表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デビルさん  作者: おかき
第一話
17/83

霧崎弱男−3


「チェリーちゃんは、将来の夢とかあんの?」

 大学へ向かう電車の中

 つり革につかまれるカナタと咲を、恨めしそうな目で見つめているチビチェリーに向かって、そんな質問をした


 現代の日本の社会情勢からいって、高校2年の冬の時期に、具体的な将来の目標が決まっている者は、限りなく少数派であろう

 夢を持てなくなってしまった日本

 カナタのように模索している者はまだいいが、将来に希望を持っていない若者も多い


 質問した咲自身としては

 とりあえず3年後のオリンピックやろ、ほんで、世界一

 その後言われても、まだわからん

 と、どこまでを将来の目標といえばいいのか、はっきりしている訳でもない


 どこの大学に進むのか、どこの企業に就職するのか、それ自体が目標となってしまっては、少し哀しい話ではある

 咲にとって未知の生物であるチェリーに、“目標”ではなく、“夢”と聞いたのは、そんな気持ちからだ


 一時期、有名人になってしまった咲には、いくつもの芸能事務所からオファーがあった

 あまり詳しくもなく、興味もなかった咲は、学生のうちはやらん、と全て断り、金儲けのチャンスが…と、父親に嘆かれた


 この子は頭もええし、見た目も可愛い

 アナウンサーとかなって、ニュースとか読んでくれたら、日本中がほっこりすんのに

 あかんか…暗いニュースは似合わんもんなぁ

 タレントさん、お笑い芸人とかもアリやな

 たくさんの誰かを幸せにするっちゅうことが、この子に向いてる気がするわ


 と、考えたりもした

 しかし、チェリーの回答は少し斜め先をいく


「ケーキ屋さん♪」

 満面の笑み

「あと、パン屋さんと、お菓子屋さんと、お花屋さんと、本屋さんと、幼稚園の先生とぉ…」


「園児か!」

「チェリー、確かにそれも夢かもしれないけど、高校生が公共の場でそういうこと言っちゃいけないよ」

 咲もカナタも、幼稚園児に聞いた『大きくなったらなりたいものランキング』を堂々と発表するチェリーに、衝動と冷静なツッコミをいれる


「でも、諦めたらそこで試合終了ですよって、昔の偉人さんが言ってたよ」


「そんなに昔じゃないし、それ、この前俺の部屋から持ってったマンガだよね」


「この子に聞いたウチがアホやったんやろか」


「でもさー、子供がいっぱいの幼稚園でー、ケーキとパンとお菓子とお花と本が売ってたら楽しいじゃなーい」


「そんなに複合施設のオーナーだとは思ってなかった」


「そうなってくると、認可が下りるかが問題やね」


 たとえどんな客を乗せたとしても、電車は、大学のある駅へと、時間通りに到着する

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ