古武道 大豪院流合気道術−6
リンダ襲来である
一人娘の椿がハイスクールを卒業し、日本にやってきて暮らし始める
久しぶりの娘との暮らしを時空は喜んだ
10歳まで日本にいた椿は、8年使ってなかった日本語にも、かろうじて苦労はしない
そしてフォーリンラブ
門弟であった目隠 鮪と、なにをどうしたらそうなるのか恋に落ち、すぐさまご懐妊
一悶着ありながらも、鮪氏を正式に大豪院家の婿に迎える
そして、孫可愛さに、リンダがアメリカからやってきたのである
kill meされては敵わないと、ついに時空は動き始めた
大豪院流合気道術を世間に広め、せめて暮らしを安定させるために、手品を習った時以来の、血の滲む様な努力をする
だらしのない生活にピリオドをうち、町内会の会合に顔を出し、近所の消防団にも積極的に参加
寒い夜にはこたつで丸くなり、真夏の夜には、スタイリッシュでキレのある盆ダンスを披露
そして、公園で太極拳に勤しむジジババ相手に、産まれたての孫をダシに使っての懐柔策
果てには、夕方、生中継のお天気ニュースの後ろで、門下生募集中の横断幕を掲げたりしたのである
「基本、アホやねん
せやけど、ジジイに教え込まれた大豪院流は強い
そんなウチが、背中切られるまで気づきもせんとか、陸上選手から逃げ切るとか、よう考えたらおかしいねん
それに、本気で蹴ったんやで
首、千切ったろ思て
それをあいつは肩で受けおった
ほんまに素人なら、普通でけへん」
首千切るとか、恐ろしいことを平然と言う咲だったが、ありえそうだな…とカナタには思えた
「バトルジャンキーだな」
「んなことない
ウチは可愛い白鳥さんやで」
「でも、危ないことしちゃダメよ、咲ちゃん
そろそろ帰ろ」
お腹がすいてきたチェリーに促されて、家路につく3人
こいつが制服で通う理由は、自分が獲物になるつもりなんだな、と思うカナタ
でもこの広い日本で、2回同じ被害に遭うことはないだろうな、とも思えた
若いカナタはまだ知らない
可能性とは、無限に広がり、常にゼロになることはない
時に、天使と悪魔の両方が囁き、そこには善と悪の境界線などは存在しない
そして
それは
当然、カナタとチェリーにも同様に言えるのだと言うことを