! いや、と、友達の名前っ! 気にしないでっ!」
「……!」
「と、とにかく練習しなきゃ! 一人でこっそり練習して、みんなをびっくりさせちゃおうっと!」
会話の流れで誤魔化されたが、雪乃が頬を赤らめた瞬間を、苺子は見逃さなかった。
興味は、だんだん確信へと変わっていく。かつて「BASKET★」のメインボーカルだったイチゴ頭の女子高生と、春日井雪乃という少女の影が、面白いくらいに重なっていく。
「伝えたい気持ちはあるか?」
「えっ? な、なに? 苺子さんっ」
「音楽を通して、誰かに伝えたい気持ちがあるかって聞いてるんだよ! 雪乃っ!」
「つ、伝えたい、気持ち? 誰かに? そ、そんなこと、いきなり、言われたって……」
ある。
「ある、けど……!」
「よし、決まりだ! 春日井雪乃、お前に決めた! 事務所……はちょっと遠いから、アタシの家に連れてってやる! ついてこいっ!!」
雪乃は、「ダイヤの原石」と呼べるような才能をもった子ではない。歌の音程だって外れてるし、ギターも弾けない。ただちょっと元気が良いだけの、比較的ふつうの女の子である。
しかし、8年前の苺子だって、そんな感じの女子高生だった。何も問題はない。
苺子は雪乃の手首をガッと掴むと、強い力でグイグイと引っ張った。
「きゃーーーーっ!! 助けてっ!! 誘拐されるーーっ!!」
「わーっ!! バカっ! 変なこと言うなっ!!」
*
「ひぐっ、ぐずんっ!! おええっ、うえうぅっ……!」
「おい……! おいおい……、おいってば……! おいっ……!」
少年は、ボロボロに泣いていた。部屋に響くくらいに嗚咽を漏らし、床がびしょびしょになるくらいに、大粒の涙をこぼした。目は真っ赤に腫れ、鼻の穴は大洪水になっている。
少女は、引いていた。少年の泣き方があまりにも酷いからだ。しかし、無視するわけにもいかないので、なんとか少年の身体を揺さぶって、号泣を収めようとした。
「う゛ううあっ……!! うえうっ、ぐじゅっ、ひぷっ……!!」
「やめろ……やめろ……! なんて……泣き方を……してるんだ……! 美晴……! おれの……顔で……!」
「ごゔぇんなしゃいっ……!! 風゛太゛ぎゅん゛っ……! えも、でもっ、おぐじゅっ!! おがあ゛ざんっ……! あがあ゛ざん゛のじゅるっ……! てばみっ……!!」
「ほら……、ティッシュっ……! これで……顔全体……を……綺麗に……拭けっ……!!」
「あぴっ……! あぴまごう、ございあしゅっ……! チーンッ!」
『美晴』はティッシュ箱から何枚もティッシュを抜き取り、『風太』の顔をゴシゴシと拭いた。
「何が……あったら……、そんな……泣き方に……なるんだよ……。過去最低……の……顔だぞ……。おれの……身体で……、二度と……そんな……風に……泣くなよ……」
「す、すみませんっ。ぐすっ……」
「手紙……か……? 手紙の……せいで……そうなった……のか……?」
「はいっ! わたし、お母さんにとても愛されて育てられてきたんだって、すご、く、感じてっ、泣けてきっ、ひぐっ……! うぅっ……! わたしは、とても、幸せっ……でっ……!」
「泣くなって……!! そんなに……泣けるのか……? ちょっと……おれにも……見せて……くれよ……」
『美晴』が手紙にそっと手を伸ばすと、『風太』はその手をグーで思い切り殴った。
「いてぇっ……!! 何……するんだっ……!」
「ダメっ!! この手紙には、わたしのお母さんの温かい愛情が詰まってるの!! 風太くんにも見せられませんっ!! 温もりが逃げちゃうからっ!!」
「わ、分かった……。悪かった……よ……」
「はぁ、はぁ……。お母さんっ……!」
『風太』は手紙を胸に抱き、ぎゅーっと抱きしめた。
そんなペラペラの紙が熱を発するわけがないのだが、『美晴』はそれを指摘しなかった。
「とにかく……! これで……分かった……だろ……。おれたち……が……どうするべき……か……!」
「はいっ! わたし、お母さんに今の気持ちを伝えたいですっ!」
「でも……、今の……お前は……風太……だ……。だから……、美晴の……おれが……協力……してやる……。美晴の……お母さんは……おれにとって……も……大切な人……だから……、あの人は……絶対に……悲しませたく……ない……!」
「よ、よろしくお願いしますっ!」
「ただ……、その後は……お前に……協力して……もらうぞ……。おれは……今……美晴……だから……、風太が……必要……なんだ……」
「は、はいっ! 風太くんは、何をするつもりなんですか?」
『美晴』はフッと笑うと、少し冷や汗をかきながら、覚悟を決めた。
「“雷鳥”を……倒す……! 今日……おれは……雷太兄ちゃんに……勝つ……!!」
カッコつけ男の、臆病なハッタリだ。やっと、いつものヤツが出た。もう、ウジウジの卑屈地獄からは抜け出した。
「あっ、あははっ……!」
なんだか安心して、“雷鳥”に勝てる見込みなんて全くないハズなのに、『風太』は思わず笑ってしまった。
「協力……して……くれるよな……?」
「はいっ、もちろん! バスケットボールの勝負、ですか?」
「いや……。バスケットコート……には……立たない……約束だ……。だから……、雷太兄ちゃんには……別の勝負を……挑む……!」
「よ、よく分かりませんけど、高校生に勝てるんですか?」
「勝つさ……! 必ず……!」
『美晴』の根拠のなさそうな自信に、『風太』はゴクリと唾を飲み込んだ。
(やっと、戻ってきてくれた……! わたしが一番見たかった、風太くん……!!)
そして『風太』も、“雷鳥”が言ったあの言葉を、『美晴』に伝えた。
「『減らず口ババア』」
「ん……?」
「風太くんのお兄ちゃんが言ってた、『減らず口ババア』って、誰のことですか?」
「それは……母さん……だよ……。おれの……母さん……だ……。雷太兄ちゃんは……母さんの……ことを……、いつも……『減らず口ババア』って……呼んでる……」
「そう、ですか。優しい風太くんのお母さんを、そんな風に……!」
『風太』も『美晴』と同じくらい、燃えてきた。
「わたしにとっても、風太くんのお母さんは大切な人です。悪口なんて言わせない。……行きましょう、風太くん。わたしも“雷鳥”を倒したいっ!」