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デビルさん  作者: おかき
第一話
9/83

古武道 大豪院流合気道術−1


 時が経つのは早いもので、放課後


「じゃーねー、ばいばーい」

「また明日ねー、咲ちゃーん、カナタくーん、チェリー」

 運動部が賑わい始めているグラウンド

 校門を出て駅へ向かう数人のグループと別れ、カナタ、チェリー、そして咲は、徒歩での帰宅だ


「今日からは3人で帰れるね」

「いつも2人で帰っとるん?」

「毎日ってわけじゃないけどね」

「ふーん

 それで2人が付き合ってへんゆうのも信じられへんわ」

「「ないない」」


 身長172センチのカナタ

 150センチないチェリー

 1人セーラー服の、160センチの咲

 凸凹トリオだが、見た目だけなら誰もが振り返る


 チェリーとカナタは、学校から歩いて10分ちょっとのお隣同士

 咲は少し離れるが、そこから5分もかからない場所に自宅があり、現在、敷地内に道場も建設中というバブルぶりである


 すっかり仲良くなった彼女達(1人は戸籍上は彼)は、通学途中にある小さな公園に差し掛かった


「咲ちゃんが一緒なら、霧崎弱男が出ても安心だね、カナ」

「俺達、制服じゃないだろ」

 何気なく言ったチェリーの言葉に、咲の表情が硬くなるが、それは一瞬


「どうかした?咲ちゃん」

 チェリーはカナタの方を向いていた

 咲の顔のこわばりに気づけたはずもない

 だが、チェリーは咲に聞いた


「ん、んんー

 偶然やろうけど、一昨日、近くで弱男が出たやん

 惜しいことした思ってな」


「まだ制服代弁償させようとか思ってるのかよ

 警察に任せとけば、そのうち捕まるよ

 もしかして、弱男捕まえるために東京に来たんじゃないだろうな?」

 咲の制服が切られて反撃した事件以来、近畿地方での弱男の犯行がなくなっている

 一部では、咲にびびって逃げたとも噂され、御守り代りに、咲のブロマイドを持ち歩く者もいた


「でも、実際は危ないよ

 ナイフ持ってるんだし」

 チェリーが心配するように、傷つけられた者がいないとはいえ、それは“まだ”であって、いつ犯行がエスカレートするかはわからない


「アイツはたぶんやらん

 服を切ることが目的や

 理由はわからんけど」


「どうしてそう言える?」

 下校中の学生が話す内容ではないが、咲の確信めいた言い方に、カナタは食いつく


「一昨日の事件、聞いたやろ?」

 2人が軽く頷く


 一昨日の事件

 近くの高校の生徒の下校途中

 制服を切られた男子学生は、臆することなく犯人を追いかけた

 しかし、途中で見失ってしまったらしい

 この男子学生は、陸上部の短距離のエースで、都大会でも決勝に残るほど足に自信があったのに


 公園の入り口にある、フェンスによしかかる咲

 チェリーは、小さなキノコの形をした門に腰掛けた


「捕まらへんねん、アイツ

 ちょっと普通やない

 いきなり現れて、いきなり消える」

 少し反動をつけて、フェンスから離れた


「カナっちゃん

 ちょっと黙って立っててや」

 カナタに近づき、左腕をポンと叩く


「うおっ!」

 呆然と立っていたカナタは、いつの間にか自分の顔の横に、咲のつま先があることに気づき、思わず声をあげた


「なっ?

 見えへんかったやろ」

 2人に身長差があるにも関わらず、柔らかな右脚は、綺麗に首すじへのハイキックの形で入っていた


「全然わかんなかった」

 カナタは少し遅れて背筋に走る何かを感じた

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