幕間 その11 ダークエルフ
その昔、アルオン大陸の西部に広がる大森林の中で、エルフは静かに暮らしていた。エルフはその平穏な生活を守るため、いくつかの戒律を作り、それを頑なに守る生活を千年に渡り続けていた。エルフはアルオン大陸の種族の中でも特に精霊に愛された。その偏愛から魔法に優れ、精霊の持つ特性を色濃く反映した長寿の種族であった。
そんな連綿と続く生活の中に、いつしか外から人などの他種族が入り込むようになる。すると、彼らの影響を受けて、外の世界の魅力に駆られ、戒律を破るエルフが現れるようになった。多数の保守主義の中で生まれた、少数の進歩主義は対立し、ついには流血の衝突にまで発展した。しかし、少数派が敵うはずも無く、彼らはタワーの魔法障壁を挟んだ森の外の砂漠へと追いやられる結末を辿る。
母なる森を追われ、清らかな水も、そよぐ風も失った彼らは、砂漠の地で生き残る為、森への信仰を捨て火と砂を愛するようになる。しかし、砂漠の神は貪欲で、その寵愛を受けるには、多くの仲間の犠牲と、灼熱に焼かれた肌が必要だった。ダークエルフのダークとは太陽に愛された褐色の肌を指す。
この世界の精霊に愛された種族は、反属性を真二つに、反対の特性を色濃く反映した種族に分岐した。エルフとダークエルフの対立は、その歴史的経緯を超えて、この世界の原理によって絶対に埋まることのない亀裂となった。




