古武道 大豪院流合気道術−4
あれ?みんな黒人さんや…
移民船の貨物庫に潜り込み、海を渡った時空
アメリカだと思って踏み出した大地は、ブラジルだった
そう
中学校しか出ておらず、基本ノープランな時空は、馬鹿だった
一緒に渡ブラジルした日本人に、半年お世話になり、少しの言語を学ぶ
…ポルトガル語を
野性味溢れる時空は、手にしたアメリカ大陸の地図だけを頼りに、徒歩で北へ向かう
太陽を背にさえしていれば、いつかはアメリカだと信じ、一歩、また一歩
…ここは南半球だった
マチュピチュに辿り着いた時空は、ようやく事の重大さに気づき、少し泣く
小さなジャパニーズに優しくしてくれた天空の部族に別れを告げ、今度こそアメリカへ
不法入国もなんのその
いくつもの国境を越えるうちに、さらにたくましくなっていく時空
1年をかけてアメリカへ入った時空は、またしても戸惑いを覚える
言葉がわからん…
英語だと思っていたポルトガル語が通じず、なんとか食い扶持を探しながらアメリカで暮らし始めた
この頃のことを、のちに時空はこう語る
「なんのためにアメリカに行ったのか、全く忘れていた」と
生きていくことが、いかに大変かを物語る一言だ
金の匂いを頼りに流れ着いた、眠らない街、ラスベガス
ここで時空は少し痛い目にあう
英語にもアメリカでの暮らしにも慣れ、少し調子に乗っていた時空は、わずかな金を持って、酒場でポーカーに挑んだ
結果は惨敗
2メートルを超す大男との真剣勝負
相手の表情が読めた時空は、全財産をかける
しかし、体重70キロしかない、マッチ棒のような、クリーニング店勤務のボビーの手札はクイーンのフォーカード
「イカサマや!」
日本語で叫んだところでもう遅い
しかも証拠もない
時空の全財産は遥か2メートルの巨人の手の中に
「oh!」
ボビーがすっとんきょうな声をあげた時には、2メートルの体が宙に舞っていた
《兎ばらし》
俗に、空気投げとも呼ばれる類の技
彦兵衛が編み出した、相手の体に触れることなく投げる、大豪院流の技である
酒場での乱闘騒ぎ
当然、ポリスがテッポウ持って登場
いち早く逃げ出した時空は、無一文な上にお尋ね者となってしまう
華やかな世界の闇
きらびやかな光のあるところには、当然、影も伸びる
酒場で一部始終を見ていたマフィアに拾われた時空は、ボビーのイカサマは、テーブルマジックの一種だと聞かされる