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戦え乙女

 アイドル―歌や踊りなどのパフォーマンスで人々を魅了し、夢や希望を与える存在。

 多くの少女たちが東京ドームなど華やかなステージでパフォーマンスすることを夢見るが、それを叶えられる者はほんのひと握りの厳しい世界である。

 ここにもそんなアイドルを夢見る少女がいた。

 「わー、キレイ」

 小さな女の子がテレビに映るアイドルのパフォーマンスを見ながら、つぶやいた。

 人々を圧倒する歌唱力、魅了するパフォーマンスに目を奪われた女の子はアイドルの虜になっていた。そして、幼いながらに大人になったら、自分もアイドルになると心に誓うのだった。

 「ふー、今日のライブは最高だったな。」

 女の子は夢を叶え、アイドルになっていた。

 「でも、有名になるには、もっと頑張らないと」

 アイドルにはなったものの、知名度は全く無く、地下アイドルとしての仕事が数件あるものの、幼い頃に夢見たアイドルの姿とはかけ離れたものだった。それでも、全力でパフォーマンスし続ければ、いつか夢見たアイドルのようになれると思っていた。

 しかし、それから数年経っても、陽の目を見ることは無かった。そんななか、あるライブの帰り道にそれは起こる。

 上下スーツでハットを被った不思議な雰囲気を持つ男性が彼女の前に現れた。そして、彼女に問いかける。

 「今のままで満足かい、もし、君がアイドルとして高みを目指すなら、私が協力しよう」

 会ったこともない人に声をかけられただけでも、混乱するのに、見るからに怪しい雰囲気100%の男に声をかけられ、驚きと恐怖のあまり、言葉を失ってしまう。そして、逃げようにも体がすくんで動かない。

 そんな極限状態の中、彼女の頭の中は男の言葉でいっぱいだった。

 「その話、本当ですか?私はアイドルとして高みを目指せますか?」

 彼女は藁にもすがる想いだった。夢だったアイドルにはなれたものの、彼女が夢見たアイドル像とはかけ離れたものだった。理想に近づこうと努力をしたが、報われず、アイドルの道を諦めようとしていたからだ。これをラストチャンスにしようと即座に決意した。

 「ああ、本当さ、君にその覚悟があるのなら」

 男はそう言うと不敵な笑みを浮かべる。

 「あの、枕営業とか、そういう怪しいのじゃないですよね」

 男の怪しい雰囲気を感じ、不安になりながらたずねる。

 「大丈夫さ、そういうのではないよ。ただ、僕が与える試練は普通じゃないと思うよ」

 男の言動は怪しい感じではあったが、彼女は決断し、答える。

 「アイドルになれるのなら、なんだって頑張ってみせます。一度は諦めかけたけど、必ず、このチャンスを掴んでみせます。」

 「わかった。君のその覚悟、しっかりと受け取った。じゃあ、早速、始めようか」

 「ええ、これからですか?もう、こんな時間ですよ」

 「善は急げとよく言うだろう。早く、行動しなければ、チャンスを失ってしまうよ」

 彼女は驚いた様子だが、男は無視し、話を進める。そして、どこからか、チョークを取り出し、道路に魔方陣のようなものを書き始めた。描き終えると、今度は彼女に魔方陣の上に立つよう指示する。そして、彼女がその上に立つ。

 「これで、何が起きるの?」

 そう言いながら、魔方陣の上に立った瞬間、光を放ち、彼女は光の中に吸い込まれていく。吸い込まれた衝撃で意識を

失った彼女が目を覚ますと、そこは辺り一面の原っぱだった。建物などはなく、スマートホンの電波も圏外になっている。遠い山の向こうに煙が上がっているのが、かすかに見える。どこに行けばいいのか、わからないため、彼女はそこを目指して、歩き始めた。

 1時間くらい歩くと、ようやく煙が上がっていた場所に着いた。そして、彼女は驚いた。

 そこには、何万人もの甲冑を着た侍達が戦っていた。まるで、教科書やテレビで見た戦国時代さながらだった。

 そこに、彼女をこの世界に連れて来た張本人であるハットを被った男が現れた。

 「驚いてるようだね。そう、ここは群雄割拠の戦国時代、ここで君に試練を受けてもらう。」

 「いやいや、試練て、その前にタイムスリップできるなんて、おじさんは何者なの?」

 驚きの連続に思わず、ツッコミを入れる彼女。

 「おじさん…」

 おじさんと言う言葉に大きなダメージを男は受けた。それでも、気を取り直して、言葉を続けた。

 「タイムスリップは私の目的のために編み出した秘術だゃよ。私はね、歌にはすごい力があると信じているのだよ。君も知っているだろうか。松田聖子、中森明菜などの歌姫を。彼女達の歌に人々は夢中になった。そして、私は考えた。世界から争いを無くすためには歌のような大きな力が必要だと。もし、君に覚悟があるのなら、この時代の争いを無くすこと、それが君に与える試練だ。」

 歌で争いを無くすって、そんな大変なこと、本当に出来るの?アイドルになりたいとは思ったけど、こんなことになるなんて、これから、私、どうなっちゃうの―。

 彼女の心の声が爆発していた。

 果たして、彼女は真のアイドルになり、現代に戻ることが出来るのだろうか。

 

 

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