幕間 その27 呪文
魔子が生み出す魔素を対価に六属性精霊と契約して魔法を生み出す。呪文とは、この魔法の基本原理において、エレメントに術者のイメージを伝達する極めて重要な手段である。このイメージ伝達を円滑に行うため、術者は様々な言葉を用いて呪文を作り上げる。精霊に祈り、感謝し、賛美する心を込めて、エレメントと独自の友好的な関係を築くのである。特に繊細な操作を必要とするような魔法では、微妙なニュアンスを上手く伝えることが鍵となるため、術者はとても個性的な呪文を完成させることが多い。
ただ単に火をつけるという基本的な魔法であれば、術者とエレメントの相性や意思疎通が噛み合っていれば、呪文を唱えることなく魔法を発動することも可能である。極めて高度な術者と非常に相性の良いエレメントならば、より高度な魔法を無詠唱で発動することもできるだろう。
一方、魔子回路とは内部に魔石を用い、イメージ伝達を代替することで、術者とエレメントの相性問題を解決する技術である。簡単な魔法出力を画一化し、呪文を必要としない便利さのある魔子回路には、その反面、威力の調節や複雑なことはできない。これはあくまで、魔法の一般化を目的に発明されたものだからである。魔子回路を通しても魔法発動に必要な魔素は変わらないし、術者の魔法が強化されるわけではない。
魔法使いの戦闘において、呪文の読み合いは重要な戦術となる。呪文には繰り出される魔法の属性、威力、作用などの情報が込められており、その読み合いは心理戦の一面を持つ。特に高度な魔法使いの戦闘では、威力はもちろんだが、臨機応変な対応力が勝敗を分ける。相手の裏をかき、想像を超えるような魔法を必要とするとき、呪文を用いた意思伝達はむしろ理想的であると言えるだろう。




