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デビルさん  作者: おかき
第一話
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転校生−4


 黒板に書かれた名前を見た瞬間、カナタを除いたクラスメイト全員に衝撃が走った


 一度聞いたら忘れないほど珍しい苗字

 つい1年前に全国を駆け巡ったニュース

 しかも、それと同様の事件が昨日、隣の高校でも起こっているのだから


「じゃあ入って」

 米男(30歳)が教室の扉を開けると、そこには、セーラー服に身を包み、はにかみながら小さなカバンを両手で申し訳なさそうに持っている女の子が立っていた


 静まり返る教室

 既に顔を赤らめている男子生徒も多数いる

 女の子は、ゆっくりと教室に入り、チラリと黒板に書かれた自分の名前を見た


 そして


 おもむろに黒板消しを持ち、大豪院の文字を消して、代わりに“白鳥”と書いた


「大阪から越して来ました

 白鳥 咲です

 よろしくお願いします」

 ぺこりと頭を下げ、可愛らしく挨拶をした


「うぉー」

「きゃー」

「かわいー」

「まじでー」

「いやっほぅー」

 時が動き、止まっていた思考が回復した生徒達は、思い思いの言葉を口にする


「いやいやいや、君は大豪院君でしょ?

 転校初日に嘘をつくって、ど、ど、どういうこと?」

 米男(独身)も、余りの出来事にどもり気味である


「いやいやいや、センセな

 大豪院なんて固いやん

 ウチは今日から“おしとやかな白鳥さん”で行くことにしたねん

 せやから、この微妙な乙女心を汲んだってや」

 代々続くファミリーネームを、微妙な乙女心で変えてしまうという暴挙に出たにも関わらず、一切悪びれることなく語る咲


 米男(恋人募集中)は無視することにした


「ということで、今月のクラス委員は誰だったっけか?」


「はーい」


「桜か…ハァ」


「えっ?担任がため息ってどういうこと?

 なんだか傷つくんですけど」


「いや、今のは故郷の母親を思い出しての、ハァだ

 それ以外に特別な意味はないから、教育委員会へ連絡しようとかするな

 とにかく、えー、天道が一つ席下がって、とりあえずそこに大豪院君が座ってください

 そのうち席替えするから

 学校の施設とか、細かいことなんかは、クラス委員の桜…に聞いて

 いやだから、今の間にも意味はないから、先生を動画で撮らない

 天道、フォロー頼むな

 アイツは優秀だから、アイツに何でも聞いてください

 だから、桜、先生に対して変な呪文を唱えない」


「あはははは

 まいったな

 初っ端に大阪の笑いとったろ思っとったけど、逆に一本取られたわ

 東京のセンセも案外おもろいんやね


 じゃあ、残り1年ちょいやけど、皆さんよろしくお願いします」

 今度は自分らしく

 飾らない笑顔で頭を下げた咲に、女子生徒は好感を覚え、多数の男子生徒は恋を覚え、一部の男子生徒はコーカンを押さえた


「あっ、カナっちゃんとは、昨日話してるんで、大丈夫です、センセ」

 早くも男子生徒の憧れに変わりつつあった咲は、爆弾を投下しながら新たに用意された席へ向かう


「なんだ?知り合いか?

 じゃあ大丈夫かな

 みんなも仲良くしてあげてください

 ということで、朝のHRは終わります

 今日も1日、勉強頑張ってください」

 一部の男子生徒の視線がカナタに突き刺さっているのを見ぬふりして、米男は教室から出ていく


「と見せかけて、一限目はこのクラスだったな」

 よくあるお約束


「ま、最初はみんなソワソワして授業にならんだろうし、他の先生に迷惑かけてもあれだから、絶対に騒がないと約束するなら、自習にするけど?」

 話の分かる大人を見事にこなしている米男

 この学校での生徒からの人気は、相当に高い

 何故、恋人がいないのかは、それとはまた別の話

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