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勇者様は裏切らナイ  作者: 世葉
第二幕 夕闇の勇者と篝火の古竜
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幕間 その32 ドワーフ

 ドワーフは主に鉱山師として各地を放浪し、一つの場所に留まらず掘り尽くしたらまた次へ、新たな鉱脈を探し求める種族である。その生活はまさにモグラのように地中深くに潜り込み、岩盤すらも砕いて前進する。地の底を己が住処とするこの短躯の種族は、その過酷な生活に耐えうる強靭な体と、決して折れない精神力を持っている。

 彼らの生活は常に鉱脈と共にある。独自の嗅覚で探し当てた土地に根付くと、一心不乱に土を掘り、岩を砕き、求める鉱物を掘り当てる。だが、やがて鉱脈が枯れれば、彼らは何代も築き上げた居住地を惜しげもなく捨て、新たな鉱物を求めてまた旅立つ。彼らが去った跡には、まるで靴屋が見た一夜の夢のように、そこにいた証だけがただ残される。

 そして彼らは、ただ採掘するだけでなく、同時に鍛冶師としての顔を持つ。彼らは、掘り当てた鉱石を精錬し、卓越した技術であらゆるものを生み出す職人でもある。武器や防具はもちろん、工具や装飾品、時には緻密な機械時計すらも作り上げる。

 世界各地に散らばる彼らは、共通の習性を持ちながらも、その土地ごとの環境や資源に応じた独自の技術を編み出してきた。火山地帯に住まう者は灼熱に耐える精錬法を極め、極寒の山脈に根付く者は氷を砕く刃を鍛え上げる。そしてそれらの技術は、極稀に発見される濃い魔素を放つ鉱石と融合し、魔道具として特別な力を付与される。

 他種族では到底耐えられないような環境下で作り上げられた彼らの武器は、単なる切れ味や耐久性という点だけでは計れない力を秘めている。ドワーフ製の武器にはその証と言えるルーン文字が刻まれ、使用者の込める魔素に反応し光輝き、真の力を解放するといわれる。しかし、それゆえにそれらの武器は使い手を選ぶ。その武器の真の力を引き出すには、相応の使い手であることを要求される。そしてそれゆえに、流通する数も多くない。

 しかし、高い武器の評価に反して、ドワーフの泥と汗にまみれた姿を指して、毛嫌いする種族が多いのもまた事実である。勝手に土地に住み着いて土を掘り、資源を奪い去っていく彼らの生き様は、定住を是とする者たちには、時に害をもたらす者とさえ映る。その風貌と民族性から、忌み嫌われることも多い種族である。

 だが、あるドワーフは誇り高く笑う。

「ワシらを見りゃ、大抵の奴は鼻をつまむ。煤臭いだの、勝手に入ってくるなだの、文句を言う奴もおる。

だがな、ワシらが作った剣をひと振り渡せば、途端に目の色を変えよるよ。もっと寄越せだの、いくらでも払うだの、な。そこでな、それと交換にワシらをここに住まわせろと言えば、大抵の奴は黙って首を縦に振るもんさ。ガッハッハッ!」

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