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小太郎さん、魔法使いになる






氏名 犬神雅世

年齢 23

レベル 107

職業 ?

スキル 魅了(ただし、獣に限る)

固有スキル 黄泉がえり

称号 獣に愛されし者

仲間 小太郎 チェルシー(ぬこ)※別行動中

従魔 緑鳥※別行動中


所持金 10,000(最低限の生活が可能)



 その夜、雅世はタブレットの前で唸っていた。


 パッと見た感じの表記は少ないが、タップすることで次から次へと情報がポップアップされる。ツリー構造になっていて、最下層まではとてもじゃないが読破しきれそうにない。



――――スキル 魅了(ただし、獣に限る)



 日中にホームセンターで作動したと思われるこのスキル。

 一階層にある解説は以下の通りだ。



→ 獣とは、広義の解釈として四つ足の哺乳類型を指す。


二回タップすると……


→→ 魅了レベルを上げていくことで対象が拡大され、獣以外の生物を魅了することも可能である。ただし、同族に対しての効果は様々な制約が課せられる。



 こんな風にさらに詳しい解説が表示される。

 さらにタップしていくと時折スキル的な専門用語が混じるようになり、難解な表現となっていく。とても一般人が一見で把握するのは難しい内容だ。

 いったい誰に対する解説なのだろう。


 ちなみにレベルの項目をタップすると、経験値やらスキルポイントやら事細かに表記されて何かの仕様書のようだった。

 

 あと、職業欄が”?” になっているのが非常に心に刺さる。

 無職である自分に遠慮して濁してくれているのだろうか。

 いや、でもこういう場合、大抵は戦士とか剣士とか、魔法使いとかファンタジーな職業のはずだ。

 何も適性がないのか、もしくは中心核コアも決め兼ねているのか。そこのところはっきりと聞くべきだった。

 

 職業欄をタップするか、するまいか、しばらく悩んで先送りにした。


 とりあえず大事なものだけをピックアップしてトップ画面に表記してくる仕様なのだろうし、深入りする必要はないかな、というのが雅世の出した結論だった。

 

 それよりも小太郎だ。

 



「小太郎さん、魔法使いになっちゃったんだね」



 足元に蹲る小太郎の毛並みがつやつやと輝いている。あれだけ草原を歩き回ったというのに汚れひとつ見れないし、埃っぽくもない。


 それは先程、玄関でのできごとだった。

 

 犬小屋とゲージを再び購入するまでどうしようか、と考えあぐねていたところ、突然小太郎が光の粒子に包まれたのだ。



――――仲間の小太郎が皆に浄化魔法を発動させました。



 そんなアナウンスと共に強制表示されたタブレットの一部が点滅、そこには以下のような注釈が。



――――小太郎※洗浄中



 と同時に、小太郎だけでなく、自分の身体もすっきりとした気がして驚く。

 皆、というのはどうやら雅世も入っているらしい。仲間内に発動させたらしかった。

 ダンジョン内で発動させたら、チェルシーも洗浄されるのだろうか。


 小太郎の気遣いに感謝の言葉を伝えるが、やはりそこは人間。女子。

 綺麗になってもお風呂に入らずにはいられなかった。

 

 とてとてと小太郎が歩いた足元の床はまったく汚れていない。

 素晴らしい。

 これ、お風呂に入れる手間が省けるのでは?

 と地味に期待した。あれはなかなかの労力なのだ。もちろん、小太郎のためなら夏場でもがんばるが、回数が減るに越したことはない。



「ニュースでは異常なし、か」



 その後はひと通りネットニュースを巡回してみる。

 が、ダンジョンについての記載は見当たらなかった。かなりニッチな話題を提供しているサイトも見たが、こちらも収穫なしだ。


 秘匿されているのか、それと分からず放置されているのか。

 雅世の庭から通じるダンジョンだけが地球上にある唯一のダンジョンなわけがない。それはタブレットの情報でも確認済みだ。



――――《獣の楽園》ダンジョン挑戦中



 雅世の状態を表すアイコンがタブレットに浮かび上がっている。

 ダンジョンから出ても表示が消えないところを見ると、一度挑戦した者はそこを踏破するまで他のダンジョンには挑めないのではないか? ということだ。


 そのポップアップを開いてみる。



――――近辺にあるダンジョンの数:3



 さらにタップしてみるが、それ以上の情報はないようだった。

 近辺というのがどれくらいの規模なのかは分からないが、まさか銀河系内というわけではないだろう。かと言って、ご近所徒歩圏という可能性は低い気がするし、国内ではないかと考えている。

 

 そうなると日本国内に3つ、いや《獣の楽園》含めると4つということか。世界規模でみるとなかなかに多い数なのかもしれない。


 なぜ、自分がダンジョンに巡り合ったのか、という大前提の疑問は考えすぎて頭が痛くなったので考えるのを止めた。

 今ではこの奇跡が他者に渡らなくて良かったとさえ思える。



「毒されてきてるのかなぁ、ダンジョンに」



 ひとりごち、小太郎の毛並みを撫でる。

 今夜はよく眠れそうだ。







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[一言] 続きが読みたいです。更新を楽しみにしてます
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